台風19号【東京・神奈川】都市防災を徹底検証 防がれた「隅田川氾濫」「多摩川流域は浸水」なぜ?(11月12日 Nスタ)
東京などの都市部にも被害をもたらした台風19号。それから1か月が経過し、実は隅田川で氾濫の危険があったことが分かりました。そして多摩川流域では自治体が想定していなかった事態に振り回されていました。
想定外の事態は多摩川で起きていました。
安部純 記者:
「ロータリーから広い範囲で冠水してしまっています」
川崎市では武蔵小杉駅の改札口やロータリーが冠水。タワーマンションも被害を受けました。
これは保育園の防犯カメラの映像です。
10月12日の午後5時すぎ、園の前の道路が冠水。その水は徐々に高さを増し、ドアに押し寄せます。
ついに水は園の中に入り込み、午後9時すぎには床上1メートルほどまで浸水してしまいました。
こうした被害が出たのは、多摩川そのものが氾濫したからではありませんでした。
安部純 記者:
「マンホールからでしょうか、地面から大量の茶色い水が噴き出しています」
市内のマンホールから次々と水があふれ出たのです。
通常は排水管の出口よりも低い多摩川の水位が大雨によって上昇し・・・
川の水が排水管を逆流したとみられています。
この、逆流を起こさないために川崎市では排水管の出口に水門が設置されています。
この水門を閉じれば川からの逆流を防ぐことができる仕組みです。
ただ、このとき大雨が降っていたため、街中の水を排出できなくなることを懸念して、水門を開けていたというのです。
川崎市内では5つの水門が開けられ、多摩川の逆流も5地区で発生。浸水範囲は92ヘクタール、東京ドームおよそ20個分の面積にまでのぼりました。
水門を開けたままにしていたことについて、川崎市は「多摩川の水位や降雨の状況など想定外の事態が重なり難しい判断だった」としていますが、当時、住民からはこんな証言も・・・。
川崎市は雨が止んだ夜11時前から雨が止んだ夜11時前か水門を閉める操作を開始しましたが、通常は1分ほどで閉まる水門がなんらかの理由で閉まらず、結局、翌朝11時前まで12時間開いたままになったのです。
それから1か月。道路などの片付けはようやく終わりましたが、家の修理はまだこれからという状況です。
川崎市は 「今回の事象を検証していきたい」としています。
一方、同じ多摩川沿いの東京都・狛江市でも冠水が起きました。
市の説明会では住民の疑問が噴出しました。
大量の泥水があふれ出ているのは部屋の通気口。まるで排水口のように水の勢いはおさまることなく、部屋の水かさはどんどん増していきます。
原因は多摩川に流れ込む排水路「根川」が氾濫したこと。
多摩川の水位が上がり、根川に逆流したのです。
これは根川沿いにある新聞販売店に設置された防犯カメラの映像です。
午後9時前には店内が水に浸かり、茶色に濁った水がどんどん増えていきます。
午後7時前、根川にはいないはずのアユが冠水した駐車場で撮影されていたことなどから、この時間にはすでに多摩川からの逆流が始まっていたとみられます。
その直後、狛江市の職員は、逆流を防ぐ水門を開けたまま現場から避難しました。多摩川の水位が上がり危険な状況になったからです。
一方 狛江市は・・・
としています。
専門家は、遠隔操作できるなど最新の水門の導入が好ましいとしながらも次のように指摘します。
国交省も内水ハザードマップの作成や見直しを、各自治体に呼びかけています。
一方、東京の下町エリアを流れる隅田川。
実は、台風19号で、氾濫する危険があったことが分かりました。隅田川は、東京・北区で荒川から分かれ、流れる川です。
その荒川の水位が12日から上がりはじめ、避難判断水位を突破。
13日午前9時50分、戦後3番目となる7.17メートルまで上昇したのです。
荒川の水は隅田川に流れ込みますが、隅田川の堤防の高さは6.9メートル。
そのときの荒川の水位7.17メートルより低く、これでは水があふれ出てしまいます。
ところが・・・
福田浩子 記者:
「隅田川の氾濫を防いだのはこの大きな水門でした」
荒川から隅田川に流れる水の量をコントロールする東京・北区の岩淵水門。
河川事務所は荒川の水位が4メートルに達したため夜、安全な災害対策室から遠隔操作で水門を閉めました。
これにより荒川から隅田川に水が流れなくなり、氾濫が防がれたのです。
隅田川の氾濫は大がかりな水門によって防がれていたのです。
取材後記
安部純 記者(OBS)
大規模な浸水被害に見舞われた川崎市と狛江市。いずれも原因は、水位が上昇した多摩川の水が、排水管を逆流した「内水氾濫」とみられています。多摩川につながる排水管の出口には水門が設置されているのですが、当時は両市とも現場の目視などによって“閉めない”と判断。しかし、被災した市民は「閉めていれば浸水は防げた」と憤慨し、意見が真っ向から対立しています。
水門の開放が正しかったどうかについては、両市とも今後、検証していく方針ですが、私たちは取材を進めていくうちに、マニュアルに問題があったのではないかと考えました。両市とも表現は違うものの、「内陸で雨が降っていればどちらでも良い」と捉えられる表現となっていて、担当者はきっと頭を悩ませたのではないでしょうか。
一方、東京・北区にある荒川と隅田川の岩淵水門ではあの日、マニュアル通りの正確な判断で氾濫を防ぐことができました。また、この水門は安全な災害対策室から遠隔操作で開閉することが可能となっています。
管理主体が「国か自治体か」、「一級河川か排水路か」という違いはありますが、今回の台風を機に、水門を防犯カメラで監視したり、遠隔操作できたりするなど、職員の命を守るための対策も必要に迫られています。
今後、どのような検証結果が出て、それを基にどのような対策に取り組むのか―。川崎市と狛江市の動向を追いたいと思います。
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