Welcome、オープンイノベーション促進税制!政策形成に携わる方々に起業家の立場から3つのリクエスト
※2020/01/07追記
日経の続報記事を読むと、この税制はマイノリティ出資のみならず、100%買収にも適用される方向で進めてるっぽいですね。めちゃくちゃ筋の良い政策で感動しました...是非とも実現させて欲しいです。
この週末はスタートアップ界隈がこの話題で持ちきりでした。
詳細は続報を待たねばわかりませんが、既出の情報を見るに素晴らしい制度だと思います。
スタートアップ出資、1億円以上で減税:日本経済新聞
推進してくださっている関係者の皆さん、本当にありがとうございます!
そしていちスタートアップ起業家の視点から、今後の詳細な制度設計に向けて気になる点を3つシェアしたいと思います。
①スタートアップ側の事務負担の極小化を
スタートアップは本当にリソースが逼迫しています。
今回の政策は事業会社からの1億円以上の資金調達が対象となりますが、それを交渉してまとめるフェーズでは、フルタイムのメンバーがわずか数名ということも珍しくありません。
例えば僕が昔やっていたマナボという教育系スタートアップでは、通信教育のベネッセと2社のVCから合計3.3億円の資金調達を実施した時、フルタイムのメンバーはわずか5人でした。
この5人と業務委託のパートタイムメンバーとで、プロダクトの設計、デザイン、開発、営業、マーケティング、カスタマーサポート、事業提携、採用、広報、法務、経理、総務、そして資金調達などなど大量のタスクをこなしていくわけです。常にリソースはパンパン。
その5人で撮った写真。友人たちから(ネタ的なものも含めて)オフィス移転祝いを頂いた時のもの。
ですので事務手続きの設計にあたっては、スタートアップ側の事務負担を少しでも減らした制度にして頂けるとありがたいです。
ちなみにエンジェル税制は、スタートアップ側の手続きコストの大きさもありほぼ使われていません。同じようになってしまうと非常にもったいないですよね...
②2年間の時限措置の終了後に市場のリセッションを招かぬように
スタートアップへの投資額はここ5-6年で大きく伸び、以前よりも大胆なチャレンジができる環境になってきています。その中で事業会社の投資は大きな役割を果たしましたし、この制度はそれを後押しするでしょう。
一方で2年後、この制度が終わるタイミングで一斉に大手企業が投資を控えるようになり、ベンチャーファイナンス市場が冷えこむ、ということにならないかが心配です。
2015年、あるスタートアップ企業が上場直後に業績を下方修正した影響で、未上場のスタートアップの資金調達環境も一時的に厳しくなる時期がありました。
当時マナボ社でもこの影響を受け、次のラウンドの資金調達が厳しくなりました(これは同社の当時の事業進捗が悪かった事や他の外部要因もありますが)。
そこで月500万円の広告費を使って展開していたtoC事業への投資を取りやめ、20人いたメンバーを6人に減らし、toBの営業で無理やりキャッシュフローを健全化させました。そこから次の資金調達までの2年ほどはとてもしんどかったです。
このように市場の投資熱が急激に引いてしまうと、同じような苦境に陥る会社が続出することが予想されます。時限措置の切れるタイミングできちんとソフトランディングさせて頂きたいです。
③政策形成の過程で当事者との対話を
政策形成とスタートアップ双方の現場に足を突っ込んでいて、両者の距離感を感じることが多いです。
結果として、政官が良かれと思って実施した政策が、スタートアップ産業に思いもよらぬ悪影響を及ぼしてしまうことがあります。
先日の外為法改正にあたってのゴタゴタはその一例です。
外為法改正の時にこのブログをシェアしたら、自民党のある国会議員の秘書をされている方が素早く動いて下さいました。その節は本当にありがとうございました。
こういったことを防ぐには、政策形成の過程で当事者となる人たちと対話するのが1番だと思います。
今回の政策であれば、大手企業の投資担当者やVCの方々はもちろん、スタートアップ経営者とのコミュニケーションもとっていただけると良いなと思います(必要があればセッティングしますので言ってください)。
また逆に、我々スタートアップ経営者の側も積極的に政官とのコミュニケーションをとっていくべきです(と思ってこのnoteを書きました)。
最後に
改めて、大枠として素晴らしい政策だと思います。
スタートアップが大胆なチャレンジを出来る環境を整えることは、課題山積の日本社会をアップデートするため、また再び経済のパイを大きくしていくためにとても重要です。
ですので、是非とも細部まで良い形に仕上げた上で世に送り出して頂けると嬉しいです。
関係者の皆さん、頑張ってください!応援しています。