自立② #4

自分のそうした(自立①参照)家庭環境もあったのか、わたしが選んだ仕事は児童専門のソーシャルワーカーだった。

その仕事をする中で、母と子で気持ちがすれ違っている、という現場をたくさん見てきた。
その時に、自分にも当てはまることが多すぎて、徐々に、人の支援をしている場合ではなくなった。会議で、他の家のことを話しているのに、まるで自分のことを、母親のことを言われているような錯覚を起こすことがあり、苦しくなった。身体にでた。休職した。

休職中、カウンセリングでこれまで違和感を持っていた出来事を引っ張り出し、感情に名前をつけた。
すると、どんどん自分を解放できるようになった。
黙っていること=嘘をついていること、だと思っていたけれど、別にそれはイコールで結ばれるものではないということがわかった。
自立した一人の大人なんだから、自分で選択していい、ということがわかった。
それに気付いたら、自分のことを、表現できるようになった。

母に全否定された、文章を書くということも、
母の苦手なロックンロールとメタルとパンクとDJが好きなことも、
とにかくそれが自分にとって楽しいんだからそれでいいし、
母みたいにちゃんとしてないことも、別にそれでいい。
母以外に、それらを受け止めてくれる人たちが、今のわたしの周りには、たくさんいる。
その人たちは、紛れもなく、わたしが人生を切り開いていく中で得た、大切な存在で、自分の力で選んだ人たちだ。

公務員という仕事をしてきた母にとって、今のわたしの働き方も趣味も、きっと許せるものではない。
前はそれが苦しくてたまらなかった。
人と違う生き方をしていることが。常識的ではないことが。不安定な働き方であることが。
母の常識、という小さな枠からはみ出ているだけなのに、まるで、世界に背いてるような、そんな気持ちがしていた。

自立。

わたしにとって、その言葉が持つ意味は、多岐にわたっている。

環境もあるからだけど、母は車に乗れる。だからわたしも車に乗れないといけない。
母は同じ仕事を定年までずっと続けた。だからわたしも公務員張りに安定していてお給料のいい仕事をずっと続けないといけない。
貯金をするのも当然。
ボーナスがあることも当然。
そうじゃない人生なんて考えられない。

これらを全部できていること。
つまり、母ができていることが、できること。
これが自立である。

と、いくらヨガやマインドフルネスをしても、わたしの脳内は母の呪縛で溢れている。

でも、思ったんだ。

専業主婦でもフリーランスでも、みんな何かしらに頼って生きている。
(もちろんそうじゃない人がいるのは大前提)
それは人であったり環境であったりお金であったり。
それらは全て、自分の身の回りにある、資源である。
わかりやすくいうと、めぐみ。
母は、父と離婚したけれど、母方実家という環境には恵まれてた。たぶん、お金にも。でも、愚痴を吐いたりとか、そういう部分には困っていたんじゃないか。

みんな何かしらにめぐまれていて、何かしらに困ってる。
わたしはたぶん、だからこの「困ってる」部分にフォーカスを当てているソーシャルワーカーになったんだろう。
困ってる人を、何かしらのめぐみへとつなぎたい。
そう思って。

わたしは幸い、実家のお金にはめぐまれている。
でも、実家は、わたしがお金以外のことで困った時に、受け止めてくれるところじゃない。

風邪をひいたら、管理ができてないとなじられるかもしれないし、自由業だと知られれば、発狂されるだろう。
趣味でDJもやってる、なんて言ったらますます悲しい顔をされるだろう。

一人暮らしで、パートナーもいなくて、風邪をひいた時。
親に連絡をして、看病をしてもらう、ということがスムーズにできる人は羨ましいなと思う。
そして、家族に、自分の絶対的な味方がいるって、すごいなって思う。
家族愛を歌った歌とか、小説とか。
音楽も小説も大好きだけれど、家族愛だけは、どうしても身構える。

だから、自分が家族を持つとか、家庭を築くとか、そんな想像が全くできなくて。

とにかく、自由であること。
自立の自は、自由の自だ。

自由業を否定してくるなら。
わたしは、あなたが、定年まですることのなかった確定申告と向き合ってるんだよ。
わたしの中では、この、確定申告を自分でする、ということが、自立なんだって、今はそんな気がしてる。
あなたの中では常識ではなかったもの。人にやってもらう税金のあれこれを、自分ですること。

これこそが、最大で最上級の、わたしの中での、自立の定義。

でも、本当はこんな風に思うことなく、自分が思うがままに生きることがベストなんだろうけれど。
こんな風に親の人生と比較している時点で、まだまだ呪縛から逃れられてない。
確定申告も、意味わかんなすぎて爆発しそうだし。
でも今は、自分でやるしかない。
これからは、もっともっと自由業で稼いで、税理士さんにお願いしたいんだ。

え、結局自立してないって?
自分のお金の範囲で自分で選択する(自分でするか、税理士さんにお願いするか)。
大丈夫、自分で選択している以上、それは自立。

--------おわり--------

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