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卵から孵るまで

毎週水曜日に水鳥であるガチョウの、主に私の愛するフィフィのことをお伝えしています。お話はガチョウマガジンに収録。今週もご覧頂きありがとうございます。

さて、前回ガチョウの卵のお話をしたその続き。温めていた卵がなかなか孵化しないから処分しちゃおうかってところまでのお話でした。


フィフィが卵からかえる前日か前々日のことでした。あぶなーい。

フィフィがいるんだから生まれたんだとわかっていても手に汗握っちゃいますね。

さて、事前情報として私、nolyは比較的耳がいい方でした。(過去形なのは最近聞こえそのものか、聞いた後の記憶媒体かどちらからの理由で聞こえないことが増えたため)

バタバタと山の暮らしはやることが多くて忙しい日々。孵卵機のおいてある部屋はひとつ奥まっていて、私はその前の部屋を出たり入ったりしていました。

ふと、ひよひよともひーひーと言える頼りないような力強いような声がした気がしました。

ん?そんな声がするとしたら孵卵器か?

近寄ってみるも何も聞こえない。気のせいか、そらみみか。あるいは森の中ででも何か鳴いたか。

ひよこというのはなくのにある一定の感覚があるように思います。ひとまず私はその場で少し待ってみることにしました。

しばらくするとやはり聞こえます。ひーひー。

私はあわててオーナーを呼びに行きました!ガチョウ!ガチョウ!うまれる!うまれる!

オーナーはやって来て卵を見ます。じっと耳をすますも何も聞こえません。あれ?

期待こめすぎてそらみみ。

オーナーは普段から私が思い込みの激しい性格なのを知っているので「まぁ、仕方ないだろう」ということで忙しいオーナーを呼びつけたおとがめはありませんでした。

孵卵器導入に難色を示したとはいえ、うまれてくればなんだって可愛いもの。自覚はないが私もしかすると動物好きだったのか?実は雛が楽しみすぎての空耳かぁ。

納得したとしても気にかかります。

作業の合間に何度となく理由をつけては孵卵器の前で張り込み、空耳かと気落ちして作業に戻る。半日ほどそんな風にすごしたでしょうか。

やっぱり聞こえる。

孵卵器は言ってみるといちごパックのでっかいものを上下にかぶせたような形で、中にモーターと温度計がついていて機械によって温度が一定に保たれるようになっています。蓋をあければそれだけで温度は急激にさがります。

なので蓋をあけてみるわけにもいかなくて、モーター音の向こうにかすかに聞こえる声を頼りにじーっとみていると卵がちょこっと動くではないですか!ほんのわずか。おお!よくよく見るとうっすらひびが入っています。

やっぱり!

あの時のうれしさったらありません。わずかに嘴が見えて、もぞもぞと卵のなかから出ようともがいている姿。

卵の殻は固いのです。

ようやくこの世に誕生しようとしているまだ幼い命にとって最初の試練はこの卵の殻からでるということでした。

卵の殻は人間がとってしまえばと思いますが、時々まだ卵とひよこがうまく分離できていないことがあり、ヘタをすると致命傷になります。

手を出したい気持ちをグーッと抑えて、頑張れ!頑張れ!偉いぞ、偉いぞ、もう少しもう少し。無事に出てくるのを応援するしかありません。

最初、卵の殻の中からそらみみが聞こえるほどないていたフィフィも殻をやぶるのに力を使いすぎたのかあまり声をたてなくなって、やっと卵の殻から出たときにはこのまま力尽きてしまうのではないかと心配になるほどへちょんとしてました。

地球の重力を一身にうけたかのように頼りなく首も足ものばして孵卵器の床にへばりついている姿。つぶらな瞳は力なく、けれどあらゆるものを映してひきこむようでした。

本来ひよこは孵化するとき、卵の中で吸収した養分があるから1日くらいは食べなくても大丈夫。孵化してお腹がすいたらちゃんと自分でたべはじめるという情報を調べて知りはしたものの、フィフィはあまりにもへちょんとしていました。

1日様子を見たものの、とてもこのあと起き上がって自分で餌を食べるとは思えません。フィフィのくちもとへヒヨコの餌をふやかしたものを運びました。

ちなみにこのとき使ったのが珈琲のプラスチックマドラー。

今はあまりみかけなくなりましたが、大豆の乾燥した粒あるいは小指の爪位の大きさのスプーン。あれがちょうどよかった。あれと嘴がちょうどいいくらいちっちゃかったんです。フィフィ。可愛かったなぁ。(今もかわいいけど)

ながながとお読みいただきましたらありがとうございます。


はじめての水浴びのおはなしはこちら

人生にガチョウが!






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noly
読んでいただきありがとうございます。 暮らしの中の一杯のお茶の時間のようになれたら…そんな気持ちで書いています。よろしくお願いいたします。

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