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大切なことは生協時代の先輩に教わっていた

自然に還る、化学調味料不使用、安心安全などなど、「環境や体になんか良さそう」な言葉をいろいろ聞くけども。
今思うと私が初めて就職したところでは、これを当たり前に貫いていた。

勤め先は店舗を持たない宅配専門の生協で、私はカタログ制作の担当として配属された。しかし当時の私は「生協とはなんぞや」というレベル。教育係の先輩は、そんな私をイチから懇切丁寧に指導してくれた。

規模こそ大きくはないが、信念を貫いた商品を扱うその生協は、多分、他の生協と比べてもかなりニッチな部類だったのではないかと思う。

まず農作物には生産者名と農薬散布回数を、加工品にはアレルゲンや原材料を表示していた。
(カタログ制作担当としては毎回多すぎる文字数に悪戦苦闘)

他にも国産原料へこだわり、化学調味料や合成洗剤は一切使わないという徹底ぶり。

Non-GMO(遺伝子組み換えでない)、PHF(ポストハーベストフリー:収穫後の農薬不使用)、石けんシャンプー、フェアトレードといった言葉を知ったのも、この職場でだった。

いろんな「なんか良さそう」を教わったし、学んだわけだが、真っ先にまず教わったことは、たしか「地産地消」についてだったと記憶している。

地産地消――「なんか良さそう」とは思うが、それがどうしてそんなに大切なのか、当時の私にはまったくピンとこない。
それを察した先輩がしてくれた「例え話」を、今でも覚えている。

「例えば戦争が起こったとしてね」

今まさに世界で戦争が起こっているから思い出したとも言える。

しかし当時の私はますますピンとこない顔をしたのだろう。先輩は
「まぁ今の日本では、ないだろうけどね」
と私の温度に合わせた言葉を紡いだ。
今思うと、きっと先輩の中では、もっと現実的に戦争をとらえていたことだろう。

「日本は食料自給率が低いでしょ。自分たちが食べる物を、外国に作ってもらって、輸送費をかけて、日本まで運んでもらっている。そういう状況で戦争が起こったら、日本には食べ物が入ってこなくなるよね」

この話を聞いた約20年後。パンデミックや戦争が起こり、日本は先輩が話したとおりになっている。

「だから国産にこだわるの。国内で――できることならもっと自分に近い地域で食べ物を作って、消費する」

東日本大震災で、私たちは電力と物が届かない世界を経験した。今年の3月にもまた大地震が起こり、東北新幹線や道路がやられた。

日本は今、先輩が言ったとおりの状況に陥っているし、陥りがちだ。

たしかEテレの『100分de名著』だったと思うが、現代は人体の如くネットワークが張り巡らされている、というような話をしていた。大きな血管が詰まったら、それだけで全体が機能しなくなる。だから災害が起こると、途端に物資が滞るのだと。

少し前の日本は、独立した集落が点在していた。だから災害が起こってどこかの集落が被災したとしても、全体には響かない。

――たしかに。となれば、周りの無事な集落が被災集落を支援することも容易だろう。

「だから、地産地消って大切なんだよね」

先輩の言葉を思い出す。
本当ですね、先輩。必要な物は、近くでまかなえた方がいい。はるか遠くの国から運んでくるよりも。

「なんか良さそう」程度に思っていたあの頃の話。今の私なら、もっと真剣に耳を傾けたことだろう。

国内に地産地消で回せる地域をたくさん包含した方がいいのでは、というようなことを、近頃よく考える。

  *

いつか先輩に再会したとき、伝えたい話がある。

先輩、私最近、牛乳の味に敏感になってきたんです。「低脂肪」とか「無脂肪」など手を加えたものよりも、自然に近い「成分無調整」の方が美味しいと思うようになりました。

それと、生まれ育った「岩手」の牛乳が、やっぱり美味しいと思いました。

それからもう1つ。
私は日本酒が飲めません。どうしても口に合わないし、飲むと具合が悪くなりました。

だけどこの前初めて、「あ、これは口に合う」と思えた日本酒があったんです。これが自分でも驚いたんですが――

「玉の春」なのです。
岩手の、地元も地元、千厩せんまやのお酒なのです。

やはり地元の水が一番自分に合うということでしょうか。

先輩、私の体は、無意識に「地産地消」したがっているのかもしれませんね。


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