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毎日の暮らしを豊かにする余白/新春の味を取り入れる
明日は七草、日本では、古くから年の始めに野山に出て若菜を摘み、その生命力をいただくことで、邪気を祓い、一年を健康に過ごせるようにと願う「若菜摘み」という風習がありました。これに中国の風習が奈良時代に融合し、現在の七草粥の習慣になったと言われています。
君がため春の野に出でて若菜摘む 我が衣手に雪は降りつつ
冬の間、新鮮な野菜が入手しにくかった頃、若菜は貴重なビタミン源だったとこが想像に難しくありません。若菜摘みには次のような目的がありました。
生命力の獲得
冬を越えて芽吹いたばかりの若菜には、強い生命力が宿ると考えられていました。その生命力を体内に取り込むことで、無病息災を願い、一年の健康を祈願しました。
邪気払い
若菜には邪気を祓う力があると信じられていました。摘んだ若菜を神棚に供えたり、身につけたりすることで、邪気を払い、災厄を避けることを願いました。
春の到来を祝う
冬の間、枯れていた草木が芽吹き始める様子は、生命の再生を感じさせます。若菜を摘むことは、春の訪れを喜び、祝う意味合いもありました。
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島根県の山の中で生まれ育った私の、冬から春にかけて想い出の味は、ワサビの新芽(ガニ芽)です。
ガニ芽は、わさびの親株から分かれて出てきた小さな芽で、特に辛味が強いのが特徴です。わさびは栽培適地が限られるので希少価値が高く、更に山にまだ雪があるころに芽がでるため収穫が難しく、高級食材として地元では古くから親しまれてきました。
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関東ではわさび漬けといえば、酒粕に漬けたものが主流だと思いますが、島根ではさっと湯通しして醤油と出汁を合わせたものに漬けて「わさび漬」として食べることが多く、お酒の肴や白飯のお供として人気があります。
そのわさび漬けの中でも、ガニ芽のわさび漬けは別格とされています。
わさびには、ガニ芽のほかにも、葉わさびや茎わさび、花わさびなどさまざまな部位があり、全て食べることができます。私の想い出の味です。
ハウス栽培が普及した現代では、野菜の季節感が分からなくなっています。そんな時代だからこそ、改めて山菜を見直し、季節を食卓に取り入れることも楽しいのではないでしょうか。