1.1.1. 3つのリサーチクエスチョン
このページは「1.1. はじめに」の記事を2つに分けたものです。
6.1.の記事で,この3つのリサーチクエスチョンへの答えをまとめます。
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冒頭で述べた関心と問題意識に基づき,本稿で設定した問いは,大別して以下の3つである。
1:社会人による平成後期の「お茶」
一つ目は,「2010年代の若手社会人がなぜ『茶道団体』の活動を行うのか」というものである。
この問いは,なぜ/どのように茶道修練者は自身の人生にお茶を位置付けているのか,と換言できる。
これは茶道教室という場に月に数回参加する理由を問うものではなく,教室に加えてなぜ自分でも茶会を催すのか,なぜ「お茶」の活動に土日を費やすのか,という問いに近似している。
そして,彼らの生活の中心を占める(占めていた)会社生活との対比により,彼らの生活の中における「茶道」や「お茶」の意味を問う。
個人の動機を端緒とする理由は当然のことであるが,先行研究のように,社会情勢に原因を求める視点もここに含まれる。
2:茶道史における「茶道団体」
二つ目は,「彼らの活動は茶道(修練者)史にどう位置づけられうるか」である。
これまで茶道教室の生徒としての茶道修練者しか取り扱ってこなかった現代の茶道(修練者)研究において,「茶道団体」の活動がどの位置を占めるかを検討するものである。
これは,本稿における一連の参与観察とフィールドワークにより得られたデータの,茶道史上における一次資料としての価値を問うものでもある。
「茶道団体」の具体的な活動を取り上げ,その活動が「お茶」であるか否か,むしろ,どのように「お茶」であるかを問う作業は,茶道教室の中の「茶道」を唯一の正解だと信じている人々には見えていなかった原理を示すことを意味する。
「茶道団体」を茶道(修練者)史上で扱うには,この作業が不可避である。
3:流派と「茶道団体」の共存方法
最後に,「彼らはどのように『伝統』や流派と共存しているのか」を問いたい。
これは平成後期における茶道界内部の構造を問うものである。
茶道教室とそれに従属する生徒,という従来の構造を当てはめて現状を鑑みることがは,この現代でどこまで有効だろうか。
「茶道団体」の活動と,それを取り巻く人々の関係性から,現代茶道の再解釈/再構築を試みる。
現代の社会人が取り組む活動は茶道以外にも際限なく存在する中で,その活動形態が「お茶」であったことの意味が,この問いから少しでも浮かべば幸いである。
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