百貨店から「百華店」へ
column vol.500
コラム記事もついに500本目。ここまで来ると、「結構書いてきたなぁ」と感慨深いものを感じます。
一方で、noterとして、ちゃんと成長できているのか?そんなことを思うと、若干俯いてしまいます…(汗)
今日は大台の回ということもあり、原点に戻って小売業の話題を話したいと思います。
もともとはコロナ禍で苦しむ小売企業に「少しでもヒントを」と始めたnote生活。
特に今、過渡期だと感じるのが百貨店です。
各社次の時代に向けてイノベーションを起こしています。
今日は新しい取り組みを紹介したいと思います。
百貨店にも「売らない」売り場が続々
まず、小売業注目の新形態がRaaS(Retail as a Service)でしょう。
つまり、小売のサービス化。
店頭ではモノを売らず、店員はアンバサダー(ストーリーテーラー)として、商品の価値を伝え、消費者にその魅力を体験してもらう。
つまり、体験型店舗です。
店舗はメーカーから出店料をとり、AIでの顧客行動解析データや店員がヒアリングした顧客の声をメーカーにフィードバックしていき、協力関係を築いていきます。
日本ではいち早く蔦屋家電+が2019年に二子玉川にオープン。
昨年はRaaSのパイオニアであるシリコンバレー発の「b8ta(ベータ)」が有楽町にオープンして話題となりました。
ちなみにRaaSについて詳しく知りたい方は、コチラをどうぞ。
そんなRaaS業態ですが、百貨店にも広がってきています。
「大丸東京店」が今年10月に「明日見世」という売り場をオープン。
〈テレ東プラス / 2021年12月3日〉
明日売れる、今後ブレイクが期待される商品を集めた売り場で、19のブランドが手がけるアパレル商品やコスメが並びます。
そのうちの一つの「ANDIZUMO」は社員7人の小さな会社。商品力には自信があっても、なかなか実店舗が持てないという企業の大きなビジネスチャンスとなっています。
アート市場への攻勢
ビジネスチャンスと言えば、百貨店各社はアート市場の開拓に力を注いでいます。
〈ニュースイッチ / 2021年12月5日〉
もともと百貨店は催事を開催するなど、アートは親和性が高い分野でした。
さらに、コロナ禍であっても店舗高額品など特定商品の売れ行きは好調で、アートも同様に堅調な推移を見せています。
松屋は銀座店の店内に構えるデザインのセレクトショップ「デザインコレクション」のバーチャル店舗を11月にオープン。
来店さながらの感じで入店して店内を歩いたり、360度画像で商品を手にとって眺めたりする感覚をインターネット上で体験できます。
高島屋は子会社で商業施設の開発・運営を手がける東神開発とカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)で、アートの販売を主体とした共同出資会社を10月に設立。
CCCが作家の発掘やアート作品の調達を担い、高島屋グループが国内外の商業施設で商品やサービスを提供します。
大丸松坂屋百貨店の沢田太郎社長も「今後伸びていくと考えるのはアート」と指摘。
さらに、「現代アートの催事は非常に好調。地方店でも実績を上げている。画廊とも強いパイプがあり、この分野はしっかり伸ばしたいと考えている」と抱負を語っています。
今後は、世の中的にもNFTアートは大きなトピックになるので、百貨店も当然狙っているでしょう。
メタバースへの進出も相まって、デジタル分野にどのように仕掛けていくかも非常に注目ですね。
ちなみにメタバースへの注目についても先日書きましたので、まだご存知のない方はコチラをどうぞ。
かつての「ワクワク」を提供できるか?
最後は静岡の話題です。
大丸松坂屋百貨店の松坂屋静岡店は2022年春、全面改装に着手。
ライフスタイルやモノ・コト体験に重点をおいた新業態の誘致を進め、目玉として本館の上層階に水族館をオープンします。
〈WWD JAPAN / 2021年11月18日〉
改装のコンセプトは“地域共生型百価店”。本館7階の水族館は静岡市の再開発事業と連動して誘致を実現。
「施設そのものが外出の目的地となる、駅前の核施設を目指していきたい」と同社は強い意気込みを語っています。
地方百貨店は淘汰が加速する中、存在価値の再定義が進められています。
三越伊勢丹ホールディングスの松山三越はホテルやフィットネス施設を誘致して9月にリニューアルオープン。
エリア特性や生活者ニーズを反映し、単なる買い物の場を超えて館を再設計することが重要になりそうです。
昭和世代の私としては、百貨店は子どもの頃のテーマパーク。百花繚乱の品揃えと、レストランで食べるお子さまランチに目を輝かせていました。
あの頃、確かに感じていたワクワク感。
求められているのは、日常の中のちょっとした「華」なのだと思います。
百貨店から「百華店」へ。
百貨を揃えるというのはあくまでも手段。百貨店全盛時代にあったようなワクワク感を今の時代に併せてどう提供していけるのか?
それが百貨店が輝きを取り戻す、重要なカギとなりそうです。