Valuation - 企業価値評価に対する誤解
こんいちは。今回は、企業価値に対するよくある誤解について述べてみたいと思います。
私は企業価値評価について学ぶ前には、これらの評価手法を学べばある程度客観性のある価格を導け出すのではないかと思ったごろがある。残念なことに、価値評価は評価者の恣意性が強く反映されるため、学べば学ほど客観性はないことに気づいた。
実際にCorporate financeとValuationを教えるAswath Damodaran教授もいろんな事例を挙げながら企業価値評価には偏見や先入観が介在すると説明している(注1)。
例えば、Damodaran教授は、自分の学生達を2つのグループに、ある企業の企業価値評価を課題に出し、価値評価に必要な同じ情報を与えた。また、一つのグループには何の追加の情報を与えず、他のグループには大体その企業は20-25ドルが合理的だという話をした。その結果、企業価値の追加の情報を与えられなかったグループは、37-38ドルと評価した一方、20-25ドルが合理的だという話を聞いたグループは、正確に20-25ドルになるように評価したようだ。
また、今は周知のことではあるが、Sell sideのアナリストは自分が担当している企業とのRelationshipを考慮し、その企業を過大に評価する傾向にあることも言及したり、離婚する際は依頼者が得になるように(極端な例ではあるが、夫が財産をもっており、その財産を半分に分割する必要がある場合、その価値が0だったら、0を相手に渡せば良い)仕掛ける。また、M&Aはまさしく偏見が極めて介在する場面だとも言及している。
彼はこのようなことを「If you get paid to do a valuation stop talking about being objective」と表現している。
この講義を聞いて私は共感し、面白いと感じた。ある程度安定的かつ継続的な収入が見込まれる業界の会社(P&GやCoca-cola等)は、評価者によって価値が大きく変わることはないと思う。しかし、そのような業界の会社でさえ、非常に楽観的な前提(例えば、市場成長率よりも高い成長率で、市場平均よりも高いROI)を置き、合理的に聞こえるストリーがあれば、一概にその評価結果を否定することはできない。つまり、評価者によって価値が大きく違う可能性はあるということだ。
また、ゲーム業界や製薬会社等、ある製品や開発の成功がその企業の業績を大きく左右する場合、将来の事業計画の不確実性は極めて高いし、これらの業界の会社(特に成り立ての会社)をDCF法で評価するのは無意味だとも考える。
Damodaranは、下記のようにValuationに対する誤解および真実について定義しているので、参考すると良い(注1)。
Myth 1: A valuation is an objective search for “true” value
Truth 1.1: All valuations are biased. The only questions are “how much” and in which direction.
Truth 1.2: The direction and magnitude of the bias in your valuation is directly proportional to who pays you and how much you are paid.
Myth 2.: A good valuation provides a precise estimate of value
Truth 2.1: There are no precise valuations.
Truth 2.2: The payoff to valuation is greatest when valuation is least precise.
Myth 3: . The more quantitative a model, the better the valuation
Truth 3.1: Your understanding of a valuation model is inversely proportional to the number of inputs required for the model.
Truth 3.2: Simpler valuation models do much better than complex ones.
注1:https://www.youtube.com/watch?v=5T2PmzsxhkM&list=PLUkh9m2BorqnhWfkEP2rRdhgpYKLS-NOJ&index=3
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