🇺🇸NY州でワクチン接種した日本人の幼稚園の先生に聞きました（2度め接種後、翌日の副反応を追記。ページ最下部参照）

新型コロナの感染者数が２５００万を超えたアメリカ（１月２４日時点）。ワクチンの接種が始まったのは２０２０年１２月１４日で、第一号となったのはニューヨークの女性看護師だった。そこから１ヶ月以上が経過したが、医療従事者の４人に１人がワクチン接種を拒んでいると報じられるなど、実は忌避感も強く、１月２６日時点での接種率（１度目）は約６％（同日時点でイスラエルは３２％、UAEで２４．５％）。今回話をうかがったのは、在住歴２２年でニューヨーク州ウェストチェスターの幼稚園教員、中山真由美さん（４２）。中山さんは１月１５日に１度目の新型コロナのワクチン接種を受けた。接種までの流れや当日の様子、医療関係者ではない中山さんが見た、感じた、ワクチンのあれこれを聞いた（インタビューはZOOMで１月２４日に実施）。
※２度目を２月５日に接種。８日にメールで副反応などについて聞いた。

NY州のワクチン接種の優先対象

アメリカでは去年１２月１１日にファイザーのワクチンが認可されました。FDA＝米国食料医薬品局はまずは医療従事者、介護施設の職員や入居者を優先させるべきだと声明を発表しました。接種の順番を決定する権限は州に委ねられています。NY州では当初ワクチン接種対象者は、ハイリスクにさらされている病院関係者、介護施設の職員や入居者に限られていました。認可の１か月後の１月１１日に、６５歳以上の州民に加え、仕事上、直接人と接しなければならない職業の人、例えば警察官や消防士、わたしを含む学校の教員、公共交通機関の職員なども対象者に入りました。

予約当日の戦い

１月１１日の午前６時、友人からワクチンを予約するウェブサイトを教えてもらい、すでにアクセスが殺到していましたが、午前６時１５分頃、なんとか１月１５日に予約することができました。聞くところによると、午前７時の時点で、沢山の人が予約しようとしてサイトがクラッシュ。６５歳以上の人もワクチンを受けられるようになったため、２０人ほどに人数制限された１５分枠のスポットはすぐに埋まり、予約できるかはまさにギャンブルでした。わたしより４５分遅れでサイトを覗いた同僚が接種予約できたのは４月だそうです。

ニュースなどで、この日から教師も対象者に含まれる予定であることは知っていましたが、具体的にいつから予約できるのかは知らされていなかったので、友人から教えてもらうことができ助かりました。

予約の仕組み

ワクチンの予約はオンライン。”Am I eligible” （私は対象者）というウェブサイトに情報を打ち込み、ワクチンを受ける資格がある人は、日時と場所を選択できます。しかし今ワクチンの数に限りがあるため、接種対象なのに予約ができないという人がたくさんいる。大学など、ワクチンを受けられる新たな会場が増えると、新たな予約枠ができるが、すぐに人が殺到して瞬く間に予約枠は埋まる。頻繁にサイトをチェックすることが予約できるかの鍵を握るため、NYTimesは友人や家族と連携して予約する方法を勧めていました。また、電話予約もありますが、２時間以上待たされる、しかも待った上に予約できない、という声があがっていました。高齢者の方はやはり家族や友人に助けてもらうのがいいのかもしれません。

ワクチン接種の予約が取れたら、オンラインで「New York State COVID-19 Vaccine Form（ニューヨーク州新型コロナワクチン記入用紙）」に情報を打ち込みます。ここではどのような資格保持者（職業や年齢）なのか聞いていて、すべて記入し終えると、コード付きの許可証が送られてきます。当日はこの許可証を持っていき、また自分が接種対象であることを証明できるものを持参することになっています。

（中山さんの２度目の接種の許可証。一部加工してあります）

接種当日

予約した会場にはたくさんの医療関係者や迷彩服を着た軍人が手伝っていました。送られてきた場所と日時が記載されている許可証を入り口で確認。マスクを着用し、６feet＝およそ１．８メートルの間隔をあけて、たくさんの人が並ぶ列に並びます。列を進むと、口頭で「過去１４日以内に熱はなかったか」「味覚障害はなかったか」などの質問に答えます。さらに列を進めると、また別の人から口頭で「１４日以内に海外に出なかったか」や「コロナに感染した人と接触していなかったか」といった質問を受けます。

その後、体温を計るサーモグラフィー検査。それが終わると「Covid-19 immunization screening and consent form」が渡され記入。ここでは自分の住所や人種などのほか、問診表に記入したうえで、ワクチンの同意書にサインします。

会場の中は

わたしが予約した会場はWestchester County Centerといって、普段ならコンサートやスポーツイベントなどが行われる広い会場です。その中が、たくさんのブースに区分けされていてワクチンを受けられるようになっていました。

自分の順番が来ると、ブースに案内され、記入したフォームを渡し、簡単な質問（職業は？気分はどう？）などのあと、ワクチン接種を受けました。インフルエンザ予防注射と同じで注射自体は痛くないし、一瞬で終わりました。打ってくれた人は看護師だったと思います。

その後すぐにブースの外にあるデスクで、副反応の説明と、念の為にコンタクトできる人の情報などを伝え、その場で２度目のワクチンの日時を予約。ファイザー社製だったので３週間後、同じ場所、同じ時間で予約しました。

副反応が出ないか様子を見るため、用意された待機室にて１５分待機。ここではもしもに備えて医療関係者もいました。何もなかったので帰宅しました。ワクチン接種は無料です。

（待合室。接種した人はここで１５分待機する）

記者：副反応は一切なかった？

今思えば、インフルエンザと同じで、腕に軽い筋肉痛が２～３日くらいあったのと、疲労感、いつもより疲れるなあ、という感じはしました。副反応に関しては、CDC（疾病対策センター）のアプリを使って（希望者のみ）、接種後、週に１回、５週間にわたり経過などを報告し、ひどい場合はCDCから連絡が来るというものもあります。この報告は３、６、１２か月後にも送られてくるそうです。

記者：到着からの所要時間は？

すごい数の人がいましたが、オーガナイズされていてスムーズでした。エントランスに入ってから１５分の待機時間を含めても４５分くらいでした。

（NY州でワクチンを接種するともらえるステッカー。これはアメリカならではで、選挙の投票に行っても同じようなステッカーがもらえる。前回お話を聞いたイスラエルの山森さんによると、イスラエルでは２度目の接種を終えるとリストバンドが渡されたそう・・・)

ワクチンへの不安は

記者：アメリカではワクチンを打ちたくない人もたくさんいるが？

わたしはワクチンが受けられると聞いて、不安よりも、希望が見えました。周りでコロナに感染した人、死亡した人を知っています。歯止めがかからないアメリカでは希望だと思った。ワクチンそのものに不信感がある人や宗教などの理由で受けない人がいるのも事実だけど、そういう人にはreasonable accommodation(合理的配慮)といってマスクを着用すること、リモートワークを促進することなどをクオモ知事が呼びかけています。

現在問題になっているのがワクチンが不足しているということ。最初にハイリスクの医療従事者に限って接種をしていたらワクチンが余ったというので、１月１１日に対象者を増やしたら、今度は足りなくなり、とうとうきのう底をついたと。１９日に届くはずのワクチンがなんらかの事情で届かなかったみたいです。せっかく予約したのにワクチンがないため、他の日に再予約する必要があった人もいると聞きました。わたしの２度目の接種は３週間後の２月５日ですが、そのときにワクチンがあるのかが不安です。

ニューヨークの今

みんなマスクはしていますし、ハグはしなくなりました。そしてこの１年で飲食店はかなり影響を受けています。ニューヨークでは屋内飲食禁止なので、アウトドアダイニングといって、屋外で食べられるような、ビニールなどでできた小屋がたくさんあります。わたしが住んでいる町では、町を挙げて飲食業を盛り上げようと、通りの一部を封鎖して、そういう仮設の小屋を提供して建てました。(Q中はあったかいんですか？) 中は寒いです。ちなみに今日はマイナス６度ですが、アメリカ人は普通に入って食べてます。

（かまくらのようで一見かわいいが・・・マンハッタンではこたつがある小屋もあるそう）

周りでもコロナになった人がたくさんいて、幸いわたしや家族は罹患していないが、次にだれがなってもおかしくない。コロナは治ったけど味覚が戻らないとか、後遺症に悩む人もいます。

PCR検査は毎日受けることはないです。感染の疑いがある場合やせきが出る場合、病院やドライブスルーでやることが多く、ドライブスルーはうちの近くでは、公園の駐車場です。無料です。

アメリカで感染者が減らないワケ

１１月に感謝祭があって、これは通常、家族が集まってお祝いをするイベントなので、コロナでもみんな移動したこと、そしてその１ヶ月後のクリスマスでまた感染が一気に拡散したというデータが出ています。

わたしの住んでいる町では、クリスマス明けに、学校区全体で唾液によるPCR検査をしました。小学校から高校までの全員。約５０００人受けたなかで、１％だけが陽性でした。娘が通う高校は、午前に通学、午後はリモート、次の日は午前にリモート、午後に通学、というハイブリッド方式です。アプリで登校前にヘルスチェックをする、学校の入り口にもサーモグラフィーがある。学校側はできるだけ通学させたいようで、そのために工夫しています。

アメリカでは州ごとに優先対象や予約方法なども異なるため、一概に言えませんが、中山さんの話を聞く限り、NY州では予約でバタつきはあったものの当日は１時間弱で終わるという段取りの良さがうかがえました。
日本では２月下旬までの接種開始を目指していますが、国と地方自治体がまとまって、きちんと、滞りなく、まず接種を受けるべき人が受けることができるのか。そして、的確な采配と円滑な方法で、期限あるワクチンを無駄にすることなく、より多くの接種を望む人に行き渡るような計画が求められます。
最後に中山さんに今したいことを尋ねると、「年に一度帰省するけど去年は帰りませんでした。一度帰って家族や友達に会いたい」と話しました。その日が早く来るよう願います。（聞き手：デジタル編集部 遠藤弥生）

２度目接種について（2月8日追記）

２月５日に接種しました。１度目と同じ場所でしたが、NYを襲った寒波の影響で１日や２日の予約分がこの日にずれたらしくまあまあ混んでいました。でも流れは１度目よりも効率がよくなっていた印象で、中にはすぐ入れたし、接種後の経過観察の待合室では音楽が流れるなど工夫がされていました。今回接種を担当したのは、医学生で、「１日１００本くらいは打つ」と言っていました。使用後の注射針は「規定に従って、適切に処理している」そうです。

（ソーシャルディスタンスを保って並ぶ人たち）

２度目接種の副反応（２月８日追記）

接種当日は至って普通でした。翌日になって、接種したあたりの腕がかなり痛くなって、トイレでパンツを上げるのも苦痛でした。できることならベッドで寝ていたい、と思う疲労感もありました。さらに夕方頃に寒気が襲い、発熱。３８．５度まで上がりました。その翌日の午前中も３７．５度ありましたが、午後には平熱に下がりました。あんなに痛かった腕の痛みもなくなりました。頭痛もありましたが、鎮痛剤を服用したら大丈夫になりました。

友人も同じ時期に２度目の接種を受けましたが、疲労感と腕が痛いくらいで、全然平気だったようです。

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