台風19号【宮城】4年前も堤防決壊、なぜ防げなかった?(10月24日 JNNニュース)
台風で19の河川の堤防が決壊した宮城県。このうち大崎市を流れる川の堤防は、4年前の関東・東北豪雨でも決壊しました。なぜ、2度目の決壊は防げなかったのでしょうか。
宮城県大崎市。台風19号の豪雨で、市内を流れる渋井川の堤防が50メートルにわたって決壊、近くの住宅22棟が浸水しました。
濁流は田畑にも押し寄せ、今月中に収穫予定だった大豆は全滅しました。
大崎地方は、台風で200ミリを超える記録的な豪雨に見舞われました。
しかし、被災した住民からは、堤防が決壊した原因は雨量だけではなく、その維持管理にも問題があったとの声が相次いでいます。
4年前の関東・東北豪雨で、対岸の堤防が決壊しおよそ700戸が浸水被害を受けたばかりだったからです。
4年前の決壊後に行われた宮城県の調査によって、その主な原因が明らかになりました。
それは・・・
モグラの巣の穴。堤防の維持管理が行き届かず、草が生い茂り小動物が住みついていたのです。専門家は、堤防に穴ができると、強度が弱くなると指摘します。
さらに、渋井川は上流から流れてきた土砂がたまって流れが悪くなり、越水の危険性が高くなっていました。
しかし、住民は、宮城県から「堤防は安全だ」と聞かされていたといいます。
宮城県は、今回の台風で決壊した場所は「差し迫った危険性は低い」として、改修していなかったのです。
2度の堤防決壊は人災ではないか。地域住民からは、これまでの堤防の維持管理や改修を、根本から検証するべきだとの声が上がっています。
取材後記
笠原豊 記者(TBC)
渋井川の堤防が決壊したとの一報を聞いた時、「まさか」という気持ちと「やはり」という気持ちが同時に湧いてきました。4年前の関東・東北豪雨でも決壊し、同様の被害が出ていましたが、この時の取材で、都道府県管理の中小河川の堤防がいかに膨大にあり、限られた予算では維持管理がいかに難しいかを思い知っていたからです。今回の被害で堤防の整備が追いついていないことが改めて突き付けられています。
今回の取材で被災者からは「堤防はどこかで切れる。ただまさか自分の家の近くで切れるとは」との声を何度も聞きました。住民の間では、自分の家の前の堤防で改修や強化がなされているかいないかに過敏になっていて、不公平さを感じています。さらなる懸念はこうした不平等感により、コミュニティの間にしこりが生じたり、分断が起きることです。こうした事態は避けなければならないと考えています。現在、渋井川流域では被災した人もしていない人も新たな団体を立ち上げ、住民が一丸となって県などに改良を求めています。今後も豪雨災害が頻発することが懸念されますが、災害が起きる前、つまり平時にこそどんな対策を行うのかを取りあげていくことが重要であると改めて気づきました。
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