谷中堂の招き猫
2018年2月7日、私は東京の谷中をお散歩していた。
なんで谷中に来ていたかというと、関東出身の同僚の先生にぜひ谷根千に行ってみてくださいと勧められたからだった。
当日は東京メトロ千代田線の千駄木駅からJRの日暮里駅までぶらぶら歩いたあと、日暮里駅からお寺がいっぱいある方にもう一度戻った。
私が行こうとしていたのは、観光ガイドブックにも載っている「開運 谷中堂」というお店で、そこでさっと小さい招き猫でも買って帰ろうかなって思ってたんだ。
谷中をお散歩していた私は、何と言ったらいいのかわからないんだけど、安心感とか癒やしのようなものを感じていた。この場所の雰囲気が、なぜだかわからないけど妙に気に入ってしまったのだ。
お店のホームページには「「谷中」は、東京都心にありながら、下町の風情を残し四季を感じることができる場所です」と書いてあるが、この町がもつ風情に私は魅せられていたのだと思う。
お店に入って色んな招き猫を見ていた私は、招き猫の種類やお値段について色々質問したのだけど、その時店番をしていたのが感じのいい方だったのからかもしれないが、いつの間にか招き猫の話だけでなく、谷中をお散歩した話とかもその方としていた(その時他にお客さんがいなかったからっていうのもある)。
「谷中って、なんかいいところですよね。お散歩してるとすごく楽しい」っていうと「ありがとうございます」と言われた。
白黒ペアの招き猫を一組(黒は厄除け病除け、白は福を招くらしい)買った私は、お店の方に愛想良く接してもらえたのがなんだかうれしくて、その後も色んな招き猫を見ながら、お話を続けていた。
「でもなんで猫なんですか」って訊くと、「この辺は「猫町」とも言われていて、猫が多いんですよ。お寺が多いからかもしれません」って教えてくれた。
私がちょっとびっくりして「えっ!? お寺で猫飼ってるの?」って訊くと、「いえいえ、この辺りの猫は全部「地域猫」なんですよ」っておっしゃった。
以前、同僚の地理学の先生が地域猫の話をしていたので、その話をした後、色々お話ができてうれしかった私は、「ほんと、谷中っていいとこですよね。あたし、仕事退職したら、ここに住みたいくらい!」って言った(これはいわゆるリップサービスではなく、その時ほんとにそう思ったのね)。
そしたら、お店の方がすごく喜んでくれて、「え、本当ですか。ほんとにありがとうございます」って言ってくれた。
その時は他にお客さんいなかったんだけど、お話に付き合わせてしまって申し訳ないと思った私は、他にも何か買おうと思って、お店の中を色々見ていた。
すると、店の反対側の壁にある「誕生日招き猫」というのが気になって、「この猫ちゃんたちも可愛い!! この「誕生日」ってどういう意味なんですか」って訊いた。
そしたら、毎日、小さな招き猫のキーホルダーを作っていて、作った日がその子の誕生日だって教えてくださった。
「じゃあ、ぜひ、自分の誕生日の子を買います」って言った私は、自分と同じ誕生日の招き猫のキーホルダーのうち、一番愛着を感じた三毛猫のやつを買った。今、その小さな招き猫のキーホルダーは、私の家の鍵に付いている。
このお店で、ビジネスライクに招き猫を買うだけでなく、お店の方と色々お話しできて、すごくうれしかった。
このときの体験から、私はもっともっと色んなところに行って、色んな人とお話がしたいと思った。こんな気持ちになったのは自分でも不思議だった。
この体験がなければ、私はその後色んなところに一人旅で行ったりしていなかったと思う。
それまではどんなお店に入っても、注文して品物を受け取ったり食べたりして終わりだった私にとって、これは大きな心境の変化だった。
これは、私の人生における、いわゆる1つのブレイクスルーだったのかもしれない。人ってある程度年齢を重ねてからでも、まだまだ変われるって実感した出来事だった。
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