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町工場しくじり先生、失敗から学んだブランディングの大切さ(和装バッグ作成キット編)

こんにちは、和装バッグ製造工房アトツギの高栁 実です。先日『町工場しくじり先生、失敗から学んだブランディングの大切さ(カタログ制作編)』 を執筆したのですが、ありがたいことに続編希望を頂き、第二弾を出すに至りました。今回の記事から見られた方は良かったら第一話からご覧頂ければ幸いです。

さて、前回『やってみたい』という動機と勢いだけで自社のカタログを製作した私ですが、『どこで差別化し、どのように販路を作って行くか』と言う視点を欠いたカタログ・セミオーダー事業は、カタログの在庫だけを残し頓挫しました。

『やっぱり自社商品の方が良いのではないか?』

何となくそう感じた私は、その後自社商品づくりに着手したのでした。


自社のリソースそのままで何が出来るか?

『新商品は作りたい、しかしお金は掛けたくない』斜陽産業にある自社が厳しい経営環境下にあることを薄々感じていた私は、如何にお金を掛けずに自社商品を作るかばかり当時考えていました。

【今やっている事業のリソースをそのまま使うことが最もお金の掛からない方法だ】その結論に至った私は、とあるアイデアに行き着きます。

和装バッグを作っていて感じていた感覚

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口金をバッグにはめる様子

当時私は現場で日々和装バッグを製造していました。家業はそれまで流れ作業方式だった生産方式でしたが、生産効率が上がる反面、品質に対する意識が低くなりがちでした。

『このままでは選ばれる工場として残っていけない』危機感を感じた私は『1人が責任を持って最後まで作り上げるセル生産方式』を導入し、自らも先頭を切って製造現場に入っていました。

そんな和装バッグ作りをしている時、ふと私は感じました。『この光景は何かに似ているぞ・・・』と。

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これ以外に帯地がパーツとして加わります

このバラバラのパーツを組み立てて行く感覚...。 昔作った『プラモデル作りに似ている』と私は感じました。

『和装バッグ作りはプラモデル作りと感覚がそっくり。いや寧ろ説明書はなく、やり直しが効かない分、難易度はこっちの方が高い』

これは素人さんには無理かな?とも思ったのですが、『いや寧ろ逆転の発想で難しいことをセールスポイントにしてしまえ!』ということで、ノリと勢いで私は和装バッグ作成キットを商品化することに決めました。

デザインはやっぱり産学共同

商品化することを決めた私は以下の準備を進めることにしました

  1. 説明書

  2. 説明動画

  3. パッケージ

1.の説明書を作るためには、バッグ作りの全工程を洗い出し、数えなくてはいけなく、私はこれまで何となく作っていたバック作りの工程を数えてみました。実際に数えてみると、全79工程。何とも中途半端だったのですが、『中途半端のほうが印象に残るか』といったノリで、79工程を全面に打ち出すことにしました(ほんと適当な決め方です。笑)

説明写真前半
説明写真後半

この説明写真に対応する文字の解説書も作り、和装バッグ作成の説明書としました。

文字ビッシリ説明書

そして『説明書だけじゃ初めての方には工程が理解できないだろう』ということで2.の解説動画を作りました。2011年当時、Youtubeは今程メジャーではなく、この商品にはDVD-Rを付けました。

30分くらいの解説映像をDVD化しました

映像は、大阪芸術大学放送学科の学生に手伝ってもらい、撮影&編集しました。今思えばこの時点でめちゃくちゃ工数かけてますね(苦笑)

そして3.のパッケージ作りは今回も大阪市立デザイン研究所の学生さんに依頼しました。【なんちゃって産学共同】のオンパレードです。

何だかんだで頑張りました

キット内容
表紙デザイン

相変わらず『誰がこの商品を使うのか?』『どの商流に乗せるか?』『デザインのコンセプトは何か?』といった視点は全くなく、行き当たりばったりの自社商品作りでした。とは言え、何だかんだで結構頑張ったと思います(苦笑)

抜け落ちていた『パッケージデザイン』という概念

というわけで、結構な労力を掛けながら完成した和装バッグ作成キットですが、当時の私には『パッケージデザイン』という概念は有りませんでした。『いつも使っているOPPの袋(パリパリ言う透明の袋)に入れときゃいいか』といったノリで商品は簡易包装されました。この時点で安っぽくて残念ですね(苦笑)

ビニール袋に入れてセロテープで止めただけ

『せめて紙の貼り箱に入れようよ』と当時の私に突っ込みたくなる仕上がりですが。この時はパッケージデザインという概念がありませんでした(苦笑)

ヤフオクで販売すると意外と好評

そんな和装バッグ作成キットですが、ヤフオクに出品すると、この手の商品がよほど珍しかったのか、4,500円で売れました(笑) 

赤字ではないものの、裁断・梱包する労力とDVDまで付けることを考えると大喜びもできない売値。当時の私からすると『だめだこりゃ(いかりや長介風)』といった感じでした。

然しながら、今思うと、外注してキットを量産し、手芸屋さんとかに卸すのであれば、充分有りな売価だったのかも知れません。

ユーザーが送ってくれた完成バッグ

パイソン(蛇革)で作ったというバッグ

ヤフオクで売れた試作商品ですが、ユーザーさんの『この箇所に作り方が分からない』という質問に答えていくと『バッグが完成しました』ということで写真が送られて来ました。

『思ったよりちゃんと完成している!!』私は驚きました。そして同時に、

『この商品は意外とありなのかも知れない。・・・この先どうしよう?』と迷いが生じました。このへんの先の展望がない所が、当時の私のイケてないところだと我ながら感じます。

大量生産?? 誰が梱包して誰が発送するの?

パーツは自ら全て個包装

商品が完成し、テスト販売を行い。そしてその段階に来て私は考えます。
『これほんまにしたかったのかな?』
少なくとも、このキットを作るために一人で延々とパーツを用意し、個包装し、売れたら都度発送し、顧客対応する自分姿を想像すると、あまり楽しそうなものではありませんでした。

そして前回と同じパターン。キットが出来上がって満足してしまい。積極的な攻勢に出ることなく、事業は一旦終了となりました。これ書いてて感じまが、我ながらアホやったなと思います(苦笑)

今回の結論(自分への戒め)

・自社商品作る前に、商品が完成した後の展望を考えるべし
・外注して商品を量産することも視野に入れるべし
・失敗したかどうかの判断はもっと慎重にせよ

PCから写真データを引っ張り出して11年ぶりに見てみましたが、我ながら『無駄に頑張ってたな』と感じました。ここまで出来たのであれば、ブランディングを取り入れ、パッケージを整えた上で手芸向きの展示会でローンチすると、或いは上手く行ったのかも知れません。

然しながら、この『ブランディングを意識してパッケージを整え、量産を外注する前提で原価計算し、展示会に持ち込む』というある意味当たり前のことも想像付かないのが、下請けでものづくりをし続けている製造業のリアルな感覚だと私は思います。

この恥ずかしい失敗談を晒すことで、これから自社商品作りに挑戦される下請け工場さん(特に小さな事業所さん)の参考となればと思います。

そして今後も懲りずに新規事業への挑戦を続けます、それはそれでまた別に機会にお話したいと思います。

『和装バッグ製作キット編』最後まで読んで頂きありがとうございました!!


第三話、バツグ製造体験編



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