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台風19号 現場から「気象庁77時間前の警告」(11月6日 JNNニュース)

台風19号の襲来に備えて、気象庁は先月、かつてない早いタイミングで緊急記者会見を行いましたが、そこからは、災害の発生を見越して、記者会見の方向性を大きく転換しようとしている気象庁の狙いが見えてきます。

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10月9日午後2時、いつも以上に緊張感漂う気象庁の緊急記者会見を、私たちは、こう伝えました。

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NEWS23・小川彩佳キャスター(10月9日放送分):
「気象庁は、異例の早さで緊急会見を開き、『命を守る早めの対策』を呼びかけました」

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この記者会見が行われたのは、結果的に、台風の上陸に先立つことおよそ77時間前。

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気象庁は2011年度以降、24個の台風に対して緊急会見を実施しましたが、上陸時刻から逆算して77時間、すなわち丸3日以上も前の開催はこれが初めてでした。

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異例の早い会見が実現した理由は2つ。

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ひとつは、台風19号が大型で、しかも非常に強い勢力で日本に接近・上陸するとの予測精度に気象庁が、早い段階で確信を持っていたことです。

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もうひとつは、

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3日後に迫っていた3連休の存在です。

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3連休の前日や前々日の記者会見では、対応が後手に回るおそれがある。

そんな危機感が、具体的かつ踏み込んだ次の発言につながりました。

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3連休前日の11日までの3日間に備えられるかどうかが鍵を握る。

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気象庁が時間に猶予を持たせて発信したメッセージは、JRはじめ公共交機関を相次いで計画運休の実施に踏み切らせたほか、

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ラグビーワールドカップの主催者にもかつてない重大な決断を迫る結果となりました。


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さらに気象庁は、11日に行った2回目の緊急会見で、およそ60年前、
1200人以上の死者・行方不明者を出すなど関東地方や伊豆地方に大きな被害をもたらした「狩野川台風」を引き合いに出しました。

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台風19号の上陸までおよそ32時間というタイミングで、

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あえて用いたキーワードでした。

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一方、「狩野川台風で東北地方や長野などの被害までもイメージすることは困難」との指摘もあり、気象庁は今後、発信した情報がどう受け止められたか検証を行う方針です。

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上陸77時間前と32時間前の警告は、命を守るために生かされたのか。
気象庁の摸索が続きます。

福島さん

取材後記 
TBS社会部 福島隆史記者(兼 災害担当解説委員)


気象庁による防災情報の発信が大きく変わりつつあることを、台風19号の緊急記者会見で再認識しました。いったい何がどう変わり、なぜ変わったのでしょうか。会見が変化した理由の一つに、気象庁の有識者会議(防災気象情報の伝え方に関する検討会)が今年3月、記者会見のあり方について次のような提言をしたことが挙げられます。

① 緊急時には効果的なタイミングで早めに記者会見を実施
②「今どう行動してほしいか」「今何に気をつけてほしいか」が伝わるよう、住民に直接呼びかけることを意識
③顕著な現象や社会的な影響が大きい現象が予測される場合、過去災害をキーワードとして引用して解説を強化

以上の①~③がどのように反映されたか、台風19号についての2回の緊急会見(10月9日と11日)を例に見てみると…

①の最たるものが、上陸の約77時間も前に行われた9日の会見でしょう。接近・上陸までに相当の時間的猶予があったため、公共交通機関の計画運休やイベント中止に関する判断や告知を含め、3連休の予定変更は比較的スムーズに行われたのではないでしょうか。

一方、同日の会見で予報官が発したコメント「11日までに暴風などに備えるようお願い致します」は、②に沿った呼びかけと言えます。「(台風の最接近・上陸が予想された)12日では間に合わない」という強いメッセージが感じられました。

③は、11日の会見で引用された「狩野川台風」を想起させます。ただし約60年前の台風なので言われてもピンと来なかった人が大勢いたようで、防災上の効果については疑問視する声も出ています。

以上、「早め」「直接」「具体的」が、気象庁緊急会見の今後の方向性を示すキーワードとなりそうです。とはいえ、気象庁が台風19号に対して抱いた強い危機感が、情報の<受け手>にどれだけ届いたか、伝わったか。情報の<伝え手>である私たちも、気象庁が出す情報をそのまま流すのではなく、危機感の強さに応じて適切に伝えられるように工夫や努力をし続ける必要性を痛感しています。


【放送されたVTRはこちら】