「現代詩手帖 2024.5 特集 パレスチナ詩アンソロジー 抵抗の声を聴く」について。
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「現代詩手帖 2024.5 特集 パレスチナ詩アンソロジー 抵抗の声を聴く」
忙殺されなかなか探しに赴けず歯痒かったけれど、少々プレミアのついた値段でなんとか手に入れた。素晴らしい内容です。
昨年の暮れにイスラエル軍の爆撃によって惜しくも殺されてしまったリフアト・アルアライールの詩と生命が、彼の教え子であるアリア・カッサーブに引き継がれる冒頭から特集の末尾まで、一息もつかずに読み進めた。
出版の世界のことはよく解らないが、重版して頂けたら有難いなと思う。
全国の本屋の書棚に、ずっと存在させ続けて欲しい一冊。
爆弾や銃弾が降り注ぎ、ライフラインの破壊と飢餓に苛まれ、完成までにそれなりの時間的・物質的な余剰を要する長編小説や映画がなかなか成立し得ない民族浄化の極限下をもすり抜け生き延びる、「詩」というメディアの耐久力、強さ、速さ、深さ、はかなさと永遠性。
一編ごとに加えられる編者の丁寧な解説や、アラブ文学者・岡真理さんらの証言によって、パレスチナ詩人の現在と、その両肩に負わされた悲痛な歴史の重みだけでなく、「詩」というものそれ自体の根本的な面白みまで知ることが出来る貴重な一冊になっていて、
日帝統治時代の朝鮮詩集や森崎和江、谺雄二など、ほんのわずかな詩篇を好むばかりで、このジャンルに対してほとんど無知なまま来てしまった自分のような者にとっては、格好の入門書ともなってくれた。
人間の可能性を今でも信じようとする、あらゆる方に手に取って欲しい。
そしてアラブ詩の伝統に沿って、これらの切実な詩を、あなた自身の声で、音読してみて欲しい。世界でひとつだけのレコードに、針を落とすように。
その忘れようもない歌の連なりが、私たちとパレスチナのあいだに介在する冷えた被膜に裂け目を入れる。
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