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39歳父の竹修行奮闘記 第十九回「竹細工って?素朴な疑問に答えます!」
【前回までのあらすじ 】
39歳でひょんなことから別府で竹細工を学ぶことになった私。竹細工をする上で、とにかく大事な材料作りであるひご取り。竹を割って、剥いで、幅を揃えて、面を取って、うらすきで厚みをそろえて、とうとうひごが出来上がる。まず風車と四海波かごを作って、第一課題「六つ目編み盛りかご」、第二課題「鉄鉢盛りかご」が完成し、夏休みを経て、いよいよ二学期、家でも竹仕事をスタートした!
今回ははちょっと趣向を変えて、竹と竹細工に関する素朴な疑問にお答えしてみようと思う。
ただ私も竹細工を始めてたった半年、誤謬などあれば遠慮なくご指摘いただきたい。
Q1. そもそも竹細工って何?
A1. 竹を材料にして、細工物をつくることです。細工物ってなんやねん!て思いますよね。私も思います。
具体的にはカゴやザルなどの道具、竹とんぼなどの玩具、篠笛や尺八などの楽器、工芸品、美術品などなど、竹で作ったものは全て竹細工と言えます。日本全国、いや世界中に様々な竹細工があります。
駿河竹千筋細工。虫も虫かごも竹!
Q2. 別府と竹細工、なんか関係あるの?
A2. 別府といえば温泉が有名ですが、実は大分県は竹細工に適していると言われている真竹(マダケ)という竹の生産量が日本一で、良質な真竹を使った竹細工が室町時代から発展してきました。
竹細工と温泉も深い結びつきがあり、江戸時代には湯治客が竹製品を購入して持ち帰ったことで全国的に別府竹細工が有名になりました。
温泉と竹かごは相性がいいのです。
Q3. 真竹ってその辺に生えてるやつ?
A3. 日本で一番多いのは孟宗竹(モウソウチク)という種類の竹で中国原産です。大きくて美味しいタケノコが採れるので、江戸時代あたりから爆発的に全国に広がりました。
次に多いのが真竹、これは日本自生とも中国原産とも言われてますが、孟宗竹よりも細め。タケノコも食べられますが少し苦め。タケノコの時期も5〜6月と孟宗竹よりも遅めです。また弾力性があり、曲げや圧力にも強いので、日本では多くの竹細工で使われていて、別府竹細工もそのひとつです。
真竹と孟宗竹は節で見分けられます。
Q4. 竹はいつ切ってもいいの?
A4. 真竹の場合は9〜12月が採り旬と呼ばれています。その時期は竹の中のデンプン質が少なくなるので虫がつきにくい、というのが最大の理由です。流しそうめんとかで夏のイメージがありますが、冬に採るのが一般的ですね。
みんな大好き流しそうめん
Q5. え、竹って抗菌作用とかありそうだけど、虫がつくの?
A5. はい、竹を食べるのが大好きな虫がいます。三大害虫としてチビタケナガシンクイ、タケトラカミキリ、ナガタキクイムシの三種を訓練校では習います。
彼らが食べるのはもっぱら身の白い部分で、さすがに硬い皮の部分は虫でも歯が立たないようです。チビタケナガシンクイの幼虫が食べた後の竹は、粉だらけの穴だらけで、なかなか見応えがあります。
チビタケナガシンクイ。今日も見ました。
Q6. 切った竹はすぐ竹細工に使えるの?
A6. すぐに使えます。でも別府竹細工の場合は、油抜きという処理をして象牙色に仕上げたものを使うことが多く、これを白物(しろもの)と呼び、青いままの竹を使うのは青物(あおもの)と呼びます。私個人としては、青竹をそのまま使うのが野趣に富んでて好きです。
憧れの廣島一夫さんの竹仕事。青物は時間が経つと飴色になる。
Q7. 油抜きって何?
A7. 青い竹を熱することで、内部の油分が外に溶け出して、それを汚れと一緒に拭き取ることで、光沢が出て、色の経年変化が少なくなります。この作業を油抜きといい、油抜きをした竹を晒し竹(さらしだけ)といいます。
油抜きの方法は2種類。まずは乾式、火で竹をあぶって、すぐに油を拭き取る方法。そして湿式、苛性ソーダを混ぜたお湯の中に竹を入れて煮沸し、釜から出してすぐに油を拭き取る方法。
大手の竹材屋さんは湿式を採用しているところが多いですが、乾式の方が光沢が出るとも言われています。また苛性ソーダの廃水がそのまま川に流されていることを憂慮して、晒し竹は一切使わないという青物職人の人もいます。
油抜き前と油抜き後。
Q8. どの竹を切ってもいいの?
A8. 通常竹細工には3〜4年ものが適しています。ただ縁巻きといって、ザルやカゴの縁を螺旋状に巻くのは、1〜2年ものの竹(新子竹(しんこだけ)といいます)でないとできません。若い竹ほど割ったり剥いだりがしにくいですが、曲げても折れにくいという特徴があり、用途によって使い分けます。
竹の年齢の見分け方は、一番下に皮が付いてるのは、出たばかりの一年生。青々としている竹も若い場合が多いです。白っぽくて節が高い竹は、新子竹ではないとわかります。
Q9. どんな竹でも竹細工できるの?
A9. やろうと思えばできます。でも用途によって竹を選ぶ必要があります。
選ぶ基準はまず太さ。幅の広いひごを取りたいなら、太い竹じゃないとアーチがきつくて取れません。次に硬さ。ひごに使うのか、縁に使うのか、用途によって必要な硬さが変わってきます。
そして一番大きいと言ってもいいのが、節と節の間(節間:せっかん)の長さ。竹を編む上で節の位置は死活的に重要です。節間が長い竹は特に重宝します。竹をやってると、どうしても節間の長さに目が行きます。
Q10. 日本の竹細工ってどうなの?
A10. 動物で言うなら絶滅危惧種です。伝統工芸に指定されているのが、別府竹細工、勝山竹細工、駿河竹千筋細工の3つ。しかし伝統工芸のご多分に漏れず、どこも後継者不足は深刻です。
生物や言語と同じように、技術に関しても、一度ついえたものを復活させることはほぼ不可能です。竹細工も縄文時代から連綿と続いてきた技術ですが、経済優先の世の中では、近い将来消えてしまう可能性が大いにあります。
もったいない。あまりにもったいない。人類の叡智ともいえる一連の技術が、たった60年ほどで急速に絶滅へと向かっている。その流れに微力ながら抗おうと、私は竹細工の世界に足を踏み入れました。どこまで力になれるかはわからないですが、精一杯やってみます。
宮崎県の「かるい」。いつか作りたい…
今回はここまでにしよう。他にも何か疑問があったら、どんな些細なことでもいいので尋ねて欲しい。責任を持って、必要があらば関係各方面に問い合わせて、お答えする。
次回は竹で鍋敷きを作る!どんな鍋敷きができあがるのか?!乞うご期待!
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