10年先へ - 「街づくり」の民衆化
column vol.230
朝の情報番組『あさイチ』でお馴染みの近江友里恵アナウンサーが、3月末でNHKを退職。今後は街づくりの仕事に関わっていくそうです。
〈毎日新聞 / 2021年3月5日〉
もともと建物を見るのが好きだったとのことですが、『ブラタモリ』で培った経験と、『あさイチ』で得た知識をフル稼働して、今後の挑戦に活かしていきたいとのことでした。
最近、街づくりに関する記事を多く見かけるので、いくつか紹介させていただきたいと思います。
震災から10年。若者移住と街づくり
来週の11日で東日本大震災から10年となります。あの時の記憶は昨日のように鮮明に覚えているので、もうそんなに月日が経ったんだ…と驚くばかりです。
しかし、東北地域では震災の爪痕が未だ残っています。
一方で、復興支援をきっかけに震災地に移住する若者も多く、新たなコミュニティも生まれ、街づくりの大きな力になっているのです。
〈JIJI.COM / 2021年3月5日〉
NPO法人SETは、修学旅行生らを受け入れる民泊や短期移住留学などを手掛け、コロナ流行前は年間2,000人超の若者が来訪、40人以上が移住。
代表理事の三井俊介さんは茨城県出身で、大学生だった2011年3月にSETを立ち上げ、震災ボランティアに従事。卒業と同時に同市広田町に移住し、15年から4年間は市議も務めたそうです。
「若者が一定数いれば町は残り続ける。この10年でその仕組みをつくれた」
と、これまでの歩みを語っています。
コロナの影響で事業の多くは停止していますが、野菜の地産地消プログラムなど新たな試みも企画中とのこと。
他にも山口県出身の西川緑さんが気仙沼市唐桑町の名産のウニが漁業権で厳しく管理されていることに「もったいない」と感じ、子どものウニ取り体験を企画。外から来た良さを活かし、慣習やしがらみに囚われない発想と行動で企画を通し、街を活気づけています。
震災の傷口に芽生えた新しい芽が、さらに10年後どんな花を咲かせるのか?私も宮城や福島に友人がいるので、コロナが落ち着いたらまた訪れたいと思っています。
渋谷で街づくり人材を募集
私のオフィスがある渋谷区でも新たな試みが行われています。
渋谷区で初めて副業人材を募集。2月5日に募集スタートし、3日間で100人以上の応募があり、話題になりました(募集は2月28日で終了)。
それから1ヵ月が経ち、現在の状況も含め記事が発信されていたので共有させていただきます。
〈bizSPA!フレッシュ / 2021年3月5日〉
「国際的なスタートアップ都市に」変貌させるべく、勤務は原則テレワークで、居住地を問わず全国から人材を募集しました。
募集職種は以下の4職種。
① スタートアップ支援事業のコミュニティマネージャー
② スタートアップ招聘担当 with 海外アクセラレーター
③ 海外への日本発スタートアップ プロモート担当
④ スタートアップ実証実験推進担当
1990年代からインターネット関連のスタートアップ企業が集結し、一時は「ビットバレー」とも呼ばれた渋谷区。本場シリコンバレーの一人勝ちのままでは自国の産業が成り立たなくなるという危機感から、今回のプロジェクトを発足させました。
副業人材を集める理由は、役所の職員だとやれることに限界があること、そして多様なノウハウを集めたかったからだそうです。
一方で行政が持つ強みもあるでしょう。
実際にシリコンバレーに対抗するため、他の国や地域では官庁が関わって成功しているケースが多く、シンガポールでは投資金額の最大70%をシンガポール側が持つ仕組みがあったり、キャピタルゲインを非課税にして外国人投資家を呼んだりしています。
官民一体の街づくり。
渋谷区の想いに応えるべく、結果、1ヵ月で400人を超える応募があったそうです。
担当の産業振興課の田坂克郎さんは、自身もシリコンバレーで働いた経験から追いつくことの難しさを感じながらも
「人やお金、ノウハウが集まれば10年で追いつけると信じて事業を進めています」
と意気込んでいます。こちらも10年後の渋谷が楽しみになってきました。
高校生がつくる街
最後は10年後が楽しみな高校生たちの挑戦です。
山形県南陽市と県立南陽高校は、共同で生徒主体のボランティアサークル「南陽高校市役所部」を立ち上げ、活動を開始。
部活動のように学校を核とした地域づくりの実現を目指しています。
〈共同通信社 / 2021年2月24日〉
「市役所部」は昨年12月に南陽高校1~2年生17人で発足。毎月、市役所担当者と高校の指導教員も参加してミーティングを行い、高校生の視点でまちづくりに関するアイデアを出し合います。
市役所は、みらい戦略課に事務局を置いて企画の実践を後押し。具体的活動の第1弾として、SNSを通じて南陽市の情報発信をしていく計画が動きだしたそうです。
凄く良い試みですね。若い頃から街づくりに参画していれば、我が街を我が子のような想いで見つめられますし、「自分の街」という想いが芽吹けば、若者が土地に根付くのではないでしょうか。
そして、もちろん、若者の柔軟な発想を街の魅力づくりに活かすことができます。行政と民間、大人と若者の良き共同が全国に広がれば良いですね。