今、「秘密結社」を信じる人が増えるワケ
column vol.178
ツイッターとフェイスブックがトランプ大統領のアカウントを停止したことが話題になりましたが、SNSを巡る議論はアメリカを超え、世界に広がっています。
トランプ大統領とあまり関係がよろしくないとされているドイツのメルケル首相も「表現の自由は、基本的権利として重要だ」との考えを表明し、米ツイッター社の対応に懸念を示しました。
「Qアノン」による混乱
一方、米ツイッター社は6日の議事堂襲撃を受け、陰謀論Qアノン関連の投稿に使われていた7万件を超えるアカウントを永久凍結したと発表。
〈ITmedia NEWS / 2021年1月12日〉
「20日の米新大統領就任式が近づくにつれ、暴力扇動、組織的攻撃、選挙結果に関する誤解を招く情報の共有からツイッター上の会話を守るためのわれわれの取り組みについて透明性を保つことが重要だ」
と米ツイッター社は話しています。
…「Qアノン」?
ご存知ない方に説明いたしますと、Qアノンとはアメリカ発の陰謀論で、「ディープ・ステート(闇の政府)」がアメリカ合衆国連邦政府を裏で操っていると主張している集団のこと。
そして、「ディープ・ステートを倒すヒーローがトランプ」だと、Qアノンは信じています。
真偽のほどが定かではありませんが、このコロナ禍でフューチャーされた存在。
他にも、ビル・ゲイツさんがCOVID-19ワクチンを利用して、人々に追跡チップを埋め込もうとしているという噂が流れたりと、さまざま陰謀説が世を席巻しました。
しかし、なぜコロナ禍でこんなにも多くの陰謀説が流れるのでしょう?
「認知モジュール」の誤作動が原因
進化心理学的に見れば、陰謀論に惹きつけられる発端は、進化の過程で獲得された心のプログラムの誤作動と考えることができるそうです。
〈東洋経済オンライン / 2021年1月2日〉
進化心理学は、人間の心をさまざまな情報を直観的に処理する、複数の「認知モジュール」を備えたシステムととらえられるそうで、道に落ちていたヒモをヘビと間違えて身がすくむのは、ヘビを感知するモジュールが反応するからとのこと。
これは太古の昔に人間が生存のために身に付けたもので、危険から身を守るための生存本能なのです。
フェイクニュースや陰謀論を信じやすいのは、人間の脅威に対する認識は「直観を優先する傾向」に引きずられやすいという特性にあります。
社会や経済の危機的な状況下において、ネットを通じて諸悪の根源を追求しようとする振る舞いは、生存本能に促された自然な行為と言える面があるということです。
フェイクニュースの経済損失「約8兆円」
「生存本能だから仕方がない…」とはなかなかいかないもので、先述のアメリカ議会襲撃のみならず、世界各地ではフェイクニュースを発端とする暴力・殺人・虐殺の事例は枚挙にいとまがない状況…。
〈AMP / 2021年1月13日〉
さらに、大きな経済損失につながっています。
イスラエル発のオンライン広告セキュリティ企業CHEQが2019年に発表したフェイクニュースに関する調査レポートによると、フェイクニュースがもたらす経済損失額は世界全体で少なくとも780億ドル(約8兆円)。
その内訳で最大は、世界株式市場における損失で、390億ドル(約4兆円)に上るそうです。
その事例の1つとして挙げられているのが、2017年12月フェイクニュースが米株式指数S&P500に与えた影響。
当時、ABCニュースは、ロシア疑惑に関連して、元国家安全保障問題担当大統領補佐官のマイケル・フリンさんが2016年の選挙キャンペーン時にトランプ大統領がロシア高官への接触を命じたことを証言するというニュースを報道。
後にフェイクニュースであることが判明したこの報道によって、S&P500は38ポイント下落、その損失額は最大で3,410億ドル(約35兆円)に膨らみました。
フェイクニュースは、医療費増加という形で国の財政や経済にも影響を及ぼしており、CHEQのレポートは、健康関連のフェイクニュースによって経済損失額はアメリカだけで年間170億ドル(約1兆7,629億円)に上ると推計しています。
「表現の自由」と「混乱の抑制」。
どちらか一方に傾倒し過ぎるのは危険ですが、フェイクニュースによって、度重なる命の危険と大規模な経済的損失があるということも「真実」。大きな社会問題になっています。
不安解消に導く「ジョイ・スクローリング」
「ドゥーム・スクローリング」という言葉はご存知でしょうか?
悲しいニュースや、がっかりするニュース、気が滅入るニュースを続けざまにサーフしたり、スクロールしたりしてしまう傾向のことです。
〈ライフハッカー / 2021年1月9日〉
つまり、秘密結社による陰謀説(フェイクニュース)に目が奪われてしまう(気になってしまう)心理です。
それを逆転的に良いニュース(あるいは、自分が好きなもの)に目を向けるのが「ジョイ・スクローリング」です。
可愛い動物の写真や、大好きな人のブログ、趣味に関する情報など、明るくなるニュースを意識的に見るようにするのです。
心理学者のエマケニーさんは
「ネガティブなニュース視聴に、自分を感動させたり元気づけてくれるようなコンテンツを織り交ぜれば、悪い感情を抑制しやすくなります」
と述べています。
ちなみに、私は今日、note仲間のA.C.T.Y plains GINZAさんのネコジュエリーに心癒されました。
ネコ好きにはたまりません(ほっこり…)。
ニュースやSNSの投稿について、もちろん、危機を伝えるネガティブニュースがあって然るべきだとは思います。
一方で、私はなるべく読んでいる方々の心が明るくなるような記事をお届けしたいと考えています。
「ジョイ・スクローリング」したい時は、池の記事でも読んでやろう
そんな風に思っていただけることが、noterとしての私の目標です。