私でできた水面の波紋をにらむ
コンビニのコピー機が寝不足で
私の書いたデータを印刷させてくれない
しょうがないから
天むす買って暗い明け方 家へ戻る
帰り道の途中 来た時と同じように
幼稚園の建物が眠っていて
昨日迎えを忘れられた子を一人靴箱に
ぎゅうぎゅう詰めに隠している
もちろんばらばらに解体して
私の書いた文章も解体されて
しまえばいいのに こんなことなら
一緒に眠らせてあげてよ
そうしてよ
私は鉄柵を乗り越えて
水たまりにうっかり落ちちゃった
そしたら幼稚園のポスターが目を覚まし
私でできた水面の波紋をにらむ
水たまりは深く 深く 深く ふう
なんとか辿り着いた岸には
私の大人の服が
さっきまで来ていた服が
脱げて流れ着いていて ああ
水死体もここへよく流れつくという
私の服はもう私の体にはぶかぶかで
こんなことならダイエットなんてしなくってよかったと
子どもに返った体で思って
私の書いた文章も
子どもに返った私では
もう知らない漢字ばかりで
読めなくはなかったけれど
書いてあることはちんぷんかんぷんで だから
朝 バスでやってきた友達に混じって
幼稚園で読み上げた
みんな首をひねって聞いてくれて
なんだ みんなも同じだったんだねって
嬉しかった
本当はそんなことないのにね
迎えに来る人はもういなくて
今度は私がばらばらに
解体されて靴箱で
眠って水たまりの涸れるのを待つ
涸れきるまでに
また誰かが
ばちゃんと音立てる
いいなと思ったら応援しよう!
もしも気に入りましたらサポートをよろしくお願いいたします!
励みになります喜びます!