自信があれば、騙せるもんだよ
旅に出る前に
心の余裕が凄い。教員を退職して4日。毎日感じていることである。あの日々が嫌だったとかそういうわけでなく、ただただ何も起きず安心して毎日を送ることができる。それがここまでストレスフリーになるのかとびっくりしている。
日本を出国するまで、あと数ヶ月。Youtubeやブログを頑張りたい気持ちも凄いのだけれど、この期間に一度買った本で気に入っているものはもう一度読み返したいなと思っている。心の余裕がある今だから、俯瞰的に物語を読み返して、今だから冷静に振り返れる過去があるような気がする。
今日はそんな僕の再読記録の第一弾と言っても良いかもしれない。
胸元の魔法/朝井リョウ
以前、人生の三冊を紹介したときも二冊が朝井リョウだったけれど、今回も例に漏れず朝井リョウである。ただし、今回のこのタイトルでどんな話か分かった人は相当コアな朝井リョウファンであることは間違いないであろう。
朝井リョウさんお得意の登場人物が微妙にリンクする短編集ではなく、ちゃんと独立した話がいくつもある、アルバム集である。今回はその中でもずっと自分の心の中に残っていた言葉について話そうと思う。
自信があれば、騙せるんだって
確かこの小説を読んだのは教員になって1年目の春。つまりコロナ禍の真っ只中に読んでたはず。と思って履歴を確認したら2020年の4月4日が読了日。仕事を始めて4日目。本当に不安で不安で仕方がなかった頃に読んだ短編小説。1年目をなんとかやりきれたのは間違いなくこのワンフレーズがあったから。
社会に出たてのペーペー。子供に伝えられるような、見識の深さも、話すテクニックもない。先輩方からみたら授業の出来もひどかっただろう。でも自分は正しい。ちゃんとやれている。堂々とするしかない。そうやって言い聞かせて言い聞かせて、自分を騙しまくっていた。
そうして4年後の今日。既に教員を辞めている身ではあるけれど、振り返ると「いつか本当に騙し通せるもんだって」というように、騙し通せた4年間だったと思う。今回の小説の登場人物、一条君も主人公に寂しさがちょっとだけバレていたように、自分も生徒にまったくバレていなかったとまでは言わないけれど。でも自信満々に自分を騙した結果は自分が一番よくわかっていて、素晴らしい日々を送れていたと思っている。
これからも自信満々に騙し続けていく
自分でも良いこと言ったなと離任式では思った。
正直、綺麗すぎるんじゃないかと思うぐらい、物語の終わりとしてまとめた。そして自分の人生の選択を全く疑っていない。まっすぐ迷いなく。そんなように離任式に来た人たちには伝わっているかもしれない。
でもこれも結局は自信満々に自分を騙しているだけ。将来への不安がまったく背後から除いてこない。そんなことはまったくない。あんなこと言ったけれど、これで良かったのか。そう思う夜は、退職を伝えたあの夜からないわけじゃない。でも僕は自信満々に自分を騙していく。いつか本当に騙し通せるはずだから。
4年前、良いタイミングで読めた本だったと思う。今年から教壇に立つみなさん。自信満々に自分を騙していってください。嘘でも良い。虚勢でも良い。顔あげて、前を見据えて、そうでしか進んでいけないから。そしていつか、騙し通せたと思える日が来るまで。僕は僕を騙し続けます。これからのどんな決断に対しても。そして最後死ぬ時に、全部ひっくるめて騙し通せたな。そう思えるように生きていく。