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危険な Blues "Tommy Johnson"
Tommy Johnson は、録音の少なさにも関わらず Delta Blues の中でも 異彩を放っています。
デルタ・ブルースに共通する濁声に加えて、"Cool drink of water blues" や "Canned heat blues" で現れる不気味なファルセットは、1度聴いたら忘れられません。
前者の
I asked for water, and she gave me gasoline
なんて歌詞を妙なファルセットを交えて歌われると、本当に参ってしまう。
Cool drink of water blues
"Canned heat" は、缶入りの料理用燃料から取ったメタノールのことのようです。(英語版Wikipedia2022.6.16. Tommy Johnson)
小出斉 著「意味も知らずにブルースを歌うな!」にはキャンドヒートについて
元来はS.Sterna & Co.という会社が作っていた"Sterno Canned Heat"なるペースト状の缶入り携帯燃料のことを指す。その燃料を、チーズをこすためのチーズクロスや靴下に入れて擦るように搾り出し、液体のアルコールを抽出するという
と書かれています。
飲むと危険な燃料用のメタノールを飲用アルコールに混ぜて飲んだりする事が、戦後すぐの日本でもあったと、祖父から聞いたことがあります。失明や亡くなる恐れもあったとか。それと同じようなものでしょうか?
気味の悪い歌い方は、そんな危険なものにまで手を出してしまう (それとも飲まされる) 状況を自虐的に笑っているようにも思えます。
Canned heat
ブルースは僕にとって必須の音楽で、たまに聴かないと活力が出て来ない。しかし下手をするとあたってしまう、毒にも薬にもなる音楽だと感じます。
Tommy Johnson はその中でも本当にすれすれ。実に強烈です。
Tommy Johnsonは1956年に心臓発作で亡くなりました(享年60才)。(英語版Wikipedia2022.6.16. Tommy Johnson)
(この記事は以前 Instagram (philosophysflattail)に上げたものを手直ししたものです。だいぶ変わってはいますが)
2022.6.17.
ひらげエレキテルさんが Tommy Johnsonの "Cool drink of water blues"の歌詞を訳して興味深い話を書いているのに今気がついた。"危険なお酒'についても書いてある。面白いなぁ。↓
*「意味も知らずにブルースを歌うな!」小出斉
2016.10.25.初版発行、2016.12.20.第二刷発行、株式会社リットーミュージック
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自己紹介の代わりに