リアル店舗はカタチを変えて生き残る
column vol.144
「リアル店舗はカタチを変えて生き残る」。これは本日、当社の企業向けセミナー「文化経済研究会」にご登壇いただきました株式会社蔦屋家電エンタープイライズの木崎大佑さんの言葉です。
この言葉に心が震えた会員さまは多く、個人的にもグッときました。
コロナ禍でリアル店舗は苦境に立たされています。実際、お付き合いのあるショッピングセンターの担当者様の中にも、テナントさんとの退店交渉でシビれる毎日を過ごされている方もいらっしゃいます。
そんな状況の中、ただただ真っ直ぐに「リアル」と「人」に希望を抱いている木崎さんの想いに触れられ、とてもモチベーションが上がりました。
百貨店の「余命」予測
本日、講演会場に向かう朝の電車の中で、こんな記事を目にいたしました。
〈プレジデントオンライン / 2020年12月8日〉
コロナ禍にあって、小売業の王様である百貨店も厳しい状況で、前年比で7〜8割の売り上げ。地方に加えて主要都市でも閉店ラッシュが続いています。
経済アナリストの馬渕磨理子さんは、そんな状況を受けて、三越伊勢丹、高島屋、J.フロント、エイチ・ツー・オー、4社の余命試算を実施。
余命資産とは、【売上総利益-販管費】を計算し、現金預金と照らし合わせて導いています。
すると、あくまでも今の状況が続けばという仮定で、三越伊勢丹:2年4カ月、高島屋:14年2ヵ月、J.フロント:黒字、エイチ・ツー・オー:1年7カ月という結果に。
高島屋は2023年度のネットビジネスの売上目標を300億円から500億円に上方修正していますが、それでもECの占める割合は売上全体の5.4%程度。なかなか厳しい状況が続きます。
馬渕さんは、百貨店業態は歴史を紐解けば、江戸時代の呉服屋のイノベーションから生まれたということもあり、新しい革新を期待されております。
フィンテック分野で好調
革新を推し進めて、黒字を維持しているのがマルイです。フィンテック事業が好調で、上期は特にECと家賃支払で取扱高を伸ばしました。
〈ダイヤモンドオンライン / 2020年11月26日〉
ちなみにフィンティックとは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、金融サービスと情報技術を結びつけたさまざまな革新的な動きを指します。
ちなみにフィンテックは小売業の中では欠かせないファクターになってきており、イオン、セブン&アイの取り組みが有名ですね。銀行、クレジットカード、電子マネーなどで成功しています。
ちなみに、マルイは上半期取扱高2,264億円(36%増)となったそうです。
その他にも、アフターコロナの社会を見据え、上期は体験型店舗の拡大に注力。従来のアパレル中心の店舗から、飲食やサービス、メーカーがユーザーに直接商品を販売するDtoCモデルの店舗など、体験価値を提供する店舗へのニーズが今後高まると同社は予測しています。
6月にメルカリの体験型ショップ「mercari station(メルカリステーション)」、8月にはアメリカで小売業を革新させたと言われているRaaS業態の「b8ta(ベータ)」をオープンさせました。
このような事例は、今後の小売業の未来を示唆した事例だと感じます。
「リアル」と「人」が高価値に
このRaaS業態の日本でのパイオニアが「蔦屋家電+」になります。そのパイオニアから本日多くのことを学びました。
RaaSとは「Retail as a Service」の単語の頭文字を組み合わせた言葉で、モノではなく体験や商品価値を売る業態のことです。
メーカーの商品の展示料と、接客から得られた顧客情報(店内のAI解析も含め)を企業に提供することでビジネスを成立させています。
つまり、販売することから解放され、消費者とメーカーの橋渡し(キューピット)になることで成り立つ新しい小売業のカタチなのです。
アメリカではオンラインからリアルへという流れですが、蔦屋家電+はリアルからオンラインへという流れで生まれました。
開発した木崎さんは、もともとは家電量販店の店員さん。その時、販売(売ること)だけの評価軸になっていることに違和感を感じていたそうです。1時間、お客さんと話をして、商品は売れなかったけど、メーカーにとって商品開発(改良)につながる貴重な意見を聞くことができた。これをもっと活かせないかと。
AIだけで顧客情報を得ることには限界がある。人の価値はそこにあると語っておりました。
そして、リアルな店舗だから得られる価値もあります。例えば、お父さんやお母さんと買い物した商品には思い出という付加価値が生まれます。
私も子供の頃、両親と行ったお店に思い出がありますし、それが思い入れに変わっていると思います。つまり、オンラインに利便性という武器があるように、リアルには情緒という掛け替えのない価値があるということです。
今日のセミナーを通して、この2つの良さをケンカせずに融合していくことが本当のOMO(Online Merges with Offline/オンラインとオフラインの併合)につながると感じられました。
まずは、企業の中でもオンラインの部署とオフラインの部署を融合することから始めるのが良いかもしれませんね。分けずに、企業としてどんな価値を生活者に届けたいのか?そのことをまずは追求することが最初のステップなのではないかと思う今日一日でした。
ちなみに木崎さんの最新記事をご用意いたしましたので、こちらも併せてご覧いただければ幸いです。
〈マイナビニュース / 2020年7月16日〉
ぜひぜひよろしくお願いいたします。