幸せの「第3の報酬」
column vol.738
仕事において、やはり人間関係ほど大変なことは無いとも言えますが、世論調査会社のギャラップによると、社員の約4分の1が職場でストレスや燃え尽き症候群を経験しているそうです。
〈Forbes JAPAN / 2022年8月5日〉
一人一人が相手を認め、気遣い合えれば良いのですが、なかなかそうならないのも世の常です。
そんな中、世界では改めてボランティアプログラムを社内で実施する傾向にあります。
心の底から「感謝」される経験
ボランティア経験が社員にとってポジティブな効果をもたらすことは、IBMやPwCなどの企業がこれまでも証明してきました。
日本でもCSR的に取り組む企業は多いと思うのですが、どこか企業イメージアップという淡い下心が透けて見えてしまうケースも多々あるでしょう。
しかし、本気で社会のためになるボランティアプログラムを実施したらどうでしょう?
ここで興味深い実験結果をご紹介いたします。
アメリカのペパーダイン大学グラツィアディオ・ビジネススクールのクリスティーナ・ギブソン教授は、「Academy of Management」誌に発表した新しい研究があります。
企業とコミュニティの共同開発と名付けた、異なるタイプのボランティアプログラムについて調査を実施したのです。
社員には6週間から3ヵ月間、危機的な地域に住み、働くというミッションを提示しました。
ギブソンは、3年間にわたりさまざまな企業やコミュニティを対象に行った調査の中で、参加者はコミュニティメンバーと力を合わせて地域の課題解決をしたことで、より利他的な視点が育まれ、個人的な成長や地域社会の課題に対する理解を深めたそうです。
そして、社に戻った社員は大きく貢献するようになります。
72%の企業が社員の忠誠心を高め、72%が社員のパフォーマンスを向上させ、59%が顧客エンゲージメントを高めたと報告しています。
多くの企業の評判が高まり、生産性の向上に繋がったのです。
やはり、人は世のため人のためになる経験、何より、心の底から人に感謝される経験を得ることが、その後の大きなモチベーションと成長に繋がると感じます。
第3の報酬の正体
この話を受けて頭に浮かんだのが「感情報酬」です。
これは、第1の報酬「金銭報酬」、第2の報酬「地位報酬(出世)」に次ぐ「第3の報酬」と呼ばれる報酬。
仕事に対して興奮する、ワクワクする、幸せな気持ちになる、やる気がみなぎってくるなど、社員がポジティブな感情を抱ける環境を整えることを、仕事の対価として扱う考え方を指します。
感情報酬を重視することによって、社員の強い主体性や責任感が身につき、前向きにチャレンジする環境が整いやすくなります。
さらに、感情報酬を得た社員が日々成長していくことで、組織の成長にも大きく寄与するのです。
それはなぜか?
感情報酬は内発的動機に繋がるからです。
つまり、心の底から意欲が湧いてくる状態。
少し青臭い言い方をすれば「あの人の笑顔が見たい」という気持ちが生まれる。
そして、また心の底から感謝をされることで、次の笑顔が見たくなる。
それを叶えるために、さらに自分を磨き好循環が生まれる。
ビジネスの本質は、目の前の相手を喜ばすこと。
まさに成功への階段を駆け上がっていくようなものです。
幸せに繋がる報酬とは何か?
これが、相手を喜ばす喜びを得ないままだと、金銭だけを目的とし、得たお金を自分のためだけに使ってしまう可能性が高い…
これは消費にしかならないですが、感情報酬を得ようとする人は自身を高めるための投資に使うことが増えるはずです。
もちろん、金銭報酬は生活のために必要ですし、自分のためにお金を使う喜びは誰にでもあります。
地位報酬も含めて必須のことではありますが、ただし…、心理的幸福感は、それだけではなかなか得られないような気もします。
ですから、経営を司る者としては、いかに感情報酬溢れる会社づくりを行うことが肝要だと自分に言い聞かせています。
「賞賛」「敬意」「共感」を誰よりも伝えていけるかどうか。
副社長になって4期目になりますが、社員一人一人をリスペクトし、心の底から感謝し続けることは決して忘れないようにする。
今期は評価制度についても見直しを図っているのですが、皆の内発的動機がさらに高まるようなものにするために、しっかりと考えていきたいと思う今日この頃です。
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