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【読書日記】プラチナ・ビーズ

五條瑛/集英社文庫
いわゆる鉱物シリーズ第一弾

<あらすじ>

米国関係の情報機関に属するアナリストの葉山は、<会社>指定の対象者から聞き取り調査をするのが主な仕事。
北朝鮮を中心とした東アジアの情報を扱っている。
聞き取りをした女子大生が殺されたところから、葉山はどんどん捜査の深みにはまっていく。
別の方面では脱走した米軍兵士が殺されて見つかった。
誰にどうして殺されたのか、米海軍の坂下が調べ始める。
葉山と坂下の調査は途中で同じ道に行き当たり、北朝鮮の諜報員が日本から何かを盗み出す算段でいることを突き止める。

<勉強になったところ>

進み方のスピードが違う二本の事件があることで、説明もしつつストーリーも進んでいると読者に思わせているところが巧妙。
二つの事件が一つになって物語が加速するんだけど、最初、葉山の方はあんまり動かない。
葉山の目を通して主要キャラクターを紹介していっているためだと思う。
坂下の方は死体が出るところから始まって、最初からクライマックス状態。
主要キャラクターの解説を葉山が受け持つのは、
①葉山の方が関わりが深い人――田所先生とか特に――が多いから
②坂下がそんなマメに人の紹介をできる人物ではないから
この二つの理由からだと思う。
反対に、葉山を解説キャラクターにすることで①②を印象づけることもできて、双方向に効果がある。
どのキャラクターがどのパートを受け持てば自然か、というのは大事だと思った。

<うまく言語化できないけど勉強になったところ>

①葉山と坂下・・・設定上バディではないんだけど、二人セットで動くことが多い。
②葉山とDJ・・・設定上バディ。二人セットのシーンが少ない。
①②両方見せることで、それぞれのキャラクターが個別に行動していることが強調されていると思う。
バディものではないし、バディものとして見てしまうとドライすぎる。
それを逆手に取って、一瞬バディもののような振りをしながらドライな関係性がわかるように仕組まれている気がする。
キャラクター同士の距離感の描写も大切だと思いました、という話。

<感想>

現代日本なんだけど、普通に生活している分には意識しない部分にスポットが当たっているので、異世界感がある。
異世界じゃないのに異世界感というギャップが好き。
作者は元々防衛省で情報関係の仕事をしていたようだから、下地はあったんだと思うけど、きっとものすごい下調べをして書いてるんだと思う。
こういうの書いてみたいなあ、と思う。
別にスパイ小説じゃなくてもいいんだけど、なんかちょっと見慣れない世界にがちんこ体当たり的な。
地盤をめちゃくちゃ丁寧に固めて、その上に高層マンション建てちゃうみたいな。

エディ嫌な奴なんだけど、高校時代からエディが好きで、やっぱりエディが好き。
改めて読み直してみて、葉山の魅力もわかったし、坂下かっこいいなーと思った。
たくさんいるキャラクターがみんな、自分の持てる能力の一番いいところを抽出して戦ってるのがいいんだと思う。
エディはだいぶ節約モードなんだろうけど……。
吾郎ちゃんとか、田所先生とか、葉山の視点では「え、なんで? それでいいの?」みたいな感じで描かれるけど、二人とも自分で選んで納得してる感があるのがものすごく爽快。


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