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「惨事ストレス」は日常生活にもある

数年前、ある協会の衛生安全大会の講師を務めたとき、「惨事ストレス対策」について話したことがあります。

開催地が大きな災害のあった土地で、近年大災害は毎年のようにどこかで起こっているということもありましたが、そもそも日常生活の中にだって「惨事」は存在すると考えているので、あえてメンタルヘルス対策についてもお話しました。

その日は、講師3人がそれぞれ別のテーマで話す構成で、私は2人目に登壇しました。
予想以上に大きな笑いも起こり、しんみりもして聞いていただけました。
実例をあげて話すので、多くの方が真剣にメモをとっていました。

惨事ストレス対策の多くは、特別なものではなく、私たちの日常生活でも有用なストレス解消法なんです。


私を揶揄した次の講師

3人目の講師は、行政のかなり偉い部署の方でしたが、冒頭で、
「惨事ストレスの話も出てきましたが、大災害などはそうそうあるものではなく」
と、明らかに私が扱ったテーマを揶揄する感じの話しぶりでスタートしました。

(あー、ちゃんと人の話を聞かないでこんなことを言っちゃうんだなぁ)
と、呆れてしまいました。

一般の人は「惨事ストレス」と聞けば、
「あー、大災害でショックを受けた人なんかが、あとでメンタルを壊すというあれだな」
という感じの認識が主だと思います。

なので、あえて詳しい説明を加えたつもりでしたが、聞いてなければ伝わりませんよね。
「居眠りする人がいない講演」が売りの私ですが、聞くつもりがない人にまでは真意は伝わらないようです。


幅広くなった惨事ストレスの被害者

私が消防士時代の記憶では、「惨事ストレス」という言葉をよく耳にするようになったのは、阪神淡路大震災後のことでした。

実際に、メンタルを壊して、心の病気になったり、離職したりする消防職員が多かったので、消防庁は専門家チームで対策についての研究が進められました。
警察、自衛隊も同様だったと思います。

「惨事」の定義も広くなり、自然災害だけではなく、事件や事故に関わる場合も含まれているようです。

その後も災害は多発し、現場で直に災害対応する人だけではなく、医師や看護師など救護にあたる人や、カウンセラー、教師、現地を取材する報道関係者も惨事ストレスの被害者に含まれるようになりました。

今はさらに、災害のニュースをテレビで見てストレス反応がある場合や、交通事故の負傷者に対応した一般市民も含まれるそうです。


内容もさまざまで、対象が損傷のひどい死体や幼い子どもの死体を扱ったときだけではなく、救助できなかったことへの自責の念などが、ストレス反応やストレス障害となってあらわれることもあるそうです。

披露困憊しながらも救助作業をしているときに、市民から非難されたり、暴言を吐かれたりなどして、心に大きなキズを負う場合もあったそうです。

どれも、規模の大小はあっても、消防職員としては日常的に直面することでもあります。


日常生活のストレス解消法と同じ

やはり「心」に関することなので、パターンはあっても、個々がすべて違うのは当然だといえますね。

日常生活でも、大切な人と死別することもあれば、ショックを受けるような体験をすることもあり、それらが重なったり続いたりすれば、「惨事」と同様にストレス障害になる可能性もあります。


状況が特殊であったりするので、なかなか思いを共有することが難しい場合もあるかと思います。

それでも、惨事ストレス対策だからといって特別なことをやるわけではなく、日々のストレス解消や悩んだり不安になったりしたときのストレス解消と別物ではありません。

悩み事を相談する
心の中を話す
同じ体験を持つ人と会話する
呼吸法をする
ことなどです。

その日の講演の話に戻りますが、
そもそも一般的に有効なストレス解消法もご存知ない方が多いので、その日もマメにメモを取る方が多かったようでした。

3人目の講師の講演中、労働災害の発生原因の数字を羅列しておられたので、予想通り居眠りする人続出でした。

後日いただいたアンケート結果は、その講師さんとは如実に反応が分かれていたことを、蛇足ながら追記して、この回を終えたいと思います😅

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