2024年ふるさと納税トレンドから見る、制度の新たな価値創造
トラストバンク地域創生エバンジェリストの伊藤健作です。
2024年も残すところあと1か月弱。ふるさと納税が最も盛り上がる時期が到来しました。
そんなふるさと納税ですが、昨今の社会情勢や災害の発生、物価高騰など、私たちを取り巻く環境が大きく変化する中で、新たな役割を担いつつあると感じています。
実際に、本年2024年の寄付動向を分析すると、従来の「お礼の品目当て」という動機から、より成熟した制度活用へと進化している実態が浮かび上がってきました。
2つの特徴とともに、今年のふるさと納税トレンドを振り返ってみましょう!
なお、2023年のふるさと納税のトレンドはこちらの記事をご覧ください。
①共助の精神を体現する災害支援・事業者支援の機運上昇
本年最も注目すべき変化は、災害支援を目的とした寄付の大幅な増加です。
例えば「ふるさとチョイス災害支援」では、1月に発生した能登半島地震に対し、災害支援寄付として過去最大の20億円を超える寄付が集まりました。
さらに特筆すべき点は、被災していない自治体が被災地の代わりに寄付を受け付けることによって被災地の行政負担を軽減しながら、効率的な支援が可能となる「代理寄付」の広がりについてです。能登半島地震においては、この代理寄付フォームの開設数も、158自治体という過去最大数を記録しました。
また、天候被害により規格外となった農作物を「訳ありのお礼の品」として提供する取り組みへの支援も増加している傾向です。実際に「ふるさとチョイス」内では、2022年1月~11月と2024年の同期の「訳あり」表記のある品物への寄付金額は約1.5倍に増加していました。
これらは、寄付者がふるさと納税を通じて、地域の生産者やそこに暮らす人の支援をしたいという意思の表れだと感じています。
また、自治体側からも、「訳あり」表記の新規登録品数が、同期間で約3.5倍増となっています。「事業者生産者の想いがこもった品を、ふるさと納税を通じて少しでも寄付者に届けたい」というニーズがマッチしていると言えるでしょう。
②生活防衛としての制度活用の定着
近年の災害多発を受け、防災関連のお礼の品への注目度も急上昇しています。「防災」を冠するお礼の品への2024年1月~11月の寄付件数は、前年同期比で約4.9倍増加し、2022年の同期比で約7.7倍増加しました。
単なる防災意識の高まりだけでなく、定期的な備蓄品の更新が必要な「ローリングストック」という防災の実践に、ふるさと納税のお礼の品は効果的に活用されているように思えます。
また、物価高騰を背景に、お礼の品選びにも変化が見られます。特に顕著なのは、日用品への注目度の高まりです。例えば、トイレットペーパーをお礼の品とする寄付額は、2024年1月~11月と、2022年の同期比で、約2.3倍増加しています。さらに、従来から人気の高かったお米は「令和の米騒動(米不足)」が最も話題になった8月は、2022年と比較すると3.1倍寄付額が増加。その他には、オリーブオイルやオレンジジュースという普段使いするものへの寄付が増加しました。
これらは、ふるさと納税が単なる「贅沢品」の調達手段から、家計の維持管理や防災対策に対しての賢い選択肢として認識されつつあることを示しています。
今後の展望:真の地方創生に向けて
2025年10月からのポイント付与規制など、制度面での変更も予定されています。しかし、これらの変更は、むしろふるさと納税本来の目的である地域創生への回帰を促すものといえます。
重要なのは、寄付者が「自分の寄付が地域活性化に寄与できた」という実感を持てることです。その意味で、災害支援や生産者支援、体験型のお礼の品の充実は、制度の本質的な価値を高めてくれると感じています。
年末の駆け込み寄付を検討される方々には、ぜひこうした制度の多面的な価値を理解した上で、計画的な活用をお勧めします。
その際、①控除上限額の確認、②12月31日までの決済完了、③ワンストップ特例申請の期限(翌年1月10日必着)を忘れずに!
なお、ご検討の際には、お気に入りリストシェア機能で作成した私の“お礼の品推しリスト”もご参考ください!👇
最後まで読んでくださりありがとうございました。