テレワークゆり物語 (187)育児・介護休業法の改正をわかりやすい図で解説! 2025年4月施行
2025年4月1日から順次施行される「改正育児・介護休業法」の一丁目一番地は、『テレワーク』である。(と、私は思っている)
これが、「働く」ことにこだわり、長年テレワークを推進している私が、「休む」ことが中心の「育児・介護休業法」をわかりやすく解説したいと思った理由だ。
「休業法」だが、改正目的は「仕事との両立」
「育児・介護休業法」は、その名称だけ読むと、育児や介護にたずさわる人が休みを取れるようにする法律のように思える。
2022年4月1日から施行された「育児・介護休業法」の一丁目一番地は、『男性の育児休業』取得の促進だった。
しかし、「休業法」といいつつ、休ませることだけが目的の法律ではない。
育児や介護と、仕事を両立させるための法律でもある。(と、私は思っている)
「男性育休」も育児中の男性が休むことで、これまで女性に負担がかかりがちだった育児や介護を共に担うことができる。
その結果、女性も男性も、育児・介護と仕事を両立できるようになる。
今回の改正の一丁目一番地は『テレワーク』
まずは以下の図をご覧いただきたい。
厚生労働省の「育児・介護休業法について」のサイトに掲載されている「リーフレット」をもとに、(株)テレワークマネジメントが作成した。
「育児」に関する施策については、出生から就学まで、左から右へと推移する。(介護は時系列ではない)
青い枠が今回の改正、青で塗りつぶされているのが「テレワーク」に関するものである。(オレンジは現行の内容)
ご覧いただければ、今回の改正において「テレワーク」が一丁目一番地だと、私が考える理由がおわかりいただけるだろう。
今回の改正は、「福利厚生」のためではない。
働きたい人が、働き続けることができる、「働く」ための法律となる。
この法律が適正に運用されれば、長く続いた少子化による労働力不足、経済の低迷という、大きな社会問題を解決し、日本を救うことができる。(と、私は思っている)
目玉は「新しい柔軟な働き方」制度
厚生労働省の会議で改正内容が検討され始めた2023年春頃、
「テレワークが努力義務に?」と報道され、ネットで炎上した。
これについては、こちらに詳しく書いているのでご覧いただきたい。
さて、「テレワークが努力義務になる」というインパクトは無いが、
今回の改正で、最も注目すべきは「新しい柔軟な働き方」制度である。
先の図の右上、「子が3歳から小学校就学前」の部分だ。
「子が3歳から小学校就学前」の従業員に対し、事業主は5つの制度から2つ以上を選択する。
↓
その上で、2つを従業員に提示する。
↓
従業員は、2つから1つを選択して、利用することができる。
この措置は、義務である。
企業は、真剣に「柔軟な働き方」に取り組むことになる。
ちなみにこの措置の施行日は、令和7年4月1日ではない。
令和7年10月1日が施行日となる。
※厚労省のリーフレットでは、「公布後1年6か月以内の政令で定める日」とされているが、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」が令和7年9月11日に公布されており、施行日は令和7年10月1日と決定している。
あなたが社長なら、どの制度を選択する?
さて、あなたが社長なら、以下の5つの制度から、どの制度を選択するだろうか。
始業時刻の変更
テレワーク等(10日/月)
保育施設の設置運営等
新たな休暇の付与(10日/年)
短時間勤務制度
選択する以上、会社の制度として整備する必要がある。
企業、特に中小企業にとっては、悩ましい選択である。
「ただでさえ、経営が大変なのに、また子育て中の社員を優遇しなくてはいけないのか」
そんな声が聞こえてくる。
でも、考えてほしい。
今回の改正は、「休む」ためだけではなく、「働く」ためのものである。
上の4つの制度に対し、厚労省は「フルタイムでの柔軟な働き方」と明記している。
今後増えるであろう子育て中や親の介護中の社員に働き続けてもらうための制度なのだ。
人手不足で困っている企業は、募集・採用に多額の費用をかけるよりも、この新しい制度にいち早く対応し、人材確保や人材維持に努めるほうが得策ではないか。
厚生労働省は、法律の施行に向けて、企業への後押しをしている。
「令和6年度 両立支援助成金」において、
「柔軟な働き方選択制度等支援コース」が新設され、
最大125万円の支給を受けることができる。(要件あり)
さて、社長、どれを選びますか?
週1回のテレワークでは、選択対象にならない
厚労省が本気で「働く」ための制度にしようとしていることは、以下の記載に現れている。
先の厚労省のリーフレットには、『テレワーク等(10日/月)』と書かれている。
実は、改正のもととなる、令和5年12月26日(火)の「仕事と育児・介護の両立支援対策の充実について(建議)」に、以下の記載がある。
施行後、5つの選択肢のひとつとして、認められる「テレワーク」は、
勤務日の半数程度(週5日勤務の場合、1か月で10日)という基準が設けられるのだ。
「うちのテレワーク制度は、週1回だよ」
という企業は、小学校就学前の子を持つ社員には、半分程度の制度利用を約束しなくてはいけない。
「それはハードルが高い。テレワーク以外の制度を選択するか」
と思われる経営者がいるとしたら、それは、将来の経営を考えると、賢明な選択とはいえない。
「いつもと同様に働ける」テレワークにするチャンス
ではなぜ、「テレワークを導入しない」企業や、「週1回に限定する」企業が少なくないのか。
テレワークだと・・・コミュニケーションが取りにくい
テレワークだと・・・さぼってしまうのではないか
テレワークだと・・・余計なコストがかかる
テレワークだと・・・会社やチームの一体感が薄れる
ましてや、子育てや介護中だと・・・
しかし、コロナ禍を経て、さまざまなICTツールが登場し、「完全テレワーク」の企業も増えてきているように、
これらの課題は解決できるものとなっている。
いつまでも目を背けていると、デジタル化が遅れ、人材確保に苦しみ、退職者に悩み、会社運営に影響を与えかねない。
「始業時間の変更」「保育施設の設置や保育サービスの支援」「新しい休暇の付与」「短時間勤務」どれも、柔軟な働き方に有効である。
しかし、若い人材を呼び込み、有能な社員が長く働き、会社へのエンゲージメントを高めるのは、「テレワーク」ではないだろうか。
法律改正に文句を言うのではなく、これをチャンスとして考え、助成金等を活用し、デジタル化を進め、「いつもと同様に働ける」テレワークに取り組まれることをお勧めしたい。
テレワークの課題の乗り越え方は?
とはいえ、乗り越えるべき課題は存在する。
どうすれば、テレワークへの不安を払しょくできるのか?
どうすれば「いつもと同様に働ける」テレワークができるのか?
どうすれば、コストを抑えつつ適切なテレワークができるのか?
テレワーク専門のコンサルティングをしている弊社としては、大事な「企業ノウハウ」である。
ただ、このnote記事に「ハート」マークをたくさんいただければ、引き続き、noteに書いていきたいと思う。社員に怒られない程度に。笑