本の紹介:経営、ことば、こころ
本との出会いは、なんだか不思議だ。
たまたま本屋の棚で目に留まった本、
ずっと前に買ったけど読まないまま置いておいた本、
誰かからふと渡された本。
そんな本が、
まるで自分から引き寄せたかのように、
まるであちらから寄ってきたかのように、
自分のためだけに書いてあるんじゃないかと錯覚するほどに、
すぅっと頭と心に入ってくる言葉や、
いつまでも離れない小骨のような言葉を、
届けてくれる。
本のなかにある世界が不思議であるのとおなじくらい、
本というモノそれ自体も不思議だ。
誰かの、ふしぎな出会いのきっかけになれば。
臨床の奥にある真理 『臨床とことば』
臨床心理学者・河合隼雄先生と、臨床哲学者・鷲田清一先生の対談。
1つ1つ個別のことに誠実に向き合うには、法則や理論からこぼれ落ちるものを丁寧に拾いあげることが大切。一方で、個別を掘り下げ続けていけば、そこで普遍的な真理に触れる。
僕は「臨床」の現場で「考えつづける」人のことが好きだし、憧れているのだと思う。
社会と経済の関係を問う 『経済の文明史』
個人的に、経済(あるいは、ビジネス)というモノに対して、なんともいえない「よそよそしさ」というか「100%の信頼をおけない気持ち」を抱えてしまう。「経済」の方が「社会」よりも「エラい」ような空気が流れている気がして、しっくりこない。
経済人類学者 K.ポランニーは、未開社会の経済の観察から議論を組み立てることで、市場経済社会は近代の独特なものであると論じた。「経済が社会の中に埋め込まれている」構造から「社会が経済に埋め込まれている」構造に変わってしまったと、言う。
「社会」と「経済」の関係は、これからの世の中を考えるにあたって、とても大きなテーマだと思っている。
組織が直観の雷に打たれるために 『直観の経営』
『知識創造経営』で、暗黙知⇔形式知などの企業の知識創造プロセスを明らかにした野中郁次郎先生。
野中先生は知識創造経営を追究するなかで、「(組織として)直観する」ことを論じるべく、哲学者の山口一郎先生を迎えて現象学を切り口にした議論を展開する。
主観と客観を分けることを越え「いま・ここ」に集中することで、「共有された直観」を組織として獲得することが大切だと主張している(と、僕は理解した)。
経営とは動的なプロセスであり、そこに携わるのは生身の人間である、ということは、経営について考えるうえでの重要な出発点だと思う。
川の濁りに落ちる灯光 『道頓堀川』
両親を亡くし喫茶店で住み込みを始める青年。かつてビリヤードに命をかけた喫茶店の店主と、賭けビリヤードで生きる息子。道頓堀の歓楽街に生きる人々。
道頓堀の川のように、静かに流れ、揺らぎ、汚濁やネオン、いろんな色を抱えた物語。
美しいラストシーンです。
若者のノートから滑り落ちる星 『二十億光年の孤独』
谷川俊太郎さんのデビュー作。
こういうものを"みずみずしい"と言うのだと思う。
ときどき手に取って、眺めたり、声に出したりしている。
三好達治さんの序もまた、すばらしい。
谷川さん18歳当時の自筆ノートも収録されていて、あたたかい。
クロとシロの世界 『鉄コン筋クリート』
松本大洋の世界は、優しくて、残酷で、そして、うつくしい。
クロとシロ(この物語の主人公たちの名前でもある)は、
表と裏で、2つで1つ。
もちもち、地球星日本国、シロ隊員...... そちらは、どうですか?
番外編)Singin' in the Rain.
I'm singing in the rain
Just singing in the rain
What a glorious feelin'
I'm happy again
I'm laughing at clouds
So dark up above
The sun's in my heart
And I'm ready for love
こんな日々でも(だからこそ)、歌って、笑いましょう。
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