父はきっと、プレバトの色鉛筆画をやりたかった
夕食時、『プレバト』のリアル色鉛筆画、三上詩絵先生のお手本を見て、父と母と私は毎回感動していた。色鉛筆画なのに色鉛筆画じゃないみたい、写真みたい、というのが三上先生の作品の特徴であり、魅力。
しばらくして、父の持ち物に色鉛筆の24色セットがあることに気づく。何かに感動したとき、母は単純に褒め称えて終わりだが、私と父はわりと、「やりたい」「修得したい」という方向に意識がいく。
器用で、興味を持ったら何事も極める父は、仕事関係の溶接や重機、大型車の免許などの他に、整体やビーズ手芸、書道、表具、羅漢石像といったものにも技を磨いていた。芸術家というより職人のイメージだが、そういう多趣味な父だから、絵を描いていたとしても不思議ではない。
父がその色鉛筆を使って描いているところは見たことがない。よく見ると何色か芯がわずかに減っているが、ほとんど新品である。
遺品となったこの色鉛筆は、私がもらった。私もリアル色鉛筆画をやってみたかったし、父もきっと、これからいっぱい描いてみたかったのだと思うから。