「アオハルかよ。」のCMを考察してみた
私はCMが好きだ。CMは言葉だけでなく、映像と音楽で構成され、30秒しかない。人間の感性がこの30秒に濃縮されているからだ。
AIや人工知能が注目される中、どうやら人間にしか出来ない事の一つは感性の表現を生み出す事の様であるように感じます。
という事で、私は心動かされるCMを考察する事で、何かそのヒントを見つけられるのではないかと思い、noteに綴るまでに至りました。
0.はじめに
記念すべきCM第一弾は、「日清食品グループ」のHUNGRY DAYSです。拙い文章ですが、是非ご覧ください。
カップヌードルCM「HUNGRY DAYS ワンピース ゾロ 篇」30秒
https://m.youtube.com/watch?time_continue=30&v=QZFvnrrgeHc
1.圧倒的な敗北
“ 強くなれ、ゾロ。”
CMの冒頭に、剣豪ミホークと若きゾロは戦うが、圧倒的な力の差を見せつけられ、大敗する。
その後、大敗したゾロの悔しそうな表情から、遥か上空へ視点は移り、新しい旅路の予感を告げる様なカモメの鳴き声が響き渡り、タイトルが映し出される。
2.譲れない想いと決意
BUMP OF CHICKEN の「記念撮影」のサビと共に、2度と戻らない青春時代の懐かしい匂いが漂う名シーンが始まる。
“ ゾロ、17歳。俺は世界一の剣豪になる。青春なんていらない。約束したんだ。”
こんなにわかりやすく、美しい自己紹介を皆さんは見たことがありますか?笑
たった36文字で、ゾロの夢、価値観、人柄が全て凝縮されている。もう少し解説させて下さい。
“「ゾロ、17歳。」”
全てを削ぎ落とした簡潔で直球のこの表現が、潔ぎよさが滲み出て気持ちがいい。年齢は青春ど真ん中。人目も気にせず、夢に向かって鍛錬している姿が映し出され、不器用で一途なゾロの性格が描写されている。
“「俺は世界一の剣豪になる。」”
ひたむきに、剣術の練習に打ち込んでいるシーンと共に、ゾロが一生を賭けて達成させたい大きな夢が語られる。
“「青春なんていらない。約束したんだ。」”
その夢を叶える為なら、青春に対して無関心に思える程、夢に向かって突き進むゾロの意志の強さ。
そして、「世界一の剣豪になる。」という、ゾロが夢を持ち始めるきっかけを与えた、幼馴染のライバル「くいな」(※)と戦う回想シーンが一瞬、映し出さられる。
3.幼馴染「くいな」との約束
このnoteの表紙にも引用しているが、ゾロの幼馴染のライバル「くいな」との2ショットの写真は、たった1秒しか登場しないが、これがゾロを突き動かす原体験なのだ。
くいなは、ゾロが幼少期に一度も勝てなかった相手だった。しかし、父親から「女の子は世界一強くはなれないんだ」と聞き、「いいね、ゾロは男の子だから...私だって世界一強くなりたいよ!!」と涙を流す。
そして、ゾロは約束する。
“「いつか必ず俺かお前が世界一の剣豪になる!どっちが早くなれるか競争だ!」”
しかし、約束を交わした翌日、くいなは些細な出来事がきっかけで死亡する。
だから、今は亡き、くいなの遺志を背負って、ゾロ自身が世界一の剣豪にならなくてはいけないのだ。
4.再び、誓った決意
幼少期に、くいなと二人で交わした約束、今は亡き、くいなの遺志を背負っているのにも関わらず、冒頭で登場した剣豪ミホークに大敗し、示しがつかない自分が情けないのだろうか。
そんな想いを抱きつつ、一途に刀を振り下ろし、春夏秋冬、鍛錬しているゾロの姿が映し出される。
さらに、ここでBUMP OF CHICKEN の「記念撮影」という、わかりみが深い歌詞が畳み掛ける。
“ 想像じゃない未来に立って 僕だけの昨日が積み重なっても
その昨日の下の 変わらない景色の中からここまで繋がってる”
この歌詞だけでも、ジーンと心を打たれる。
ちなみに、そのリリックビデオはこちら。
BUMP OF CHICKEN「記念撮影」リリックビデオhttps://www.youtube.com/watch?v=FPLxRe4ho_A
「想像じゃない未来に立って」、こんな美しい言葉は、もはや日本語表現の発明に匹敵するでしょう。笑
そんな事はさて置き、「ゾロの鍛錬した日々=想像じゃない未来」の中で、再び、ゾロは誓った。
“ もう二度と負けねぇから。”
5.努力は誰かが見ている
そして、CMも終盤。ここでルフィが登場し、たわいもない短いやりとりをして終わる。きっと、ゾロはゾロ自身の為に、一途に、ひたむきに、努力をし続けているように見える。しかし、その”一途さ”や、”ひたむきさ”は、どこかで誰かが見ているものだ。皆さんも、学校や職場、研究所、近所などで、そのような経験を一度は体感をした事があるのではないだろうか。
6.終わりに
率直に、このCMを見たあと、「また、がんばろう!」と勇気付けられた。
誰もが一度は体験した事があるような、”人生の挫折に直面して、自分自身を超える為に、あなたを突き動かすどうしようもなく胸が熱くなる、あの感覚”、あの熱い感覚を鮮明に蘇らせるような体験を、再現したCMだったから私はグッと心を揺さ振られたのだと感じた。
夢を叶える為の一途な努力、夢を持つきっかけ、人生の挫折、自分に対する情けなさ、手を差し伸べてくれる人の存在。これらをたった30秒で描写する作品はもはや芸術の域。しかも、たった、30秒で架空の人物と物語を用いて、この情報量を伝達できる技術は、洗練の極み。
皆さんはどう感じたでしょうか?
こんな所で、初回は終わらせたいと思います。
週1回ペースで配信していくので、引き続きよろしくお願いします。
あっ、中学の国語の授業で、「ゾロ、17歳。...」の部分の表現方法は教えて欲しかったな。
”To be continued...”
#ONEPIECE #窪之内英策 #BUMPOFCHICKEN #初投稿
※ 本文では、今は亡き幼馴染のライバル「くいな」と表現したが、「くいな」がまだ生存しているか否かの議論があるようですが、ここではしません。
※お気軽にコメント、ご指摘いただけば幸いです。
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