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「短歌は季語を入れなくていいの?」
短歌に興味はあるけれど、ルールや作り方は学んだことがない方も多いのではないでしょうか。
短歌や俳句を作るときによく耳にする”季語”ですが、そのルールや使われ方、そもそも季語とは何なのかなど、疑問は多く存在します。
この記事では、そもそも季語を入れるべきなのかといった短歌の基本知識や作り方、作る際のポイント、面白い短歌の例などを紹介していきます。
短歌について知ることは、日常の小さな感動を自分なりに表現していくきっかけになります。
短歌の面白さに触れながら、一緒に学んでみませんか。
1: 短歌は季語なしでOK!入れても個数制限なし
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短歌に季語は必要ありません。5・7・5・7・7の計31音で表現されていれば大丈夫です。
読み手側に季節感を伝えるために、季語を用いる場合もありますが、その場合でも季語の個数に制限はありません。
つまり、短歌にはそもそも「季語」という概念がないのです。
1-1:短歌とは?和歌の形式の一つ
短歌は、5・7・5・7・7で構成される和歌の形式の一つです。
前半の5・7・5の部分を上の句、後半の7・7の部分を下の句と言います。
歴史は古く、飛鳥時代から奈良時代にかけて詠まれた歌が収録されている万葉集にも、短歌は和歌として登場しています。
万葉集に続き、古今和歌集や新古今和歌集などから影響を受け、貴族の教養として嗜まれるようになりました。
時代に合わせて変化していき、明治時代以降に短歌という呼び方が定着しました。
1-2:俳句との違いは文字数と季語
短歌と俳句の大きな違いは、文字数と季語の有無です。
俳句は5・7・5で表され、季語が必要となります。また、俳句は1句の中で季語を1つだけ使用することが基本です。
そもそも季語とは、春夏秋冬の季節を連想させる特定の言葉のことです。入学式、花火、もみじ、霜焼けなども季語となります。
また、俳句と比べて短歌は恋の歌が多いというのも特徴です。貴族の間では気になる相手に、恋文として短歌に思いをしたためていた歴史があります。
2:短歌の作り方
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短歌がどのようなものか理解できたら、実際に自分でも短歌を作ることができます。
それでは、短歌を楽しく自由に作るためには、どのようなことを意識すれば良いのでしょうか。
2-1:短歌の基本ルール
・5・7・5・7・7の31音で表現する
語呂がよく、読み手が理解しやすい短歌にするために、5音と7音が用いられています。
読み手に伝わりやすい、耳馴染みの良い短歌にするためには、この定型を意識することが重要です。
・季語は必須ではない
俳句では季語が必要ですが、短歌では必ずしも必要ではありません。
もちろん、季語を入れることで季節感を出したり、情景が浮かびやすい内容にしたりと、内容や表現に合わせて自由に使えます。
・字余り、字足らずでもOK
5音、7音に合わせて言葉を選んでいくことが基本ですが、文字や音が足りない、または1字はみ出してしまっても、短歌としてのリズムが崩れなければよいとされています。
2-2:短歌を作る手順
(1)伝えたいことを決める
短歌で表現したいテーマや気持ちを決めます。
伝えたいことを先に決めておくことで、言葉を選ぶ際に、きちんと情景や心情を表す言葉選びができるようになります。
(2)言葉を選ぶ
5・7・5・7・7に合わせて、言葉を選んでいきます。
この際に押さえておきたいポイントは、単語の音を意識することです。
例えば「シャーベット」という単語は、「シャ/ー/ベ/ッ/ト」というように、5音で数えていきます。
・「シャ」や「ふぁ」など、小さい「やゆよ」「あいうえお」が入る文字(拗音)は、前の文字と合わせて1音で数えます。
・「シャー」と伸ばす文字(長音)は、「ー」を1音として数えます。
・「ベッ」の小さい「つ」が入る文字(促音)は、「ッ」を1音として数えます。
このように、声に出した時の音に注目して、音を数えていくことをお勧めします。
(3)声に出してリズムを整える
実際に声に出してみると、文字の状態では気づくことのできないリズムや違和感が発見できます。
読み手に伝わりやすい言い回しや、言葉の入れ替えを行うことも重要です。
(4)全体を読み返す
全体を通して、情景が浮かんでくるか、気持ちが思い浮かぶか、リズミカルな表現になっているかを確認します。
3:短歌を作るときのポイント
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実際に短歌を作る際に、楽しく自由に表現できると、より表現の幅が広がります。
どんなことに着目すべきか、言葉や表現をどのように活用するのかなど、日常の中でも気軽に楽しく短歌が作れるコツを紹介します。
3-1:読み手を意識する
読み手は他人であり、自分と同じ経験をしていない人です。
自分とは違う読み手に、自分の気持ちや感じたことが伝わるような表現を意識することで、読み手が理解しやすく、共感しやすい短歌にすることができます。
3-2:目に見えるもので表現する
「嬉しい」「美しい」など、感情や状態を直接的に表す言葉(形容詞)がありますが、どのくらいの感情・状態なのかが、読み手に伝わりにくい印象です。
目に見えるものや、起きたできごと、風景を表現することを意識し、感情の大きさや感動の程度を読み手に想像してもらえるようにしていきましょう。
3-3:普段使っている言葉を意識する
話し言葉や、日常的に耳にする名称などを使うと、よりリアルに情景が浮かびます。
普段の会話や、心の中で考えていることを、短歌に入れてみましょう。
短歌の中でも、「 」を使い、言葉を強調させたり、話し言葉を入れたりすることができます。
3-4:音を使う
擬音語や擬態語など、オノマトペを使うことで、より詳しく身近に表現できます。
聞こえる音や目に見える光、物の質感、空気感などを、言葉にして短歌に使ってみましょう。
3-5:題材を拾う
日常の中の小さな心の動きが、短歌づくりのきっかけになります。
美味しいと感じたお昼ごはんや、近所の公園で見つけた季節の変化など、大きなできごとでなくても、生活の中で何かを感じる瞬間があるのではないでしょうか。
その瞬間の風景や自分の気持ちを振り返ることが、短歌の表現につながります。
3-6:言葉をメモする
5音、7音で表現できる言葉のストックを作ることで、短歌の中でも言葉を当てはめやすくなります。
何気なく聞いた音楽の歌詞や、普段触れているものから、単語や表現、言い回しなどをメモしておくと、スムーズに短歌を作れるだけでなく、より情景にフィットした言葉選びができます。
4:短歌の紹介
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読み手側として短歌に触れることで、作者の気持ちや情景が想像でき、短歌の面白さや奥深さを知るきっかけとなります。
また、様々な短歌の言葉選びやリズムのつけ方に触れることで、自分で短歌を作るときの参考にもなります。
ここでは、近代以降の短歌を紹介します。
・死に近き母に添寝のしんしんと 遠田のかはづ天に聞ゆる
引用元:斎藤茂吉「赤口」「死にたまふ母」
・やわ肌のあつき血汐にふれも見で さびしからずや道を説く君
引用元:与謝野晶子「みだれ髪」
・たはむれに母を背負ひて そのあまりに軽きに泣きて 三歩あゆまず
引用元:石川啄木「一握の砂」
・いつもより一分早く駅に着く 一分君のこと考える
引用元:俵万智「サラダ記念日」
・猫なげるぐらいが何よ 本気出して怒りゃハミガキしぼりきるわよ
引用元:穂村弘「シンジケート」
・えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい
引用元:笹井宏之「えーえんとくちから」
・カードキー忘れて水を買いに出て僕は世界に閉じ込められる
引用元:木下龍也「つむじ風、ここにあります」
・体育館の窓が切り取る青空は外で見るより夏だったこと
引用元:岡野大嗣「玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ」
・ドンドンドンドン・キホーテの水槽のウツボ お前も旅に出ないか
引用元:寺井奈緒美「アーのようなカー」
・ピザーラが特に好きでもないのだがチラシを捨てる後ろめたさよ
引用元:工藤玲音「水中で口笛」
・オリーブも胡麻も油になるような星でどうして君に会えない
引用元:鈴木晴香「心がめあて」
・もう会えないわけじゃないけど また会える保証もないよ 人生だもの
引用元:佐藤真由美「きっと恋のせい」
・煙草いりますか、先輩、まだカロリーメイト食って生きてるんすか
引用元:千種創一「砂丘律」
・先生がやさしいだけの教室でト音記号もうまく書けない
引用元:嶋田さくらこ「やさしいぴあの」
・手を振ればお別れだからめっちゃ振る 死ぬほど好きだから死なねえよ
引用元:石井僚一「死ぬほど好きだから死なねーよ」
5:短歌は季語の概念なし!自由に創作しよう
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今回の記事では、短歌の基本ルールや作るときのコツなどについて紹介しました。
長い文章ではなく、31音という制限があるからこそ、凝縮された表現の面白さや、浮かんでくる情景が、より濃くなるのではないでしょうか。
SNSを中心に若者たちの間で”短歌ブーム”が広がる今、作品に共感するとともに、自分で作り発信していく、という楽しみ方も生まれています。
日記のような感覚で、日々のできごとや感情を残すツールとしても活用できます。
短歌を通して、日常により多くの彩りが生まれると嬉しいです。