どうなる?「マスコミ」と「個人放送局」
column vol.219
コロナ感染が広がってから、70代の親世代と私たちの間に少しずつ「過ごしている現実」の乖離が広がっていると感じています。
基本的にはステイホームとは言え、私たちは仕事もあるので外の世界に触れることがありますが、私の親は犬の散歩と買い物以外は家にいるので、テレビの世界しか接していません。
また、親もオンラインで友人たちと接しますが、当然ながら同じ世代。同様の生活スタイルになりますので、テレビの世界の住人たちの情報交換になります。
ということは、テレビで流れていることが全て。よくよく考えると、ちょっぴり怖くなってきました…。
マスコミへの「日本だけ異様に高い信頼度」
プレジデントオンラインの記事【「日本だけ異様に高い信頼度」マスコミを盲信する人ほど幸福度は低い】によると、欧米ではマスコミの信頼度が5割以下であるのに対し、日本だけ7割近くと非常に高いそうです。
〈PRESIDENT Online / 2021年2月13日〉
アメリカでは、マスコミへの信頼度は長年にわたって低下しており、2019年のある推計によると、「大きな信頼を寄せている人」の割合はわずか6%に過ぎないそうです。
しかも、マスコミへの信頼度が高いほど「幸福度が低い」そうです…(汗)。
まず、マスコミの前提として、テレビなら視聴率、新聞なら購買数、ネットならPV数などを求めるので、どうしてもセンセーショナルな報道が求められます。
ということは、いつも「不安」と「怒り」を煽られることになります。
私が冒頭でお話しした親世代との乖離の1つが、この「不安」「怒り」に苛まれている感を感じてしまうのです。
もちろん、高齢者は感染リスクが高いということもありますが、それを差し引いても感じてしまうのです。
信頼性を追求するメディアの登場
そんな中、アメリカでは「Substack」というニュースレターが注目されています。以前そのことについて書いたことがあるので、改めてご紹介いたします。
Substackに注目が集まるのは、ページビュー指標に縛られず、人の心をつかむ説得力のあるコンテンツを届けることを第一義に考えているからです。
日本でも「自由で公正な社会のために新しいメディアを作りたい」という想いをもって、テレビ業界を去り、「Choose Life Project(CLP)」を立ち上げた佐治洋さんのような方もいらっしゃいます。
〈MASHING UP / 2021年1月21日〉
佐治さんは、TBSの『報道特集』や『上田晋也のサタデージャーナル』などのディレクターとしてテレビ番組の制作に携わってきた方です。
CLPを立ち上げた背景には、スポンサーや視聴率との兼ね合いで、政治や社会の問題について十分に時間を割いて伝えられないこと、多くの大切なニュースが日々の放送からこぼれ落ちてしまうことへの忸怩たる想いがあったそうです。
CLPでは、その時々のニュースに関する話題を討論や解説を中心に、生配信で届ける『ChooseTV』のほか、国政選挙などに合わせた「投票呼びかけ動画」、国会のハイライトシーンや注目すべき裁判の判決に関して伝える動画、有識者や時事問題の当事者へのインタビュー、オンラインシンポジウムなど、ユーチューブなどを使って多岐に渡って発信しています。
ある意味「個人放送局」と言っても良いと思うのですが、一方で課題はあるとのことで、個人のポリシーと視聴者が求める中立性の間で難しさを感じているそうです。
「個人の想い」は諸刃の剣
世の中、なかなか全員の正解(幸福)ということは難しいですし、人間どうしても自分の都合の良いように物事を解釈して、発信してしまう生き物であると思います(人の性というか…)。
そういった性質が、時にはフェイクニュースに繋がることにもなるわけです。
ちなみに、イスラエル発のオンライン広告セキュリティ企業CHEQが2019年に発表したフェイクニュースに関する調査レポートによると、フェイクニュースがもたらす経済損失額は世界全体で少なくとも780億ドル(約8兆円)。
さらに、誹謗中傷や暴力などに繋がってしまうことは、この一年散々目にしてきました。
現在、賛否両論ありますが、「Clubhouse(クラブハウス)」などの新メディアが、招待システムにしているなど、少なくても個人の発信に対して「責任を持ってね」ということは求められてきますし、フォロワーという概念を無くした新しいSNSプラットフォーム「Yubo」がアメリカでウケているのも、「数に囚われない」信頼度を求めるニーズが高まっているのかもしれません。
SDGsなど世界全体が倫理社会に移行する中、マスコミもSNSも、数ではなく、より信頼で結ばれるメディアへ移り変わっていくような気がします。
私は仕事も情報産業(広告・出版)、プライベートでもnoteを書いているので、いろいろ考えさせられる今日この頃です。
「写真」で繋がる新しいSNS
最後は、おまけ事例なのですが、Clubhouseに並ぶ勢いの新SNSプラットフォームに人気が集まっているそうです。
〈Forbes JAPAN / 2021年2月20日〉
「Dispo」は、昔ながらの使い捨てカメラ(disposable camera)のような機能を持っており、それがアプリ名の由来となっているそうです。
「次世代インスタグラム」とも呼ばれていますが、まず、インスタグラムとの違いは、既存ユーザーからの招待が必要なことや、アプリ画面の共有が禁止されていること。
また、ユーザーは、撮影した写真がフィードに表示されるまで24時間待たなければいけません。これが、使い捨てカメラ感覚を表現しているのでしょう。
さらに、Rollsという機能では、友達とアルバムを作ってパーティーの写真をシェアできます。
写真アルバムを友達と一緒に眺めていた20〜30年前のアナログの感覚をオンライン上で行うといった感じでしょうか?
Dispoは今や、企業価値が10億ドルとされるClubhouseに並ぶまでに注目アプリとなっています。
ここにきて、新しいプラットフォームが乱立している感がありますね。SNSそれぞれの特性が生まれているので、人それぞれの志向に合わせて細分化していくのでしょう。
SNSも新たなステージに突入していると感じます。
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