【映画】すばらしき世界
役所広司さん主演、西川美和監督作品『すばらしき世界』を渋谷で観てきました。
公開時からかなり気になっていて、見なきゃ見なきゃと思っていたら、公開されてから結構日が経ってしまいました。
※以降、ネタバレも含みます。
まず、エンドロールが流れ終わって、映画館に明かりが戻った瞬間、僕は考えてしまいました。
何を考えたのか。それすらもよく覚えていません。とにかく色々考えてました。
殺人犯が更生するのはこんなにも難しいのか、生きていくとはどういうことか、すばらしき世界とはなんだろう、逃げることを選択肢にすることは大切なことだな、役所広司さんの演技すげぇなぁ、仲野太賀さんの演技とんでもないなぁ、、、等々。
そして、観終わって3日が経った今も疑問形で考えた内容については明確な答えは出ておらず。。。というか、答えがあるのかも疑わしいです。
映画『すばらしき世界』は、タイトルそのまま本当に「すばらしい」作品でした。
役所広司さん演じる主人公の三上。彼は真面目というか、仁義を通すというか。通しすぎるというか。。。。
ヤクザや半ぐれの方たちは仲間を家族以上に大切にする印象を勝手に持っているのですが、三上はヤクザでも一匹狼。
その一匹狼ゆえに、見栄を張って、社会や世間に馴染めないことなんて関係なく力強く生きていたんだと思います。
その主人公の葛藤が何とも胸にズキズキ刺さってきました。
旭川刑務所から出所した三上がすぐに普通の生活が出来るわけがありません。
やっぱり日本には「世間」という雰囲気があるし、町に元犯罪者がいるとすれば、変な噂も広がります。
三上が世の中はこんなにも生き辛いのかとイライラと絶望を繰り返します。しかし、世の中は三上だけに厳しいというわけでもなく、実はその中にある「差し伸べれている手」に気がつけるかどうかが大切なんだよというメッセージを、三上が少しずつ世の中に馴染んでいてく姿を見て感じました。
そんな中でも、特に僕の胸を掴んで離さなかった場面は、逃げない三上と逃げる津乃田(仲野太賀さん)の対比です。
町でチンピラに絡まれているおじさんを見て、三上が見て見ぬふりをできるわけがなく、おじさんを助けてチンピラをボコボコにします。
津乃田は三上の母親探しの様子を映像にするためにカメラを回しているディレクターですが、ひん死寸前までチンピラを殴る三上を見て恐怖のあまり逃げ出します。
その後、逃げた津乃田は長澤まさみさんが演じるテレビ局員に言葉でフルボッコにされます。「ディレクターだったらカメラで映像に残すか、カメラを置いて暴力を止めるかはっきりしなさい」と。
すぐに暴力をしてしまう三上は危険人物ということになり、母親探しの企画も頓挫してしまいます。
それでも、津乃田は三上のことが気になっています。身分帳を隅から隅まで読んだからこそ、無かったことにできません。
何度も三上に電話をして、やっと通じた時「なぜあの時に逃げなかったのか」、逃げることだって選択肢の一つだと説きます。その時に三上は全く聞く耳を持ちませんでしたが、「逃げることも選択肢」という言葉がうっすらと刻まれたことは確かです。
その後、昔お世話になっていた仲間(白竜さん)の元で過ごすわけですが、昔ほどヤクザが成り立ちやすい世の中ではない現代です。三上が出かけていたタイミングで事務所にがさ入れが入ります。
三上は全力疾走で事務所に戻ろうとしますが、お世話になっている仲間の奥さん(キムラ緑子さん)に止められます。「(三上が)いま捕まったら本当に終わりだよ」と諭し、さらに「生き辛いことも多いだろうけど外は空が広いらしいよ」と言い逃げることを後押しします。そして、三上は葛藤の末に「逃げる」ことを選択します。
その後、三上は生き辛い世間で少しずつでも着実に生きていけました。しがらみや厳しさの中にある優しさや温かさに気づきました。そして、見て見ぬふりや、逃げることも選択肢の一つということを忘れることもなく生きていきました。活き活きとしている三上を見て、強く胸を打たれました。
私も生活していると理不尽なことや生き辛いなぁと感じる出来事もあります。きっとだれにだってあるんだと思います。
そんな中でも、普通に生きていけるすばらしさ。少しの優しさもしっかりと気がつけるすばらしさ。すばらしさに気が付くのに遅いことなんてないなと、後半の20分くらいは涙が止まらずマスクがびちゃびちゃになっていました。笑
それも「すばらしき世界」ということで。
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