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39歳父の竹修行奮闘記 第二十一回「訓練は続くよどこまでも」

【前回までのあらすじ 】
39歳でひょんなことから別府で竹細工を学ぶことになった私。竹細工をする上で、とにかく大事な材料作りであるひご取り。竹を割って、剥いで、幅を揃えて、面を取って、うらすきで厚みをそろえて、とうとうひごが出来上がる。まず風車と四海波かごを作って、第一課題「六つ目編み盛りかご」、第二課題「鉄鉢盛りかご」が完成し、夏休みを経て、いよいよ二学期、家でも竹仕事をスタートした!

訓練の様子をしばらくアップしていなかったので、少し駆け足になるが紹介することにする。

まずは第三課題「網代小物入れ」。夏休み前にひご取りが終わり、夏休み明けから編組(へんそ:ひごを編んだり組んだりすること)がスタート。

まずは底編み。今回は長桝網代という編み方で、前回の第二課題で習った桝網代と似ているが少し違う。長方形が幾重にも広がって見えるのが長桝網代だ。(網代編みについては第十七回を参照のこと)

そしてこの4辺を熱したコテで曲げて立ち上げ、四隅を編みあわせていくと、少しずつ箱状になっていく。

これにこれまたコテや業務用ドライヤーで曲げた縁(外縁と内縁)と柾(まさ:外縁と内縁の隙間を埋めるパーツ)を上部に取り付け、籘(とう:インドネシア産のつる性の植物)を巻いて固定していく。

裏面には力竹(ちからだけ:安定して自立するために底面に挿し込むパーツ)を3本挿し込む。

そして更に四隅に、アルコールランプで曲げた足竹(あしだけ:自立するための足となるパーツ)を取り付け、そこに籘を虫かがりという巻き方で巻いていく。本当に虫のような形状になる。ちなみにこの作業がなかなか終わらず、家に持ち帰って深夜まで虫と戦っていた。

これで完成!とは行かず、ここから染色と塗装が始まる。正直私は染色塗装にまるで興味がない、というか染めるのなら竹である必要はないと思っているので(あくまで個人の考えです)ここの染色塗装については詳述しない。

そして完成。

染色塗装をすることで確かに高級感は出るし、染色塗装をすることで通年販売が可能になるらしい(竹の色のままだと涼し気なので夏場しか売れないらしい)が、私が欲しいと全く思わない、下手をすればタダでもらっても困惑するような物を修了後に作ることは考えにくいので、正直なかなか訓練に身が入らなかった。不真面目な訓練生でごめんなさい。

そして待ちに待った第4課題「菊底バスケット」!

今回の大きなチャレンジは長ひご取り。今までは最長でも1mほどだったひごだが、今回はなんと4mの竹を割って剥ぐ。私が敬愛してやまない稲垣尚友さんは8〜10mの長ひごを取ると聞いていたので、いずれはそのくらいの長ひごが取れるようになりたい!と意気込んでひご取りスタート。

しかし現実は厳しい…

割り方、剥ぎ方、ひごの取り回し方、幅取り、面取り、こそぎ(長ひごは通常うらすきはせずに包丁でこそいで大体の厚みを揃える)全てが今までと勝手がまるで違い大苦戦…今までだましだましやっていた部分のツケが回ってきた感もあり、ここは正念場と覚悟を決め、速度よりもとにかく落ち着いてなるべく正確に作業をするよう専念した。

そしてなんとかひごを取り終え、菊底編みに入る。菊底編みは今後長い付き合いになりそうなので、次回あたりにくわしく紹介できればと思う。

そして底編みが終わったら立ち上げ

立ち上げた骨ひご(放射状に出ているひご)にゴザ目編み胴編みをしていく

かぶれば憧れの虚無僧気分。

第4課題は現在、胴編みの途中なので、このあと縁巻きが残っている。

そして訓練校での訓練とは別に、別府竹製品協同組合が土日に開催してくれる後継者育成事業にも全て参加している。こちらも参加費材料費全て無料で、現役の職人さんから仕事を教わることができるまたとないチャンス。

こちらが第一回目で作ったビク風花籠。

名前まで彫った

同じものを家の青竹でも作ってみた。また雰囲気が全然違う。

といった感じで、着々と訓練は進んでいる。技術はまだまだ全然伴わず、一進一退、試行錯誤の毎日だが、それでも少しずつは前に進んでいる実感はある。まるでできそうにもなかったことや、最初まるでできなかったことが、少しずつできるようになる喜び、これはうちの一歳の息子がいま経験している原初的な喜びにおそらく近い。

選り好みせずに全てを吸収するつもりで訓練に臨んではいるが、私が竹を学びたいと思ったきっかけや背景から考えて、明らかに不要もしくは過剰と思われる技法の習得には、やはり心がうまくついていかない。時間も力も有限である以上、ある程度の優先順位付けや取捨選択も今から必要である気もする。

無心で手を動かしつつ、卒業後のことも念頭に置いて、頭もしっかり作動させつつ、訓練の日々は続いていく。気がつけば訓練の4分の1が終わってしまった。2年間など本当にあっという間だ。

次回は菊底編みについて詳しく紹介する予定だ。乞うご期待!

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竹遊亭田楽
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