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【与太話⑨】魚になった男!シャチ編


「…!? なんだこれは、広い…!? 」
目覚めると、私は見渡す限りの青い世界にいた。深く、冷たく、そしてとてつもなく広大な海。自分の体もまた、巨大で、力強く、そして黒と白のコントラストが美しい。

「まさか…シャチ…?」
そう、私は過去に幾度となく魚に変身してきた男。鮭、鯖、鯵、カレイ、マグロ、タイ、フグ、鮎…そして今回は、海の王者の中でも最も知的な存在、シャチになってしまったのだ。

「シャチか…」
もはや驚きよりも、畏敬の念に近い感情が湧き上がった。あの知性、あの社会性、そしてあの力強さ…。

「こんな体に…なれるなんて…」
私は、畏怖と興奮が入り混じった気持ちで、海中を泳ぎ始めた。すると、巨大な体にもかかわらず、驚くほどしなやかに、そして速く泳ぐことができた。

「おお…!」
他のシャチたちと共に、私は海を駆け巡った。彼らは、複雑なコミュニケーションを取りながら、協力して狩りを行い、家族の絆を深めていた。

「これが…シャチの世界…」
私は、シャチの社会、彼らの知性、そして彼らの生き様に感銘を受けた。彼らは、ただ力強いだけでなく、互いに協力し、助け合い、そして未来へと命を繋いでいく、素晴らしい生き物だった。
ある日、私たちは、一頭のクジラに遭遇した。巨大なクジラは、私たちシャチの群れを恐れ、逃げ惑っていた。

「狩りだ…!」
私は、他のシャチたちと共に、クジラを追いかけた。クジラは必死に逃げようとするが、私たちのスピードとチームワークにはかなわない。

「…!」
私は、クジラに襲いかかる瞬間、ためらいを感じた。クジラもまた、私たちと同じように、命を持った生き物なのだ。

「…!」

私は、攻撃をやめ、他のシャチたちを制止した。彼らは、私の行動に戸惑いながらも、攻撃を止めた。

「…私たちは…生きるために…狩りをしなければならない…」
私は、他のシャチたちに、そう伝えた。彼らは、私の言葉に耳を傾け、そして理解を示してくれた。

「…ありがとう…」
私は、シャチたちとの絆を深め、彼らと共に海を生きていくことを決意した。そして、いつものように自宅の布団の中で目を覚ました。

「…夢だったのか…?」
しかし、私の心には、シャチとして生きた記憶が、深く刻まれていた。

「…いや、夢じゃない…」
私は、シャチになったことで、命の尊さ、そして共存の大切さを学んだのだ。そして、これからも、すべての生き物に敬意を払い、共存の道を模索していくことを誓った。

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