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土器の時

近所に土器屋さんが出来て1年余り。

最初は、土器?と思いました。

あの縄文土器みたいなのを、発掘して売るのか、とか、縄文土器みたいなものを作って売るのか、とか。

実際は違いました。

土器も陶器も、土から作るのは一緒です。

手だけで成形して焼くのもありますが、陶器のように粘土状のものをロクロを回して形を作り、お皿や容器を作る体験をして貰うのが、そのお店のメインです。

土鍋もあれば、植木鉢も、杯も、もちろん皿もあります。

陶器との違いは、そこから釉薬というのを塗って、高度な温度で焼くのが陶器で、土器はもっと低い温度、薪の素焼きぐらいの温度で焼くそうです。

(詳しくは、正確には、最後に、インタビューのポッドキャストのリンクを貼りますので聞いてください)

土器は、色が土の色のまんまで、白とか青とか、基本的には付けられません。

焼く温度のせいなのか、陶器に比べると多少割れやすいそうです。

うちの店は、仕事と家事の境目がないようなドタバタした家なので、なかなか器を大切に扱う余裕がありません

土器のお店をやる、というのはすごくチャレンジングなことなので、応援したいと、チラシなどは店に置いておいたのですが、なかなか買うまでにはなりませんでした。

土器づくりの体験コースは、土を叩いて細かくするところから始めて、水分を加えてろくろで回して自分で成型し、後で焼いてもらうようなものもあり、遠くから体験に来られます。

すごく楽しいようで、土を叩いているだけで、ストレスが解消されるそうです、現代人(笑)

私が本当に使えるもの、近所で頑張っているからとかではなく、本当に欲しいものが見つかるまで、買わずにいました。何かないかなと。絶対にあるはず。

ある時、塩壺を土器で作った人の話がXで流れてきた。

土器は、放湿性があるんです。

ミクロの小さな穴がたくさんあり、ある意味呼吸している。

土器の器に水を入れておくと、かすかながら染み出して、気化熱で器も、中の飲み物も少し冷えるという。

塩は湿気を吸うんですよね。

私の仕事では魚を捌いた後、最後に塩を振って魚の余分な水分やエグミを外に出します。

ステンレスの容器に蓋で密閉されている粗塩を濡れた手で触って、蓋を閉めていると粗塩はどんどん湿っていきます。

蓋を開けておくと、やはり水分や油分、洗剤など飛んでくるので閉めておくしかない。

この塩壺の投稿を見て「これだ〜!」と思いました。

粗塩の湿気は、蓋を閉めていても土器の特性でどんどん外に出る。

土器は、乱暴に扱うと壊れやすいが、塩壺ならほとんど移動しないし、洗うのもツボの中の塩を使い切ったときくらい。

さっそく、お店の人に伝えると、なんとオーダーメイドで作ってくださるという。

私の手の大きさや使い方に合わせて、高さや大きさ、底の感じなど、どんどんメモしてくださり、二週間ほどして、持ってきてくださいました。

大きさがピッタリ。

まるで、手が塩壺に吸い込まれるかのような絶妙な大きさや、口の角度でした。

いただいた瞬間に、塩をステンレスの容器から移そうとすると、まずは軽く洗って半日干して、それから使ってくださいとのこと。

耐えに耐えて、一晩待って、翌朝塩を移し替えました。

もちろん、すぐには粗塩の感じは変わりませんが、見ているだけで、呼吸をしているんじゃないか、という気がしてきます。

土器はまるでGORE-TEXです。

湿気は放出するけど、水分は通さない。

呼吸する素材。

そして3日後、蓋を開けて塩を掴むと、明らかに軽い。極端に言うと、湿気を含んでペースト状に近かった粗塩が、まるでスキー場のパウダースノーみたいに変わっている。サラサラで軽い。

びっくりです。

いろいろ土器の可能性を想像しています。

天丼のタレを作る時に、土器のかけらを入れたら味がまろやかになるんじゃないか、または
ご飯を炊く時に入れたら、クセのない旨味が出るんじゃないかとか。

また今度、相談しようと思っています。

お店「土の子」さんの情報は

とっても面白かったインタビューのポッドキャスト第一回はこちら

好きを極めるって、凄いことだな、と最近感じます。

作者さんの顔が見える土器。

最後に、私の店のインスタでの感想で終わりです。

良い月曜日を〜