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福祉車両を導入するということ

   車イスユーザーにとって、移動手段を確保することは、自分で歩行できたりある程度自由に自分の体を動かせる人よりは、やはりハードルが高い。
   あつぼんが人工呼吸器ユーザーとなり、同時にこれからの生活も車イスが必要となったとき、我が家の自家用車はよくある普通の軽自動車だった。それまでは家族が3人になったこともあり、ゆくゆくのことを考えると次に乗り換える車は普通車にはしようと思っていたが、その軽自動車にチャイルドシートも設置できていたし、まだ先のことかなぁと思っていた矢先のことだった。
    退院直後はまだ車イス(座位保持椅子)が作成中で、簡単に折り畳みできるベビーカーで移動することにしていたので、車に乗せるときは、いったんあつぼんと人工呼吸器をベビーカーから降ろして、車のチャイルドシートに乗せ、ベビーカーは畳んで車の荷室にいれる方式にしていた。
   しかし ちゃんとした車イスができあがるとそのやり方では手間がかかりすぎる。
    社会福祉協議会が、車イスのまま乗車できる福祉車両を貸してくれるというサービスもあった。

https://shakyo-hiroshima.jp/asaminami/jigyo/index.html

広島市安佐南区社会福祉協議会HPより

しかし、もちろん台数には限りがあり、好きなときに好きなだけ使えるというわけではなさそうだった。
   在宅スタート1ヶ月くらいで夫は早々と「もう買うしかないよ、福祉車両」と言い出した。さっそくウェルキャブという福祉車両シリーズ展開をしていたトヨタの店舗へ購入の相談に行くことになった。

https://toyota.jp/welcab/

(株)トヨタHP

   当時人気のあったラクティスが良かろうという心つもりだった。しかし、あつぼん所長の発注中の車イスがギリギリ乗らないかもということで、結局、シエンタで契約することになった。このとき、実はノア(あるいはヴォクシー)という選択肢もあったのだが、軽自動車から一気にノアではあまりにサイズが違いすぎて、私が尻込みをしてしまった。
   しかし選択は、のちのちまであとに響く。当時のシエンタは2列目まで普通の車種と同じ形態で3列目部分に車イスごと乗り込む形であったのだが、たった4年であつぼんの体の成長とともに、足が2列目シートの背中にあたるようになってしまったのだ。
   子どもの成長は見くびれない。おとなの私たちが思っている何倍ものものすごいスピードで成長することもある。大変に嬉しいことであるが、同時に誤算であった。かくして我が家はたった4年でシエンタからノアに乗り換えるというブルジョワのようなカーライフを展開することとなった。
  もし、これから購入を検討される小さい子のご家族は、可能なら大きい車種を最初から選ばれることをオススメする。

あつぼんの乗車動画
https://youtube.com/shorts/KaugQkgK7kg?feature=share

ハロー!あつ旅チャンネルより

   車を購入するのは、かなり大きな決断ではあるし、家計の負担も軽くない。だが、福祉車両の場合、障害者手帳を取得していれば、車両に対する消費税や毎年の自動車税の免除などもあるので、一般的な車を購入するより、実際はややハードルは下がる。
    なにより、自家用車が福祉車両になれば、もう人工呼吸器を載せた車イスユーザーであったとしても、どこにでも好きなときに好きなだけ行けるのである。
   手に入れたらもう、外の世界に羽ばたくしかない!遠いところばかりではない。幼小中学校の11年間、ほぼ毎日のように 車に乗りあつぼんは学校へ通った。そして彼の同級生たちは全員、この世に「車イスのヤツがそのまま乗れる車」があることを知っている。
   今日もサンフレッチェのリボンマグネットを貼りまくった水色のノアはどこかを走ってるかもしれない。
    見かけた人は「よう!あつぼん!」とぜひ声をかけられたし。


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