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第3話:最初の印象に縛られる - 係留と調整ヒューリスティック



ストーリー
週末にフリーマーケットへ出かけるのが趣味の佐藤美咲さん。掘り出し物を見つけるのも楽しみですが、店主との値段交渉もまた、フリーマーケットの醍醐味の一つだと感じています。
ある日、美咲さんは、アンティークのブローチが並ぶ露店に立ち寄りました。その中で、ひときわ目を引く美しいブローチを見つけました。
「すみません、このブローチはおいくらですか?」
「これはですね、とても希少なもので… 5,000円になります。」
店主の言葉に、美咲さんは少し驚きました。予算よりも少し高かったからです。しかし、どうしてもそのブローチが欲しかった美咲さんは、値段交渉を試みることにしました。
「少しお安くしていただけませんか?」
「う〜ん… そうですねぇ… では、4,500円ではいかがでしょうか?」
500円の値引きに、美咲さんは少し迷いました。それでも、最初の値段から考えると、かなりお得な気がしました。
「じゃあ、それでお願いします。」
美咲さんは、満足げにブローチを購入しました。しかし、後で冷静に考えてみると、本当に妥当な値段だったのか、少し疑問に思いました。もしかしたら、最初の値段が高すぎたのではないか…?
そんな美咲さんに、田中雄太さんが「係留と調整ヒューリスティック」について教えてくれました。

解説
係留と調整ヒューリスティックとは、最初に提示された情報(アンカー)に引っ張られて、その後の判断が影響を受けてしまう心理的な傾向のことです。
美咲さんの場合は、最初に提示された「5,000円」という値段がアンカーとなり、その後の値引き交渉に影響を与えてしまいました。
実際には、そのブローチの適正価格は 3,000円程度だったかもしれません。しかし、最初に高い値段を提示されたことで、美咲さんは「4,500円」という値段を、実際よりも安く感じてしまったのです。
このように、係留と調整ヒューリスティックは、私たちが不当な取引に応じてしまう原因となることがあります。

日常生活における例
* セールで「元の値段」が表示されていると、値引きされた価格をお得に感じてしまう。
* 不動産屋に最初に高額な物件を紹介されると、その後の物件を相対的に安く感じてしまう。
* 交渉の際に、最初に相手に有利な条件を提示されると、不利な条件で妥協してしまう。

対策
係留と調整ヒューリスティックに陥らないためには、以下の点に注意することが重要です。
* 最初の情報に惑わされない:最初に提示された情報にとらわれず、客観的な視点で判断しましょう。
* 相場を調べる:事前に商品の相場や適正価格を調べておきましょう。
* 交渉術を身につける:相手に有利な条件を提示された場合でも、冷静に交渉を進めましょう。
美咲さんは、雄太さんの説明を聞いて、フリーマーケットでの値段交渉に「係留と調整ヒューリスティック」が働いていたことに気づきました。そして、次回からは、事前に商品の相場を調べてから交渉に臨むことにしました。

次回予告
第4話では、「感情ヒューリスティック」について解説します。お楽しみに!

補足
係留と調整ヒューリスティックは、マーケティング戦略にも利用されています。例えば、最初に高額な商品を見せてから、低価格な商品を勧めることで、顧客に「お買い得感」を感じさせる手法などが挙げられます。

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