『原理講論』における「新しい真理」とは何か/原理講論研究(2)
『原理講論』では、聖書は真理それ自体ではなく、真理を教示してくれる一つの教科書です。聖書の文字は真理を表現する一つの方法であって、真理それ自体ではありません。今日の知性のある人々に真理を理解させるためには、今から2千年前の教科書をそのまま読んで聞かせるだけでは不十分です。現代人に真理を理解させるためには、より高い次元の内容と、科学的な表現方法によらなければなりません。このような、より高い次元の内容と、科学的な表現方法によって聖書を解明することを、『原理講論』は「新しい真理」と呼んでいます。(p.170)
つまり、『原理講論』における「新しい真理」とは、真理を求める現代人の欲求を満足させることができるような新しい聖書の解釈です。
では、新しい真理、すなわち現代人のための新しい聖書解釈は、いかなる使命を果たさなければならないのでしょうか。『原理講論』の著者は総序で次のように述べています。
「人間が、根本的に、神を離れては生きられないようにつくられているとすれば、神に対する無知は、人生をどれだけ悲惨な道に追いやることになるであろうか。しかし、神の実在性に対しては、聖書をいかに詳しく読んでみても、明確に知る由がない。ましてや神の心情についてはなおさらである。それゆえ、この新しい真理は、神の実在性に関することはいうまでもなく、神の創造の心情をはじめとして、神が御自身に対して反逆する堕落人間を見捨てることができず、悠久なる歴史の期間を通して彼らを救おうとして心を尽くしてこられた悲しい心情をも、我々に教えることのできるものでなければならない。」(p. 31)
ここで、「神の実在性」とは、神が客観的に存在しておられることを意味しています。神が単に私の心の内側に存在するということだけではなく、心の外側にも、現実に存在しておられるということが、明らかにされなければなりません。このように客観的に存在する神は、統一原理においては、悲しんでおられる神です。
半年前に総序を読んだ時は、「神の心情」という表現が何を意味しているのか、さっぱりわかりませんでした。しかし、半年間の家庭連合の方々との交流を通して、少しずつわかり始めてきました。
第一に、新しい真理は、客観的に存在する神の悲しい心情を教えることのできるものでなければなりません。
次に、新しい真理は、全人類を新しい世界に導き得るものでなければなりません。『原理講論』の著者は次のように述べています。
「神の救いの摂理が完全になされるためには、この新しい真理は今まで民主主義世界において主唱されてきた唯心論を新しい次元にまで昇華させ、唯物論を吸収することによって、全人類を新しい世界に導き得るものでなければならない。同時にまた、この真理は、有史以来のすべての主義や思想はもちろんのこと、あらゆる宗教までも、一つの道へと、完全に統一し得る真理でなければならないのである。」(p. 32以下)
ここで、唯心論とは、世界の現象の本質は精神の働きそのものであるとする説です。この哲学的な思想は、特に人間の心の作用を重視する立場を取ります。唯心論と唯物論の対立は、古代ギリシャにまで遡ると言われています。
いずれにしても、統一原理の新しい真理は、唯心論と唯物論の対立を超えて、全人類を新しい世界に導き得るものであることが求められています。
では、新しい真理が建設する新しい世界とは、いったいどのような世界なのでしょうか。それは、「罪を犯そうとしても犯すことのできない世界」(p. 34)です。『原理講論』の著者は、新しい世界について次のように述べています。
「真理の目的は善を成就するところにあり、そしてまた、善の本体はすなわち神であられるがゆえに、この真理によって到達する世界は、あくまでも神を父母として侍り、人々がお互いに兄弟愛に固く結ばれて生きる、そのような世界でなければならないのである。」(p. 33)
このような新しい世界に人類を導くことが、新しい真理の第二の使命です。
さらに、新しい真理は、神の創造の目的を教えると同時に、救済の途上にある罪深い人間の究極の目的が何かを明らかにするものでなければなりません。これが第三の使命です。(p. 35)
以上、現代人に通用する新しい聖書解釈が何を使命とするかを、『原理講論』の総序の記述に沿って見てきました。最後にもう一度、箇条書きにしておきます。
①客観的に存在する神の悲しい心情を明らかにすること。
②全人類を新しい世界に導くこと。
③神の創造の目的と、救済の途上にある罪深い人間の究極の目的を明らかにすること。
果たして、既成教会の誠実なキリスト教徒は、これらの使命を掲げることに同意できるでしょうか。もう少し詳しく見ていかないと、簡単には答えることができないかもしれません。次回以降で、これらの使命について、順を追って詳しく見ていきたいと思います。
🟦世界平和統一家庭連合『原理講論』光言社、1996年。