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小売業の「NEW TYPE」
column vol.620
小売業の今週の大きなトピックと言えば、やはり「阪神梅田本店」の全面開業でしょう。
〈WWD JAPAN / 2022年4月6日〉
阪急阪神百貨店の旗艦店に位置する同店は、2014年から7年かけて建て替え工事を実施。
最後に残されていた地下1階の食品フロア「阪神食品館」が今週6日にオープンしたのです。
飲食店を含む食品の売り場面積は建て替え前に比べて38%増の1万8000平方メートル。約100メートルのスイーツストリートが目玉となっています。
売上高に占める比率も58%に引き上げ、「食の阪神」をさらに印象づけるとともに、23年3月期の売上高目標730億円の達成を目指します。
凄いスケールです…。
20日に大阪出張があるので、ぜひ見に行きたいと思っているのですが、最近、小売業で「NEW TYPE」と呼べる新しい取り組みが増えているので、今日はいくつかその事例をご紹介したいと思います。
「食の不平不満」を解決!米オンラインスーパー
まずは阪神百貨店にちなんで、食の話題からです。
アメリカ発のオンラインエスニック食料品店「Weee!(ウィー)」に注目が集まっています。
〈NewsPicks / 2022年4月7日〉
日本とは異なり、多人種国家であるアメリカでは、顧客が求める食材は多岐に渡り、品揃えの豊富さがカギを握るのですが、Weee!は世界各国のユニークな食材を料理のカテゴリーごとに探すことができ、「食の不平不満」を上手に解決しようとしています。
例えば、アメリカの肉は大きいステーキ肉が一般的である一方、日本食では薄切りの肉やひき肉がよく使われます。
野菜でも白菜やニラ、ネギ、根菜類はアメリカの食卓で、あまり出てこない。
Weee!ではニーズ に合わせて構築されており、サイトを開くと「すぐに食べられるもの」や「新鮮な果物・野菜」、「甘いもの」など、食料品の提案がパッケージ化されており、消費者目線で非常に使いやすいサービスになっています。
食料品店はオンライン化比率が低いものの、コロナ禍で大きな伸びが見られる大注目の領域。
オンラインスーパーの売上は、WalmartとAmazonが3兆円、Krogerが1.5兆円、Targetが6000億円となっていますが、これらは100兆円市場の食料品業界全体の10%にも満たず、まだまだ伸びしろに期待できるのです。
日本でもWeee!が席巻し、新たな食文化を形成する日が来るのでしょうか?その動向を見守りたいと思います。
「文化発信基地」が手がける「住宅」とは?
「文化」と言えば、小売業でパッと頭に浮かぶのが「パルコ」です。
いつの時代も、若者カルチャーの発信基地として存在しており、私も若い頃は渋谷のパルコに行くことが一つのステータスでした。
そんなパルコが、J.フロント リテイリンググループの保有不動産の有効活用と不動産ポートフォリオの拡大に向けて、新たにレジデンス事業に参入。
今週の7日に事業パートナーと共に賃貸・分譲マンション3件の開発を推進すると発表しました。
〈流通ニュース / 2022年4月7日〉
1つ目は同社が保有する名古屋市内の土地において、都心部へのアクセスがよく、食品スーパーに隣接する利便性の高い立地を活かして賃貸マンションを開発する「(仮称)名古屋市中区千代田賃貸マンション計画」。
2つ目は、私が住む横浜での新たな取り組み。
関内駅にほど近い旧横浜松坂屋事務所跡の平面駐車場の有効活用としてパルコが運営するショッピングモール「カトレヤプラザ伊勢佐木」に隣接した生活利便性の高い立地を活かして、賃貸マンションを開発する「(仮称)横浜市中区賃貸マンション計画」を展開。
さらに、自社が保有する土地において、三井不動産レジデンシャルを事業パートナーとして、分譲マンションを開発します。
レジデンス事業への参入を通し、商業に限らない多様な用途の不動産開発によって、「こころ豊かなライフスタイル」をプロデュースし、地域と共生する個性的な街づくりを進めるそうです。
裏を返せば商業単体では成り立たないのが今の世の中です。
アメリカでもICSCが「Innovating Commerce Serving Communities」と名称を変更。
ショッピングセンターから「コマースサービスコミュティ」へと変貌を果たしつつありますが、商業施設はより一層「コミュニティデザイン」への意識を高めなければならない時代かと思います。
パルコの新しい取り組みが、新しい小売業の形をつくっていくでしょう。
「未完」がコンセプトの新しい商業施設
パルコの取り組みはまだまだ道半ばですが、「道半ば」ならではの魅力もあります。
それを逆にコンセプトとして運営しようとしているの下北沢の「ミカン下北」です。
〈AXIS / 2022年4月1日〉
京王電鉄が設計デザイン会社 DRAFTの山下泰樹さんと組んでデザインした井の頭線下北沢駅の高架下に登場した新施設。
下北沢カルチャーを感じさせる物販店や、飲食店を中心とした商業エリアに、「遊ぶように働く」を体現するワークプレイスが同居しており、遊ぶと働くが混ざる新しい下北沢の形を提案するA・B・C・D・Eの5街区で構成されています。
コンセプトは「下北沢は永遠に完成することのない未完成な街」。
「アート・演劇・音楽など多様なカルチャーを纏う下北沢には、終わりのない文化があり大事にするべき土壌である」と考える山下さんは、、変わり続ける未完な街に、「未完」ゆえの自由なデザインを着想したそうです。
また、約4年前に始動したプロジェクトで、この施設には街の再開発に対して込めた想いや地域の人々との関わりが詰まっているとのこと。
今後は人々やテナントとともに新たな実験や挑戦を促し、これまでのDNAと新エリアが交わり街全体を盛り上げていくことを目指しています。
やはり、今後の小売は「街づくり」「暮らしづくり」、少し大仰に言えば「人生をつくっていく」という視点が大切になると感じます。
コミュニティと言えば「阪神梅田本店」でも、21年10月の2期オープンから顧客との接点を強化。
絆づくりを担うスタッフ「ナビゲーター」が中心となって運営するコミュニティスペースも新設しています。
同店がスケールメリットだけではなく、どんな「ライフスタイルをデザイン」しようとしているのか?
20日に行った時は、そこに注目したいと思います。