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コミュニティの経済開発支援を模索
ミャンマーの今ココ。
クーデターから3年以上経ち、現在もミャンマーは混乱の真っ只中にあるように見えます。
一方で、報道によると連邦制と民主化を推進する民族グループ(EROs、EAOs)と国民統一政府(NUG)の実効支配地域は6割以上であるとNUGの外務大臣は発言しました。そして、元米国陸軍中佐でハワイのダニエル・K・イノウエ・アジア太平洋安全保障研究センターの教授であるミーミー・ウィン・バード(Miemie Winn Byrd)博士は、「(クーデターを起こし実権を握っている)国家行政評議会(SAC)はもうもたない。1年以内に決着がつくだろう。」と発言しています。
形成逆転している状況でも宗教施設、学校や病院、結婚式会場など一般市民を狙ったSACの空爆は続いています。これについては「地上戦で勝てないSACが最後の手段として空爆を行っている。」と分析されています。
また、SACの兵力は40万人から13万人程に減少しています。ミーミー・ウィン・バード博士は、この革命を成功させるために重要な3つのポイントの一つとしてSAC兵士たちの亡命をあげていますが、SAC兵力の劇的な減少は、情勢の局面の大きなターニングポイントになっていることと思います。
SACは足りない兵力を補完するため徴兵制を発令しましたが、このことは民主化側だけでなくSAC側であった人々や中立的な立場であった人々でさえも国外へ脱出・逃亡する動きにつながっています。
SACのパワーによる統治に大きなヒビが入りだしている、そんな流れがあるといってよいのではないでしょうか。
また、3年経ってもなお、ミャンマーの混乱を収めるどころか民間人を標的にして空爆を行っていることで、国際社会はSACに見切りをつけはじめ徐々に民族グループ(ERO、EAO)や国民統一政府(NUG)との関係構築をし始めています。
今年5月にはクーデター後はじめて、民族グループの代表たちと国民統一政府の大臣が訪日しました。このことについては別途noteを書きたいと思います。以下は日本のメディアによる関連記事です。
・ミャンマー・抵抗勢力 訪日代表団が語ったこととは (NHK)
・ミャンマーの和平へ「日本がリーダーシップを」 民主派代表らが訪日(朝日新聞)
・ミャンマー少数民族組織の代表等による高村外務大臣政務官表敬(外務省)
今年6月には、国民統一政府の外務大臣が正式にオーストラリアの外務大臣を訪問しています。
・National Unity Government visits Australia Foreign Minister
また、東ティモールは世界でいち早く、SACではなく国民統一政府(NUG)をミャンマーの正式な政府として認めています。
・Why Timor-Leste Decided to Take a Stand on Myanmar
ミャンマーの国連代表も国民統一政府の方です。
不安定な情勢の今は、ビジネス開発支援のタイミングなのか。
一方で、SACが公式に「音を上げる」「崩壊する」ことはあるのか。
そしてSAC自身が公式にそう認めない場合、国際社会はどのような条件が揃えばミャンマーの中央政府を、SACから「連邦制と民主化を達成しようとしている民族グループ(ERO、EAO)と国民統一政府(NUG)」へと認知変更できるのか。まだまだ不透明です。
そのように不透明で不安定、先の見通しが立たないミャンマー情勢おいて、今が果たしてビジネス開発支援のタイミングなのかという疑問が沸いてくると思います。
平和構築、紛争分析、リスクマネージメント、危機管理、開発等、様々な専門家によって異なった分析、見解ができると思います。
私が「今」が行動開始の時期であると考える理由はとてもシンプルです。
一つ目は、支援ニーズがあることです。
少数民族グループの方々から、ビジネス開発の支援をしてほしいと要望があることです。少数民族グループや国民統一政府の管理地域では、具体的な詳細については今後ニーズ分析が必要ですが、人道支援と同時に開発支援のニーズがあることは確かであり、実は欧米系の支援団体は既に零細起業家支援や社会起業家支援を通したコミュニティの経済開発支援を行っています。
二つ目は、コミュニティの経済開発が新しいミャンマーの構築にとって重要であるという方向性です。
例え連邦制と民主的な政治体制が樹立できたとしても、この3年半で破壊されたコミュニティのつながりや経済を立て直すことは容易ではありません。コミュニティの経済を立て直すためには、ビジネス開発や経営ができる人材、すなわち起業家が必要です。
中小企業として安定した経営に持っていくまでも数年かかることを考えると今からそのような人材の育成や、中小企業オーナーとのネットワーキング、そして彼らのビジネスの回復支援を検討、実施していかなければなりません。ゆえに、人道支援と共に今からコミュニティの経済開発に着手する必要があります。
参考ですが、外務省も「人道と開発と平和の連携」を掲げています。
また、武力による衝突が落ち着いたとしても、当分は外資系の進出や投資は大都市であるヤンゴンにしか来ないことが容易に推測できます。中国との関係が深い一部の地域を除き、資源も人材も少ないとされる地方の少数民族グループの地域の開発の遅れは引き続き顕著です。大都市(マジョリティの民族であるビルマ人)と地方(少数民族)における格差は、そのまま政治における影響力や機会の差となって、また新たな紛争につながりかねません。
だからこそ、少数民族グループの地域での活動が必要となってきます。
三つ目は、自分が貢献できる領域だからです。
もともとミャンマーに7年住んでいたこと、そして起業していたためミャンマーのソーシャルスタートアップセクターに多くの友人がいます。また、ここ3年ほどで東南アジアのインパクト投資エコシステムや社会起業家支援、日本のフィランソロピーセクターに関わってきたので、東南アジアと日本にも人脈があります。同時に、専門家とは比較できませんが、同分野の一定の知見もあります。
そして、1年半の間、何度もタイとミャンマーの国境周辺地域に通い(1ヵ月滞在×3回、1週間ほどの滞在×3回)、現場の方々との人脈形成と状況把握に努めてきました。(おかげで今では、ミャンマー支援新規参入を希望する個人や団体の方々にコンサルティングを提供しているほどです。応援したいという気持ちから無料で提供しております。)
よって、必要な知見や適切な人材をつなぎながら、現場のニーズに合わせたゼロ→1を創ることに貢献できます。
また、まだまだ足りないとはいえ、日本の人道支援は、外務省と日系NGOによってある程度既に実施されており、拡大しています。未来を考えた時、右から左に物資が流れる人道支援だけではなく、やはり開発支援へつなげていく、橋渡ししていくことが必要です。
わたしは過去に、非営利活動法人、企業、財団、社会起業と多様なセクターで勤務した経験があり、
現場の市民団体から少数民族グループのリーダー、国民統一政府、国際NGOや国際機関という幅広いネットワークを持っています。
現状、人道支援から開発支援へという視点を持ち、意志をもって行動し、既存の組織のフレームワークにとらわれず柔軟にアイディアを実行できる日本人はおそらくわたしくらいだと思います。
先が見えない不安定な状況ではありますが、
そのような状況でコミュニティ経済を支えることが可能なビジネスや経済モデルとはどのようなものなのか特定の地域で実装実験しながら明らかにすることで、きっとその後広範囲にわたるミャンマー国内の人々の生活やコミュニティに貢献できる。
もちろん必要な情報収集や分析はしながら、注意を払いながら進めていきます。ただ、どんな情勢であっても、その状況で仲間と共にできることをする、今はそんな気持ちでいます。
これまで1年半の間、5回ほど自費でタイとミャンマーの国境周辺地域を訪問し(長い時は1ヵ月ほど滞在)、人脈形成と状況把握に努めてきました。
今後は、仮説を基にまずはアクションを起こし、必要に応じて軌道修正していく形で進めていきます。
<参考>
民族グループ(EROs、EAOs)とは、1949年から続くミャンマーの内戦の文脈でEthnic Armed Group(EAOs) 少数民族武装勢力と呼ばれ、主に自治を希望している民族グループです。2021年のクーデター以降は、SACに対し反抗し革命に参画している民族グループをEthnic Resistance Organizationsや Ethnic Revolutionary Organizations(EROs)と呼びます。
国民統一政府(NUG)とは、2021年クーデターを起こした国軍に対抗して民主派勢力が樹立した政府です。日本には国民統一政府代表駐日事務所があります。
国家行政評議会(SAC)とは、2021年2月1日に実行されたクーデターによりミャンマー国軍が事実上の国権を掌握し、国家統治を開始した翌日の2月2日に設立された現在のミャンマーの国家最高指導機関。国軍や軍事政権とも呼ばれます。
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![寺澤 彩(Pちゃん)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160946594/profile_601e8773cf194660b0bf96d416d6739f.jpg?width=600&crop=1:1,smart)