
台風19号【群馬】土砂崩れで男性死亡・・・避難所が13キロ離れ(11月1日 Nスタ)
台風19号で群馬県・藤岡市では土砂崩れが発生し、1人が亡くなりました。現場周辺には避難勧告が出ていましたが、指定避難所まで13キロも離れていて、そこに避難した人はわずか4パーセントでした。
群馬県・藤岡市の山あいの集落。
小林拓馬 記者:
「あのように大きな太い木々が何本も家の中に突き刺さっています」
10月12日の夜、土砂崩れが起きて住宅1棟が全壊し、住民の新井逸雄さんが死亡しました。
現場は土砂災害警戒区域に指定されていましたが、新井さんは避難しておらず土砂に巻き込まれました。
この地域に藤岡市が避難勧告を出したのは、午後1時半ごろ。
その頃には既に大雨が降っていましたが・・・
安部純 記者:
「新井さんの家から最も近い避難所だったこちらの公民館まではおよそ8キロも離れているということです」
新井さんの家から最寄りの避難所の公民館までのハザードマップを見ると、その道のりのほとんどが黄色や赤の「土砂災害警戒区域」や「浸水想定域」です。
公民館自体も、実は土砂災害警戒区域の中にあり、自主避難所という扱いです。
こうした地域を避けた指定避難所に行くためには更に山道を進まなければいけません。
ところが“安全地帯”にある指定避難所まではおよそ13キロも離れているのです。
藤岡市によりますと避難勧告の対象になったこの地域の991人のうち、
指定避難所に避難したのはわずか40人。およそ4パーセントにとどまったということです。
新井さんには当時、近所の人が避難を呼びかけたといいますが・・・
藤岡市は危険な場所に囲まれた地域では遠くへの移動が必要なため、より早期の避難を呼びかけるようにしていきたいとしています。
取材後記
安倍純 記者(OBS)
土砂崩れが襲った現場は藤岡市の山あいの集落でした。付近住民に話を聞くと、現場周辺は昔から林業が盛んで、伐採をしては植樹を繰り返すような土地柄だったそうです。それが今回の土砂崩れにどれほど影響したかは検証が待たれるところですが、群馬県は応急的な対策として砂防ダムの建設を決めたということです。
土砂崩れで亡くなった新井逸雄さんは定年まで林業に従事していました。畑で育てた野菜をよく近所の人に分けしていて、気前の良い人だったそうです。新井さんは台風19号による大雨が降った10月12日の夜、近所の人から避難所に行こうと誘われていますが、足の調子が悪かったため、その誘いを断ってしまいました。新井さんの家には土砂崩れによって大量の木が押し寄せました。新井さんの兄・一美さんが「そうした状況の中でも、唯一、遺体がきれいな状態で見つかってくれてよかった」と話してくれたことが印象的でした。
今回は、現場が約13キロにわたって土砂災害警戒区域が続く山間地で、指定避難所まで遠い道のりであることを取り上げました。しかし、この問題は早めの避難を心掛けてもらうしか解決策はありません。新井さんのように足が悪く、避難を躊躇してしまう高齢者の方もいます。改めて、地域間での「共助」の重要性を感じた取材となりました。
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