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【与太話②】魚になった男!鯖編
「また魚になった…だと…?」
目が覚めると、そこはいつもの寝室ではなく、見慣れない青い世界だった。口からは泡が漏れ、エラがヒクヒクと動いている。
「またかよ…今度は何の魚だ?」
そう、私は以前にも魚になったことがあった。あの時は鮭を食べたのが原因で、銀色に輝く魚の姿に変貌を遂げたのだ。あの奇妙な体験から数年、まさか再び魚になるとは…。
「今回は…なんだ?この細長い体…青い背中…銀色の腹…」
鏡もないので自分の姿を確認できないが、体の特徴から察するに、どうやら私は鯖になったらしい。
「よりによって鯖かよ…」
私は鯖が苦手だ。あの独特の生臭さと、小骨の多さがどうしても好きになれない。なのに、よりによって自分が鯖になってしまうとは…。
「まあ、仕方ない。前回よりは落ち着いて対処できるはずだ。」
鮭になった時とは違い、今回はパニックに陥ることはなかった。あの時は呼吸ができずに苦しんだが、今回は落ち着いてエラ呼吸ができている。
「とりあえず、ここから脱出しないと…」
私は海中を泳ぎ始めた。目指すは、人間の住む世界だ。
しかし、海の中は危険がいっぱいだった。巨大なサメが鋭い歯をむき出しにして襲いかかってきたり、網を持った漁師に追いかけられたり…。
「うわああああ!怖い怖い怖い!」
私は必死にヒレをバタつかせ、逃げ惑った。
そんな中、一匹の優しいイルカに出会った。彼は私を助けてくれ、人間の住む場所まで案内してくれたのだ。
「ありがとう、イルカさん!」
私はイルカに感謝し、陸を目指して泳ぎ続けた。
そして、ついに海岸にたどり着いた。
「やったー!陸だ!」
しかし、喜びも束の間、私は新たな問題に直面した。
「あれ?動けない…」
陸に上がった私は、体が重くて動かせなかったのだ。エラ呼吸しかできない私は、空気中では呼吸が苦しくて、意識が朦朧としてきた。
「まずい…このままでは…」
その時、一人の少女が私を見つけた。
「まあ!鯖が打ち上げられてる!」
少女は私を拾い上げ、バケツに入れてくれた。そして、新鮮な海水を入れてくれたのだ。
「ぷはー!生き返った…」
私は少女に感謝し、事情を説明した。
「えーっ!?あなた、人間だったの?!」
少女は驚きながらも、私の話を信じてくれた。そして、私を海に帰してくれることになった。
「ありがとう、お嬢ちゃん。君のおかげで助かったよ。」
私は少女に別れを告げ、再び海中へと戻っていった。
そして、海の中で目を覚ました。
「あれ?夢だったのか…?」
私はいつもの寝室で、いつものように目覚めた。
「でも…あの時の感覚は…確かに…」
私は自分の体に触れてみた。すると、そこにはうっすらと鱗が残っていた。
「やっぱり…夢じゃなかったんだ…」
私はあの不思議な体験を、一生忘れることはないだろう。
そして、鯖を見るたびに、あの時の恐怖と、少女の優しさを思い出すのだ。
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