【小説】太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと(14)
(第1話/あらすじ)
「ばかですね。本当ばかですね」
これで何回目だろう。
運転席の雪洋はまだ不機嫌そうな顔をしている。
「そうだ美咲、杖は持ってきましたか?」
先日、雪洋が杖をくれた。
折り畳み式の杖で、一度だけ試しに使ってみたら、これが思いの外良かった。
とても楽に歩ける。でも――
「持ってくるわけないじゃないですか」
「どうして?」
「杖だけは嫌です!」
美咲にとって杖というのは老人の象徴であり、二十七歳の自分にはどうしても抵抗があり、絶対に人前では使いたくな