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茨城アストロプラネッツvs巨人三軍観戦記 (2023.4.1)

京王よみうりランド駅に着いたのは、試合開始の10分前。都営新宿線と京王線は乗り入れているからと、甘く見ていた。巨人三軍と職場の元後輩・伊藤悠一監督の茨城アストロプラネッツの練習試合を見に、ジャイアンツ球場に向かう。

(前回はキャンプを訪ねた)

ジャイアンツVロード的な名前の付けられた坂道は、ちょっとした山道並みの傾斜だけど、等間隔に巨人選手の手形が埋め込まれていて、意外と飽きない。

手形は背番号順に、100番台から若い番号へと向かっていく。伊原春樹とかの首脳陣から、小笠原道大や木佐貫洋とかマイケル中村とか鈴木尚広とか、懐かしい名前が並ぶ。みんなどうしてるんだろう?

坂を登り切ったくらいで試合が始まった。3軍の練習試合だから、入場は無料。でも、それなりに観客がいるところはさすが巨人軍。僕はアストロプラネッツのベンチが見えるように一塁側に座るけど、そうすると当然巨人を応援する人が多い。中高生の女子が、推し活っぽく若い選手を応援している。3軍の選手は背番号がみな三桁。といっても「033」とか「044」とかで、何だか市外局番っぽい感じ。

僕は双眼鏡で三塁ベンチを見る。伊藤監督は、ベンチの左隅に座っていて、あんまりよく見えない。たまに見えても半分くらいで、そもそも「ひょっこりはん」みたいなルックスなので、リアルにそんな感じ。
(監督すみません)
ベンチの座る位置って、色々ありますもんね。でも、試合中そんなに積極的に指示を出してる感じでも無かった。作戦はコーチがやる感じなのかな。

キャンプを見に行った時にもらったメンバー表を忘れたので、どっちの選手もよくわからない。まぁいいか。先入観抜きに、メモ帳に気づいたことを書きながら、試合を見ていく。

バックネット裏にはスカウトっぽい人もいて、ビデオを回している。それが巨人目当ての人だったとしても、アストロプラネッツの選手の多くはNPBのドラフトにかかることが目標だから、気合いの入る試合なのかもしれない。試合を見ていると、徐々に何人かの選手が印象に残ってくる。

ファーストの石垣選手。背番号27。守備の時によく声が出ている。僕が一塁側だからかもしれないけれど、いつも彼の声出しをきっかけにチームメイトが声を出していく。打順も中軸。チームの中心っぽい選手なのかな。

ショートの益子選手。守備がちょっと不安定。序盤から、逃げ腰で捕ったり、捕っても悪送球したり、なんだか弱気な感じ。体つきも少し幼く見える。

リードオフマンはセカンドの上田。上田も小柄だけど、バットコントロールは上手い。セカンドの守備も安定していた。野球センスのある、近本っぽい感じかな(阪神脳)。

ピッチャーの二宮投手。最速140キロ台前半。でもストレートには力があるように見えた。全体的にアストロプラネッツの守備が安定しないから、投手がひとりで巨人三軍に挑んでるような感もあった。

市外局番のような背番号の巨人三軍には、デラクルーズとかティマとか中南米系の外国人もいて、でも彼らの線もめっちゃ細い。どんな契約で日本に来てるのかなと興味がわく。

巨人の三軍とBCリーグとの力関係が、そもそもどれくらいのものかはわからないけれど、捕手の肩には大きな差があった。茨城のキャッチャー日渡の肩も弱くはないけれど、なかなか盗塁を刺せない。一方、巨人の捕手は楽々と盗塁をアウトにしていた。中には、スライディングを諦めてしまう選手もいたくらい。何だか不思議な野球が展開していった。

打順も二巡目に入る頃になると、だいぶ選手にも感情移入できてくる。

守備が不安定な益子君(この頃は心の中で君呼び)は、その後もミスを繰り返し、4回にはサードと守備位置を交代する。なんだか面白い対策。

この回、セカンドに強い当たりが飛ぶけれど、上田君は安定した守備。

さらに、よく声が出る石垣君のファーストにも強烈な当たり!でもこちらもうまく捌いて三者凡退。今日、一番のいい流れ。次の回の打席はその石垣君から。いいじゃん、いいじゃん。

すると石垣君、見事レフトスタンド、は無いけど、そっちの方向のネットにホームラン!
おおお! 僕はこれで満足しました。

さらに次の回の守備では、サードに回った益子君に強烈な打球が!
でも益子君、ちゃんと捌いて、送球もファーストにしっかり届いた。良かった!
推し活にハマる人の気持ちがわかりました。

ここまで書いたところで、チームHPを検索してみる。

https://www.ibaraki-planets.jp/.../toshin.../index.html

石垣君。本職はキャッチャーでした。あ、そうだったの。ていうか、試合中に確認しろよ俺。

そして、益子君。

https://www.ibaraki-planets.jp/team/yuya_mashiko/index.html

益子君は2年目の練習生でした。なるほど。
特技は器械体操。好きな食べ物はオムライス。好きな女性のタイプは「落ち着いていて、大人っぽい人」うん。なんか、わかる。(わかるのか?)

そして好投を続けた二宮投手。

https://www.ibaraki-planets.jp/.../isaki_ninomiya/index.html

シーズンへの意気込みが、とても良かった。

「今年は、自分ストレートをみてほしいです。皆さんが驚くような球を投げるので見といてください!!」

なんか、それは伝わったっす。阪神の湯浅だって独立リーグ出身。頑張ってほしい。

そんなこんなで試合は進み、後半は投手は1回ずつ代わっていった。
佐藤投手。根岸投手。石田投手。みな、いい投手でした。

アストロプラネッツは投手をとても大事にしてる感じで、変な言い方だけど、野手よりも一段レベルが上のように感じた。シーズン前もアメリカで経験を積ませた的な話もしていたし。

そして、9回。伊藤監督が代打を告げた。その時だった。
(急にドキュメント調)

「寺嶋、自信を持って!」

打席に向かう選手に、伊藤監督が声をかけた。この試合、監督が選手に声をかけたのは、聞こえるかぎりそれだけだった。なんか僕は矢野監督における、島田選手や糸原選手っぽい感じがして、おっと思った。
きっと伊藤監督の気になってる選手に違いない。

そんな寺嶋君とは?

https://www.ibaraki-planets.jp/.../yuta_terashima/index.html

ブルーハーツ「人にやさしく」が好きという情報しか分からなかったが、それはそれでよし。ブルーハーツが好きな人に、自信満々な人は少ない(きっと)

寺嶋君はあえなく三振で、ほどなくして試合は終わった。

アストロプラネッツの面々は、三塁側の観客に向かって礼。しまった、移動しとけば良かった!!

僕は一塁側で整列して挨拶する巨人三軍選手に拍手を送った。いや君らも頑張ったよ。ていうか、これからも頑張れよ。

と、三塁側でミーティングが始まった。僕は今度こそ、そっち側にダッシュ!ようやく伊藤監督を撮影できるぞ。

左が伊藤悠一監督

でも、そのミーティングはかなりシリアスだった。

最初に話し出した伊藤監督は、時間をかけて、選手の姿勢を問い質していた。テーマは主に試合中のサインミスについて。

僕が不思議に思った相次ぐ盗塁失敗。それはヒットエンドランのサインのミスだったようで「打者はランナーの命を預かってるくらいの意識で、やってほしい」と伊藤監督は語った。

その口調は、僕が知っている伊藤君と同じ平熱の口調。でも、それを「どうでもいいもの」としては語っていない。例え話を交えながら、感情は高ぶらせないけれど、強く伝えていた。

君らは、巨人の三軍の選手を越えなければいけないのに、それでいいのか。

そんな感じのことも伝えていた。

僕は取材のような、野次馬根性のような、微妙な立ち位置で一応iphoneで撮影する。ベンチの選手に向かって話す伊藤監督の姿は正面に見えるけど、選手の姿は見えない。選手と監督の切実な場に、中途半端な気持ちでいる自分が、かなり恥ずかしくなる。

伊藤監督が話し終えると、コーチが順番に話していく。

個人のアピールと、チームとしての勝利への意識。どちらに偏ってもうまくいかない。
でも、まずチームがチームとして存在しなかったら、評価の舞台にも上がれない。

そんなことを、コーチたちは色々な言い方で伝えていた。

組織に複数の価値観が存在する時、その組織がひとつになることは簡単ではない。
それは、僕らもいつも感じている難しさで、僕は何人目かのコーチの話の途中で席をたった。

開幕戦は4月8日。また、試合を見に行こうと思う。

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