「地球を経営する」という考え方
column vol.472
現在、国連の気候変動対策の会議「COP26」が開催されていますが、開催地のイギリス・グラスゴーでは5日、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんも参加して、大規模なデモが行われました。
〈NHK / 2021年11月6日〉
数千人が参加し、参加した人たちは「絶滅を選ぶな」や「今すぐ行動を」などと書いたプラカードを掲げ、大通りを埋め尽くすようにして行進しました。
グレタさんは
「COPは美しいスピーチを述べるPRイベントになってしまった。しかし各国のリーダーたちはカーテンの後ろで抜本的な行動を拒絶している」
と述べ、現状の取り組みでは不十分だと訴えました。
「絶滅を選ぶな」という言葉は強烈で、頭の中でリフレインしています。
地球は今後、一体どうなってしまうのでしょうか?
地球が「一つの株式会社」なら
『サステナブル資本主義 5%の「考える消費」が社会を変える』の著者、村上誠典さんの記事が興味深かったので共有させていただきます。
〈現代ビジネス / 2021年10月29日〉
この地球を一つの株式会社として考えてみる。
【会社名】:株式会社地球
【ミッション】:地球、社会、人類の生活の価値を持続的に高め、何十億年も継続する
【主要資産】:地球(人類以外の生き物含む)と人類、そして人類が地球上に創造した社会
人類は誕生以来、経済活動を通じて大きなGDPを生み出し、その金額は毎年少しずつ成長してきました。
GDPを生み出すために、人は労働します。労働とは言い換えれば、人の時間を消費している行動の一つです。
それにより(株)地球は毎年着実な成長を遂げてきた…と思われてきたのですが、今、持続可能性について疑問が生じています…。
企業ファイナンスのセオリーで言うなら、永続的な成長を前提とできず、ターミナルバリュー(永続価値)が毀損している状況になります。
これにより、二つの問題が生じます。
(株)地球は債務超過の万年赤字企業
一つは(株)地球が持続的に労働力を買えなくなり、一部の人に富が集中すること。そして、二つ目の問題は、バランスシートの計上漏れの資産が大きく毀損している状況です。
なぜなら、(株)地球は、水産資源、鉱物資源、森林資源、あらゆるものを活用していますが、これを地球経営のバランスシートには計上していないからです。
しかし、実際は資源をふんだんに活用しながら、経済活動を行なっています。もちろん、本来は資産を買い取るか借りるかしないといけません。
もしも買い取るなら、金額はいくらが妥当なのでしょうか?
仮に資源を買い取っても、同じ資源で地球を再びつくることができるとは…なかなか思えません…。
ということは…、地球は唯一無二の存在であり、とてつもない希少価値がつくかと思います…。これを最近話題のNFTアートで想像すると、肝がマイナス100℃ぐらい冷えそうです…。
順調に売上高を拡大し、利益成長を続けていると思われた(株)地球は、実は多額の借入金を抱え、債務超過の万年赤字企業だったのですね…(汗)
資産はできる限り長期的に有効活用することは当然のことで、一つ一つの資源が愛おしく感じてきます。
そして、村上さんはこのように締めくくります。
(株)地球の経営陣はこの状況に近年まで気がついておらず、損益計算書ばかりを見たPL経営で、経営は順調であるとして、資本主義とイノベーションのメリットばかりを強調し、この状況を見過ごしてきたようなものです。
地球経営という視点で見ると、現状の課題を痛切に感じますね…。
GAFAが注視する「再生可能エネルギー」
冒頭のCOP26でも重要なテーマになっている「再生可能エネルギー」ですが、実はGAFAからも熱い視線が注がれています。
〈日経ビジネス / 2021年11月2日〉
これらの米大手IT企業はエネルギー領域に投資しています。なぜなら、今後、これらの企業が提供するサービスの主要コストを電力が占めるためです。
クラウドコンピューティングの最大のコストは電力ですし、ビットコインのマイニング(採掘)コストも電力に依存しています。
次世代の自動車産業の主力になる電気自動車(EV)は動力源が電力ですから、電力のコストを抑えれば抑えるほど、提供サービスのコストを下げられ、競争優位性を手にできます。
ソフトバンクグループや楽天グループもエネルギー事業に参入していますが、これらも同じ理由と言えるでしょう。
テスラは再生可能エネルギーの企業を買収して傘下に入れ、昨年、家庭で蓄電できる「Powerwall」を日本でも販売し始めました。
同社が目指す世界が実現すると、私たちの家庭一つひとつが発電所になります。それは、日本でも35年には約4,000万台のEVが各家庭に普及するという予測があるからです。
世界を代表する企業たちの動機は置いておいても、再生可能エネルギーの熱波は大きな唸りを上げていることは間違いないでしょう。
電力の「分散化」で希望のある未来へ
デジタルホールディングス代表取締役会長の鉢嶺登さんは、エネルギー関連のキーワードに3つの「D」があると語ります。
温暖化対策の「Decarbonization(脱炭素化)」、スマートグリッドやデジタルメーターなどの「Digitalization(デジタル化)」、そして「Decentralization(分散化)」。
この「分散化」こそが大事だと鉢嶺さんは語ります。
各家庭での発電の発想に通じるものですが、電力の地産地消ですね。
簡易で小さな発電所がそれぞれのエリアで造られ、その電力をそのエリアで蓄え、消費する。その最小単位が家庭になります。
バイオマス発電を始め、地熱や風力、水力、太陽光などそれぞれの再生可能エネルギーの分野でテクノロジーの進化が続けば、より分散化の流れは加速するでしょう。
そして再生可能エネルギーの究極の価値は、発電のための燃料となる資源がコストゼロであることです。
もちろん、発電装置にはコストがかかりますが、それもテクノロジーの進化によって効率化が進み、コストゼロに近づいていくでしょう。
日本はエネルギー自給率は17年時点で9.6%。特に11年の原子力発電所の事故以降、発電のための資源輸入が増加しています。
消費税を1%上げても2兆円ほどの歳入にしかつながりませんが、それよりもエネルギーコストゼロの影響の方がはるかに大きい。
再生可能エネルギーへの移行と分散化により、(株)地球を立て直していく。とはいえ…、そんなに簡単な話ではないとは思いますが…、頭の中でリフレインが鳴り響きます。
「絶滅を選ぶな」
地球経営は本当に、本当に、そして本当に正念場を迎えています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?