39歳父の竹修行奮闘記 第十七回「竹をシート状に編め!〜網代編み〜」
【前回までのあらすじ 】
39歳でひょんなことから別府で竹細工を学ぶことになった私。竹細工をする上で、とにかく大事な材料作りであるひご取り。竹を割って、剥いで、幅を揃えて、面を取って、うらすきで厚みをそろえて、とうとうひごが出来上がる。まず風車と四海波かごを作って、第一課題「六つ目編み盛りかご」、第二課題「鉄鉢盛りかご」が完成し、夏休みへ!
夏休みで更新が滞っていた。家で復習をと思っていたが、1歳の息子がかわいすぎて、ずっと一緒に寝たり遊んだりしていた。やはり子どもはかわいい…
夏休み前に第二課題「鉄鉢盛りかご」が仕上がり、第三課題「網代小物入れ」の材料加工(ひご取り)まで終え、7月27日(金)から8月19日(日)までの夏休みを経て、いよいよ8月20日(月)から第二過程(つまり二学期)がスタート。現在は第三課題「網代小物入れ」を鋭意作成中だ。
今日ご紹介するのは、第二課題「鉄鉢盛りかご」の底、第三課題「網代小物入れ」で底と胴に使われている「網代(あじろ)編み」。
網代(あじろ) 杉・檜(ひのき)・竹などの細い薄板を素材にして互い違いにくぐらせて編んだものをいい,敷物や壁などに用いる。その歴史は古く,縄文時代後期からみられる。天井・垣根・笠などに使用。
なんと縄文時代後期から4000年以上にわたって連綿と受け継がれてきた技法!いやはや歴史の重さを感じる。
網代編みとは言うが、やってみて思うのは、どちらかというと「編み」より「織り」に近い。糸を布にするように、竹ひごをシート状に仕上げていく。
今回紹介するのは、網代編みの中でもオーソドックスな「桝網代(ますあじろ)」。これは第二課題「鉄鉢盛りかご」の底にも使われていた。
■材料
・ひご(幅6mm、厚さ0.6mm、長さ40cm)62本
では手順を説明していこう。
①まず13本のひごを縦に並べる
今回は柄が分かりやすいように、縦ひごは生成、横ひごは赤にしてみた。そのままだときれいに並ばないので、辞書や文鎮などを重しにして押さえておくといい。あまり詰めて並べると、横ひごが入れにくいので隙間があった方がいい。
②1本目の横ひごを入れる
これが横ひごの中心になるので、縦ひごの真ん中あたりに入れよう。おさえとすくいの数に注意しよう。
③2本目の横ひごを入れる
下のひごから3おさえ、3すくいが左に移動していくように、横ひごを入れる位置をずらしていく。
④3本目を入れる
少しややこしいが、おさえとすくいの数に気をつけながら編みすすもう。
⑤4本目の横ひごを入れる
気づいただろうか。基本は3おさえと3すくいを交互に繰り返すが、真ん中のみ、5→3→1の順番で数が変わって行く。
⑥5本目の横ひごを入れる
5→3→1のおさえの後は、5のすくいが出てきた。ここから同じく5→3→1の順番で、すくっていくが、ここで縦ひごを詰めてしまおう。
詰めると縦ひごが重なって数を間違えやすくなるので、くれぐれもおさえとすくいの数には注意しよう。
⑦6本目の横ひごを入れる
真ん中は5すくいの次なので3すくいだ。
⑧7本目の横ひごを入れる
真ん中は3すくいの後なので1すくい。これで5→3→1のおさえとすくいが交互に現れた。
ここで全体を180度回転しよう。
そしてまた同様に②~⑧を繰り返す。
桝網代(ますあじろ)と呼ばれる所以がおわかりだろうか。縦と横に編んでいくと、斜めに正三角形が現れるのだ。
そのままもう一度②~⑧を繰り返し、
180度回転させて、また②~⑧を繰り返す
今度は90度回転させる。そしてまた②~⑧(赤白は逆)を繰り返す。
更に180度回転させて、②~⑧を繰り返して残りを編んでしまおう。
じゃーん。
ちなみに裏は色目(縦横)が逆転している。
そして少し手直しをしよう。恐らくひごとひごの間に隙間が空いているはずだ。
爪を使って、しっかり隙間がなくなるまで詰めてやる。これを目詰めといって、網代編みではとにかくこの目詰めをしっかりすることが大事。隙間が空いていると、見栄えがよくないだけでなく、仕上がり寸法も変わってきてしまう。
爪を噛むクセがあるせいで、終始極度の深爪である私にはなかなか辛い作業だが、限られた爪を使って、必死にぎゅーぎゅー詰める。
桝網代の完成だ!この2色で編むと異国情緒が漂う!
網代は縄文時代からあるとはいえ日本独自のものではなく、実は身近なところにある。
たとえば先日リサイクルショップで買った東南アジア製の竹マット(ござ)。
遠目に見るとわかりにくいが、
実は全て網代で編まれている!2畳ほどあるマットだが全て網代編みだ。
また先日高知の日曜市で買ったインドネシア製の籐のバッグ。
ご覧の通りほぼ全て網代で編まれている。そして素敵だ。
そして更に!網代は竹ひごをただシート状にするだけでなく、立体に立ち上げることができる。それを活用しているのが第三課題「網代小物入れ」だ。
まず今回の桝網代に似た「長桝網代(ながますあじろ)」を編んで、
コテで4辺を曲げて、立ち上げながら編んでいくと、なんと箱状に!
きゃーすてき!このままでも多肉植物とか入れたらかわいい!逆さにしたら帽子みたい!
といった感じできゃーきゃー言いながら(悲鳴も含む)竹と戯れたり取っ組み合いをしたりしている。
アジア雑貨屋などで売ってる小物でも、網代の技法を応用したものはとても多いので、「こんなところに網代が!」とぜひ驚嘆してみてほしい。名前を得た途端、モノ達は目に飛び込んでくるようになるものだ。
さて、訓練開始からもうすぐ5か月、いよいよ自前の道具もほぼ揃い、自宅アパートでの竹仕事も行えるようになりつつある。
次回からは訓練校での様子だけでなく、私個人の試行錯誤や切磋琢磨も含めてお送りする予定だ。今まで習った技法だけでも、実は色んなことができる。
例えば第十五回で紹介した輪弧に時計を挟んでみたり、
アイディア次第で、妙なものが生まれる可能性はあるわけで、なるたけ既成の枠にとらわれずに、竹と戯れてみようと考えている。
ではまた次回!