煎茶、玉露とカクテル
抹茶に次ぎ、カクテルの材料として使われることの多い日本茶が煎茶です。
煎茶は旨味と苦味のバランスが取れていて、尚且つ品種の香りや、生産・製造工程を如実に反映する香りを強く纏っているのが特徴です。
材料としての“遊び”の幅も広いお茶と言えるでしょう。
対して、日本茶の中で最も旨味が強い玉露も、カクテルの材料として光を浴びつつあります。
旨味を通り越し甘味すら感じることのできる玉露は、むしろカクテル向きの日本茶なのかもしれません。
1.煎茶ジントニック
煎茶を使ったカクテルで最もポピュラーなのが、煎茶ジントニックです。
日本茶の定番である煎茶と、カクテルの定番であるジントニックの融合は、ある意味では必然であったのかもしれません。
ただ、作り方には大きく二種類のやり方があるようです。
一つは、ジン300~350ccに煎茶5gを24時間漬け込み、それを元にジントニックを作成する方法。
もう一つは、ジントニックの材料を全てグラスへ入れた後、そこへ茶葉5gか浸出液70ccを投入する方法です。
前者の作り方の場合、旨味や甘味の強い品種の煎茶を使用することが多いです。
24時間の漬け込みですので、苦味がそこそこある煎茶は向かないでしょう。
後者の作り方で、茶葉を投入する場合は、少し茶葉を押しつぶして浸出する手法が取られます。こうすることで低い液温でも十分に、成分が浸出されます。
最後にウォッカを加えたり、柚子、山椒、粉わさびを加えるレシピも存在します。
清涼感あるジントニックに、同じく清涼感が特徴である煎茶は合います。
ささやかな旨味とスッキリとした苦味、そしてナラティブのある香りをもたらしてくれることでしょう。
2.煎茶マティーニ
ジントニックと同じくジンベースカクテルであるマティーニに、煎茶を合わせた煎茶マティーニ。
レシピとしてはマティーニの材料に煎茶5gを加え、浸出させるためにステアではなくシェークを採用したものがあります。
ジンに煎茶を漬け込んで作ったり、あるいはベルモットを使わずレモンを少し加えるだけにすることで、より煎茶の香味を主体にする方法も存在します。
ジントニックよりも先鋭化した、煎茶の特徴が楽しめることでしょう。
3.玉露とワイン、アイラモルト
玉露のカクテルレシピはまだ多くありませんが、存在します。
玉露をワインや、アイラモルトと合わせるというものです。
玉露は本来、茶葉3~5gで20~30cc程度を浸出します。湯温50~60℃で、2分~2分半置いて浸出するのです。
ただ、現行のカクテルレシピでは、煎茶やかぶせ茶のように茶葉3~5gで70~80cc、湯温70~80度で1分~1分半ほど浸出したものを使用するのが主体のようです。
上の方法で浸出した玉露に、同量未満のワインやアイラモルトを加えます。ステアの技法でかき混ぜ、グラスに注ぎます。
ワインと玉露の旨味、あるいはアイラモルトのクセのある香りと玉露の風味がマッチし、絶妙にふくよかな世界観を演出します。
口中には、これほどの満足感があるのかと思わせる味わいが膨らむはずです。
ちなみに、ワインは白ワインのレシピが現在は一般的です。白ワインのライトな味わいが、玉露の重みのある味わいとマッチするのでしょう。
とは言え、赤やロゼともマッチする玉露は存在するはずです。今後、それらとの組み合わせも発展することが期待されます。
抹茶のカクテルにもジンベースカクテルが存在しますが、透き通った清涼感のあるジンベースカクテルには、日本茶の特徴がまっすぐ活きてくれます。
このようなジンベースカクテルにおいて、抹茶の場合はより複雑に香味を変えてくれる味わいですが、煎茶の場合は複雑さというよりは、その煎茶のテロワールが前面に出てくる印象のものとなります。
対して玉露の場合は、まだレシピは多くありませんが、抹茶以上にクセのある複雑な味わいのカクテルが生まれます。
それは玉露の特徴である、旨味の強い濃厚な浸出液がもたらす味わいです。
アイラモルトと同じく、時として人を選ぶような、しかしフィットすればこれ以上ない楽しみを与えてくれる味わいです。
このようにカクテルの材料としては抹茶以上に、ある意味では“大人しくない”のが煎茶と玉露です。
ですが、ジンベースカクテルのようにストレートにその特徴を活かしたり、あるいは上に紹介した玉露のケースのように喧嘩させることなくクセの強いお酒と合わせることで、カクテルの底味を何段階も押し上げてくれるのが煎茶と玉露である、とも言えるでしょう。