HACCPなんてやめちまえ(その3)−役立たずのHACCP、雪印食中毒事件
ウェブサイトからの引用
雪印メグミルク株式会社のウェブサイトから事件の概要を引用します。
自社のネガティブな過去について、包み隠すことなくウェブサイトに掲載していることは確かに悪いことではない気がしますが、何か他人事のような口調は少し気になります。理由は明らかです。事件を引き起こしたのは雪印乳業であり、事件後解体されました。現在ウェブサイトに掲載しているのは事業を継承した雪印メグミルク社です。つまり精算され、現在では何の関係もない過去の会社のできごとであると、よそよそしい書き方をしているように思えてしまいます。
黄色ブドウ球菌について
原因となった細菌は黄色ブドウ球菌、正確に言うと黄色ブドウ球菌から排出されたエンテロトキシンAと呼ばれる毒素による食中毒であるとされています。
食中毒を引き起こす微生物は2つに分類されます。一つ目は感染型と言われ、菌そのものが有毒であり、菌に汚染された食品を食べたり、飲んだりすることにより発症するタイプ、二つ目は毒素型と言われ、菌そのものには毒はないが、菌が排出する毒素により、食中毒が引き起こされるタイプです。
問題となった黄色ブドウ球菌は後者の毒素型に分類されます。感染した場合、はき気、おう吐、腹痛が主症状であるが、下痢をともなうこともあり、一般に高い熱は出ないらしいです。幸いなことに一万人を超える有症者を出した雪印集団食中毒事件ですが、エンテロトキシンによる直接の死者は出ませんでした。
黄色ブドウ球菌はそれほど熱に強い菌ではなく、殺菌により容易に死滅させることが可能です。しかしながら排出された毒素であるエンテロトキシンは100℃、20分の加熱でも分解されない、といいます。
事件の概要
雪印集団食中毒事件は2000年(平成12年)に発生した食中毒事件です。有症者は関西を中心に1万4千人を超えました。
本事件は複雑な側面を持ちます。単なる食中毒事件では終わりませんでした。事件後、雪印乳業子会社である雪印食品の牛肉偽装事件が発覚するなど不祥事が相次ぎました。
この一連の事件を通じて、公表の遅れや対応のまずさがマスコミに次々と問題点が指摘され、企業の危機対応、リスク・コミュニケーション、CSR等多くの問題が一気に噴き出した事件です。
食中毒事件はその原因究明に時間がかかることがあります。本事件も発生から原因の特定まで2か月近くの時間がかかっています。その間、雪印という大企業の不祥事ということもあいまって、原因が特定されていない中で、マスコミからの報道にさらされ続けた結果、問題が複雑化し拡散してしまった感があります。ここでは食品安全に関するところに絞って振り返ってみることにします。
HACCP側の人たちの反応
当初大阪工場出荷の製品に食中毒が集中したことから、大阪工場が発生の原因とされました。
大阪工場は総合衛生製造過程、通称マル総の承認を受けた工場でした。HACCPを導入した工場での食中毒の発生という意味で、HACCPにとって重大な事件のはずです。
その後の調査により、食中毒発生の原因は大阪工場に納入した北海道にある雪印大樹工場で生産した脱脂粉乳が原因だということがわかりました。マル総は工場ごとに承認を得る必要があり、大樹工場は同じ雪印の工場ですがマル総未承認の工場でした。
だからと言ってHACCPが免罪されるわけではありません。同じ会社であっても大樹工場は大阪工場の原料調達先であり、原料である脱脂粉乳はHACCP対応の大阪工場が管理しなければなりません。
このような状況で、HACCP側の人間はどう対応したのでしょうか?