変態するコミュニケーション
column vol.207
本日は祝日ですが、こうやってパソコンに向かって記事を書いていると、平日も休日も、その境目がよく分からなくなってきます。
いつもと同じ空間、いつもと同じように妻と一緒にパソコンに向かう。
よく一緒に組む仕事仲間に対して「ウチのカミさんより長い時間を過ごしている」なんて言葉が職場で飛び交っていましたが、この一年は過去10年分の時間ぐらい妻と一緒にいる時間が多いと感じます(笑)。
そんな中、今週の当社のマーケティング分析会議「イマジナス」で、子育て真っ盛り中のママさん社員から、夫婦のコミュニケーションについての興味深い事例が紹介されたので、皆さまにも共有させていただきます。
「最高のパパ」に願いを込めて
コロナ禍のリモートワークなどで、家族との関係を見直す人は多いと思いますが、神奈川県に住む川口博史さん(42)は、家族とのコミュニケーションをより良いものにするため、「家族にとっての最高なパパ」を目指す「アルティメット・パパカード」の作成を決意。
クラウドファンディングで資金を募り、60万円を目指していましたが、支援総額637,000円を集め、見事プロジェクトを成立させました。
〈みらのび / 2021年1月29日〉
〈READYFOR Webサイト〉
「アルティメット」とは、「究極の」「最高の」を表す英語の意味。
パートナーと話し合い、45枚のカードに父として夫として何をするべきかを具体的にひとつ一つ書いていきます。
そして、1ヵ月に1度、夫婦でカードを使った会議を開きます。
カードは「家族が実践できている」「まあまあできている」「できていない」に、話をしながら選り分けていき、今月の目標を3枚(慣れてくれば7枚まで)に絞り込みます。
それからは目標を意識して過ごし、また次の月に夫婦で振り返りをするという流れです。
父親側は「できている」と思い込んでいても、母親側は「できていない」と感じている可能性がある
そんな想いでカード制作を考えたそうですが、自ら理想のパパでありたいとアクションを起こせる川口さんに、ただただ頭が下がります…。
そして、仕事や育児で奥様との会話が無くなっているという反省点も、このカードでのコミュニケーションを通じて解消していったそうです。
まさに「アルティメット・パパ」です。
私も、ついつい暗黙知で行動してしまうことがあるので、川口さんを見習って妻とのコミュニケーションをより深めたいと思いました。
他にも、コロナで変化するコミュニケーション事例を続けて2つご紹介いたします。
お家で映画は「みんな」で観る時代
この一年、家で相当映画を観ました。それまでは時間が無くて全然観れなかったのですが、アマゾン・プライム・ビデオ、ネットフリックスに加入し、ドラマも含めて楽しんでいます。
同じような方は多いと思いますが、ここにきて「誰かと一緒に観たい」というニーズが高まっているそうです。
〈Forbes JAPAN / 2021年2月5日〉
Huluは、2021年1月26日より「ウォッチパーティ機能(β版)」を開始。Huluの月額会員同士であれば、追加料金なしで最大8人と同時視聴が可能。
現在配信中の7万本以上の全作品(ライブ配信とHuluストア内作品は除く)が視聴できます。
アマゾン・プライム・ビデオでも2020年10月より「Prime Videoウォッチパーティ」をスタート。
プライム会員であれば追加料金なしでウォッチパーティ対象作品を同時視聴が可能。こちらもチャット機能がついており、映像を鑑賞しながら最大100人と会話を楽しめるそうです。
一方で、文字は面倒なので、直接話し合いたいという声もあるそうで、LINEやZoomといった他のSNSの電話機能も同時に使って、実際に会話をしながら鑑賞するケースも多いとのこと。
さらに、「視聴者同士の顔が見えない」という利点を使い、ツイッターなどのSNSで誰でも参加可能なウォッチパーティを呼びかける利用者も増えており、コロナ禍により初対面の人と会う機会が少ない中、新しい形のコミュニティが生まれているようです。
同僚とはアバター同士でお付き合い
システム開発大手の富士ソフトは昨年7月から、自社開発したバーチャルオフィスの運用を開始。社員の2割に当たる1000人強がリモート勤務で利用しているそうです。
〈日経スタイル / 2021年2月7日〉
画面にはオフィスのフロアを再現。各座席には社員のアバターが表示され、「ランチ中」「在宅」といった本人の状態も分かります。話したい相手の席近くにアバターを動かせば、会話することもできます。
リモートワークは、ハングアウトやメール、電話など、相手の状況が見えませんが、バーチャルオフィスはそれを可視化できるようになってきています。
本人の顔や全身を忠実に3Dデジタルデータとして再現して動きを生成する技術開発が急速に進んでいるそうですし、AI技術によって相手の感情を読み取ることもできるようになってきているとのこと。
仮想現実が、より仮想から現実に近づいていると実感します。
今まで、リアルじゃないと「新しい仕事や仕組みをつくる、良い意味での雑談が生まれない」とか、「誰が何をやっているか分からないし、一体感が生まれない」といったリモートワークの欠点が指摘されてきましたが、今後はバーチャルオフィスが、その点を補ってくれるだと思います。
コロナにより、CX(コミュニケーション・トランスフォーメーション)が加速しています。
デジタルシフトの利点を活かしながらも、一方でリアルコミュニケーションも大切にしたい。
冒頭の川口さんの事例は、まさにアナログコミュニケーションのアルティメットです。
個人的には、コロナ後はリアルとオンラインを融合したOMOコミュニケーションを突き詰めていきたいと思う今日この頃です。